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Nと俺 (洪水編)

Nと俺


あれは忘れもしない4年前、ちょうど今ぐらいの時期の出来事だった。
当時の俺は大学にも行かず、さりとてバイトもせず、毎日朝から晩までパチンコに明け暮れていた。
わざわざ田舎から名古屋まで出てきて、日々何かを学ぶわけでなく、何一つ成し遂げることなく、
親からの仕送りをそっくりそのままパチンコに費やすような、救いようのないチンカス野郎だった。

そんなある日、ぐうたら生活を送っていた俺に、人生最大の修羅場が訪れようとしていた。

あの日は朝から凄まじい雨だった。 もっとも俺が目を覚ましたのは、昼の12時を回った頃だったけれど。
その日は午後1時からの講義でテストを受けることになっていて、
自力で起きることさえできない俺は、おかんに電話で起こしてもらうようお願いしていたのだ。

寝起きざま、電話口でいきなりおかんに説教を食らう。いつものことだ。

おかん「○○(俺の名前)、起きなさい。あんた今日テストやろ!」
俺「う~ん、・・・頭痛い。」
おかん「『頭痛い』ちゃうわ。 あんた今日テストやのに、どうせまた勉強もせんと、朝まで友達と麻雀やってたんやろ。」

図星を突かれて思わず目が覚める。
俺「・・・今何時?」
おかん「もう12時過ぎやで。とっくにいいとも始まってるわ。はよ顔洗って、ちゃんとテスト受けるんやで!」
俺「分かった分かった、頑張るよ。」

電話を切った直後、「頑張る」とは言ったものの、早くも俺は迷い始めていた。
最近グランドオープンしたばかりのバチ屋が、その日新台入れ替えを行う予定だったのだ。

・・・いやいや、何を迷ってるんだ俺は。出席日数もヤバいし、今回の小テストで絶対に良い点を取っておかねば。
30分で顔を洗い飯を食って服を着替え、マンションを出る。
(さあ、テスト頑張ろう!そしてテストが終わったら心ゆくまで新台を打とう!)
しかしそんな俺の意志とは無関係に、俺の足は勝手に大学の前を素通りし、地下鉄の駅に向かい始める。

(・・・まぁ無理してテスト受けなくてもいいかな? テストは年に何回もあるし、次のテストで良い点取ったらどうにかなるだろ。)
この時点で既に 俺の頭の中には、今日打つであろう新台のことしか無い。
どうしようもないアホの思考だ。しかしそう決心した俺の足取りはやけに軽い。

駅に向かう途中、朝から降り続く雨で、マンホールが「ゴボッ、ゴボッ」と不吉な音を立てていた。
(なんか今日はすげぇ雨だな~。ソッコーで爆連させて、さっさと帰るかぁ。)
パチンカーの思考回路は、いついかなる時でもポジティブだ。

5分後 地下鉄の駅に到着し、改札を潜った。
1分も経たない内に 暗闇を掻き分け、ホームに電車が躍り込んでくる。
都会の電車は非常に便利だ。俺の田舎では電車は最低でも30分は待つのが常識なのに。
プシューと微かな音を立てドアは開いた。 電車は俺を乗せて人生最大の修羅場へと ゆっくり動き始めた。

2つ隣の駅で降りる。
もはや まだ見ぬ新台によって、俺の胸は 期待感で張り裂けそうだ。バチ屋まで歩いて10分の距離が、やけに遠く感じる。
前日に聞いた友人Nからの情報によると、今日入るのは「Fゴースト」という機種らしい。
自動ドアが開くと、けたたましい騒音が俺の耳をつんざく。 心地良い音だ。
(新台空くまで、じっくり待つかな。)
そんな事を考えつつ まったり店内を巡回していると、なんと新台で入ったばかりの「Fゴースト」が、1台空いているではないか!
なんたる幸運、今日の俺はツイてる!
台のデータを見ると、単発の繰り返しで 最後に800ハマッた所で、どうやら前の人の有り金が尽きたようだ。
早速パッキーを買い、目をギラギラさせながら打ち始める。
すると3Kも使わない内に、いきなりの確変ゲット!!
(うぉぉ~、どうした俺、すっげぇ調子良い! なんか今日の俺はヤバい!!)

それから約10時間後 本当にヤバい事態に陥るなどと夢にも思っていない俺は、鼻歌まじりで大当たりを消化した。
順調に確変は続き、どんどん俺の周りに ドル箱の砦が築かれてゆく。
しかし時はゆっくりと修羅場へ向け、ひっそりとカウントダウンを始めていたのであった。

それからはもうウハウハの展開だった。
確変引いては連チャン、連チャンが終わったら確変引き戻して連チャン、その連チャンが終わるとまた引き戻して連チャン。
俺の周りに積まれたドル箱の「砦」は、どんどん「城」へと変貌を遂げてゆく。
結局閉店時間まで順調に出玉を増やし続け、最終的に20箱以上のドル箱を流すことに成功。
(ウホッ、10万勝ちコース!こいつぁ笑いが止まりませんなァ~!)
カウンターで、当時発売されて間もない「ドラクエ7」と「タバコ1カートン」をゲット。
(さぁ~て、あとは景品交換所で10万円頂いて帰りますか!)
久々の快勝にすっかり気を良くた俺の脳裏では、もはやテストをサボッた事など忘却の彼方。
むしろテストをサボッた自分を思いっきり誉めてやりたかった。

蛍の光が流れ始めた店内を軽やかにスキップしながら、満面の笑みで出口へ向かう。

すると、なんか出口付近の様子が変だ。
大勢の客が出口付近で外を見ながら凍りついている。
(なんだぁ? 店の前で事故でもあったのかな??)
出口で固まってる客を掻き分け、外へ出る。
その時俺の眼前に、かつて見たこともないような光景が飛び込んできた。

な、なんだこれは・・・」思わず小さな声で呻いてしまった。

バチ屋の照明でうっすらと照らし出された周辺の景色は、明らかに異常だった。

水、水、水・・・どこを見渡しても水。
少しばかり高い土地に建てられたバチ屋の周辺は、ぐるりと水で囲まれていた。
まるで暗闇にぽっかり浮かぶ離れ小島みたいだ。

「ザザザザザーーーッ!」
バチ屋の前の道路(と言うより既に小川みたいになってる)で水しぶきを上げながら走っている乗用車が、
俺の目の前で「プスン、ゴボゴボ・・・」と情けない音を立てて動かなくなる。
暗闇によく目を凝らすと、そこら中に動かなくなった車が放置されている。それも半端な数じゃない。

(何なんだこの異常事態は。俺は・・・夢を見てるのか?)
あまりに非現実的な光景を目の当たりにして、俺はただただそこに突っ立っているだけだった。

「どうする!?」「これ やばいよ・・・」
周りの客の声で突如現実に引き戻される。

そうだ、これはヤバい。本当にヤバい。
そういえば、夕方頃からやけに客が減っていったような気がする。まさか外がこんな状態になっていたとは。
いくら外界の情報が遮断されていたとはいえ、何故こんなになるまで気付かなかったのか・・・なんたる不覚!
いや、今は後悔してる場合じゃない。とにかく、この閉塞状況を打破する手立てを 早急に考えねばならない。
パニクリながらも、なんとか俺がしぼり出した案は3つ。

?洪水が収まるまでこの場で待機する
?友達に携帯で助けを求める
?足は濡れるが最寄りの地下鉄の駅まで歩いて帰る

まず?は却下。いつ川の氾濫が収まるか分からないし、こんな所で一夜明かすなんて耐えられそうにない。
?も捨て。さすがに これだけ目の前で車がおシャカになってる状況下、友達を迎えに来させる訳にもいかない。
仕方ない、・・・?か。あまり気は進まないが、足ぐらいなら濡れても構わない。
換金を済ませ、まだ出口付近で突っ立ってるバチ屋の客達を後目に、俺はゆっくりと駅に向かって歩き始めた。
とりあえず駅に着きさえすれば、後はどうにかなるだろう。

ゴボン、ゴボンッ。
小川みたいになった道を慎重に歩く。
すごい洪水だ。膝あたりまで水が溢れている。一体どれだけ雨が降ればこんな洪水が起こるというのだろう。
空は今なお おびただしい大雨を降らせている。早く駅に着かないと風邪をひくかもしれない。

焦りを感じつつも、同時に心の何処かでワクワクしている自分に気付く。
(消防の頃、台風直撃で学校近くの川が氾濫して集団下校した時も、確かこんな気分だったな~。)
目の前には未曾有の修羅場が展開されているのに、ついつい気分は消防時代に戻ってしまう。
なんで俺は何歳になっても台風とか洪水にドキドキしてしまうんだろう?のん気なものだ。

しかし やっとの思いで地下鉄の駅に到着した時、俺はこれから起こる真の修羅場を直視せざるをえない状況に置かれた。

「ザザザザザーーーッ」
ありえない・・・地下鉄へと降りる階段が、まるで滝みたいになってる。
氾濫した水は、容赦なく地下鉄へと流れ込んでいた。
(これは・・・いや、そんなまさか・・・)
俺の嫌な予感は的中した。
『洪水のため、現在 地下鉄鶴舞線は運行停止中』
その張り紙を見た時、背筋が凍りつきそうになった。
この大洪水の中、一体俺にどうしろと?
もしかして俺は、今から2駅分を歩いて自宅まで戻らなきゃならんという事か??
額を大粒の水が流れる。もはや汗か雨かも分からない。完全に精神的な余裕はなくなった。
事態は風雲急を告げていた。降り続く雨は勢いを弱めるどころか、どんどん雨足を強めている。
もはや逡巡している場合ではない、一刻も早く家に帰らねば、もっと危険な状態に陥る可能性もある。
俺は悲痛な面もちで、真っ暗な洪水の中、自宅に向かって歩き始めた。
バチ屋に来た時とは正反対で、俺の足取りは重い。

洪水は俺の予想の範疇を遙かに超える規模だった。
後にニュースで知ったのだが、この洪水は名古屋の歴史に残るほどの記録的な大災害だった。
実際に死者も出し、負傷者は100人に上ったという。
しかも これも後に知ったのだが、当日俺の行っていたバチ屋は何と、名古屋で最も被害の大きかった天白区のど真ん中に建っていたのだ。
もちろんその時の俺は、その豪雨と洪水が全国ニュースで放送されるほど大規模な災害だったとは知る由もない。

そのバチ屋付近は 元々土地が低い上に、天白川というのが近くに走っており、その光景たるやあまりにも凄惨だった。
国道の遙か向こうまで 見渡す限り、車が水に埋まって動かなくなっている。
時たま「ビィィィィィーーーーッ!!」とクラクションを鳴らし続けたまま放置されている車があって、恐怖した。
もっと怖かったのは、車のどこが壊れているのか知らないけど、
「バチバチッ、バチバチッ!」と なんか電気系統がイカれた車の直ぐ傍を通った時だ。
水面に電流みたいなのが流れていた。俺は真剣に死を覚悟した。

最初は膝ぐらいだった水かさも 歩くにつれどんどん深くなり、いつの間にか俺は腰ぐらいまで どっぷり水に浸かっていた。
空は大雨を降らすだけでなく、常に稲光でビカビカ光っている。
真っ暗闇なのに、頭上で雷が鳴る時だけ、不気味に周りの景色が映し出されるのだ。
それはまるで、この世の果てみたいな光景だった。
そして更に深刻だったのが、携帯電話が全く通じなかった事だった。
別に助けを呼ぼうと思ったわけではないけど、誰かと喋ってなければ不安で胸が張り裂けそうだった。

因みにバチ屋のカウンターで取った「ドラクエ7」と「タバコ1カートン」は とっくにずぶ濡れになっていたので、その辺に投げ捨てておいた。
財布と携帯電話だけは濡れないように 右手で高く持ち上げ、左手で傘を持ってひたすら歩いた。

もう水の中を30分以上は歩いている。
普段なら1駅分ぐらいは歩いているはずだが、まだその半分も進めていない。しかも事態は一向に良くならない。

ちょっとした坂が まるで滝のように唸りを上げて水を運んでいる。その奔流に何度も流されそうになった。
そこら中に色んな物がプカプカ浮いている。コンビニの玄関マット、飲食店の店先の看板、植物の鉢、そこにはありとあらゆる物が漂っていた。
水かさは更に深くなり、遂に水位は身長179?の俺の胸まで達していた。
バチ屋から もうどれぐらい水の中を歩いたであろうか、誰1人とすれ違うこともない。
当然だ、こんな時間にこんな状況の中で洪水の街を彷徨うのは、自殺行為以外の何物でもない。

水の中 長距離を歩くというのは、予想以上に困難な作業だった。自分でも どんどん体力が失われていってるのが分かる。
おまけに真っ暗だったのが俺の恐怖心を掻き立てた。自分の足元がまるで見えない。
一歩踏み出す位置を間違えただけで水死体になる危険性も十分ありうる。

水の冷たさと暗闇が、容赦なく俺の体力を奪ってゆく。肉体的にも精神的にも俺の疲労はピークに達しようとしていた。
途中で何度か諦めて避難しようと思ったが、もう全身ずぶ濡れで、俺は完全に冷静な判断力を欠いていた。
もはや一刻も早く家に帰って安心する事だけしか考えられなかった。
幸い、家に向かう途中に友達の家がある。もし家まで体力がもたなかったら、泊めてもらおう。
とにかく俺にできることは、一刻も早く、一歩でも前へ進む事だけだった。

途中、何度かコンビニの公衆電話から電話してる人達を見た。携帯は通じないが、どうやら公衆電話は繋がるらしい。
俺は猛烈に電話したかったが、どのコンビニの公衆電話にも、長蛇の列ができていた。
公衆電話の列に並んで時間を費やすのは痛かったので、全部見て見ぬ振りをして素通りした。

しかし遂に地元の人しか知らないような、ちょっと裏通りにあるコンビニで誰も並んでいない公衆電話を発見した。
(やった・・・やっと電話ができる・・・やっと声が聞ける・・・。)

さて、皆さんは本当に死を覚悟した時、一体誰の声を聞きたいだろうか。
恋人? それとも親友?

俺の場合は両親だった。迷うことなく実家の電話番号をプッシュする。
「トゥルルルル・・・・」
暫くコールした後、電話口に出たのはおかんだった。

おかん「・・・○○!? あんた、大丈夫なん!? ニュース見てめっちゃ心配してたんやで!? 携帯に電話しても全然繋がらんし・・・!!」
おかんの声は震えていた。心配で泣いていたのかもしれない。
ああ、おかん・・・いつ どんな時も俺の味方をしてくれた 優しいおかん・・・。
おかんの声を聞いて 俺もついつい泣きそうになる。
俺「いや・・・実は今危険なんよ、死にそう。」
おかん「『死にそう』て・・・あんた一体どうしたん!? 今日はテスト受けて家に居たんちゃうの!?」

ギクッ!!

俺「あ、いや・・・実はあの電話の後、パチンコ行って・・・閉店まで打ってて・・・」
俺「それで、そのパチンコ屋の辺りの川が めっちゃ氾濫してて・・・もうほんまに死にそうになって・・・」

おかん「・・・・そのまま死ね!! ドアホ!!!!!」

(ぐっはぁ、しまったぁぁぁっ!! テストサボッたのバレたぁぁぁっ!!)
電話を切ろうとするおかん。
俺「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って!! 親父に代わって!! 頼む!!」
おかん「バカ息子がっ・・・ちょっと待っときな。今代わるから。」
俺「ゴメンよぅ。」

俺は猛烈に親父の声を聞きたかった。
俺が名古屋の大学に行きたいと言った時、決して家計も楽ではないのに、笑って許してくれた親父。
そんな理解ある親父が送ってくれた大事な仕送りを 馬鹿な俺がパチンコで全部スッて救いを求めた時も、
「母さんには内緒な」と言って、いつも通帳にコッソリ小遣いを振り込んでくれた親父。
どんな時も俺の行く手を照らす灯台の明かりのように温かかった・・・そんな親父の声が聞きてぇっ・・・!

親父「・・・もしもし、○○か? お前大丈夫なんか!?」
俺「うん、何度か死にそうになったけど大丈夫やで。」
親父「母さんが お前は今日テスト受けて家におるはずや、言うてたで?」
俺「あ、いや・・・実はテストをサボッてパチンコしてて、今洪水に巻き込まれて・・・」

親父「そのまま流されて死ねや!! アホが!!!」

俺「ちょ、ちょっと待って、妹、優しい妹の声も聞かせ・・・」

「ガチャッ、ツー、ツー、ツー・・・」
空しく受話器から無言の返事が返ってくる。俺は受話器を握りしめたまま呆然と立ちつくした。

・・・まぁしかし、結果はどうあれ、両親の声が聞けた。それだけで俺の不安は何処かへかき消えた。
さっきまで あまりの洪水で半泣きだったはずの心に、めちゃくちゃ勇気が湧いてきた。
(いける・・・まだいける!ありがとう親父、ありがとうおかん!!)
俺はまた家に向け 水の中を一心不乱に 歩き始めた。

それから20分ぐらい歩いた後、徐々に水かさも減っていき、水位はまた膝ぐらいまでになっていた。
俺の修羅場もようやく終焉の時を迎えようとしていたのである。
ふと、道行く人が携帯電話で喋ってるのに気付く。どうやら携帯が復旧したようだ。
今度は友達のNに電話をかける。
「トゥルルルル・・・・トゥルルルル・・・・」
おかしい、なかなか電話に出ない。 まさかあいつも この洪水で窮地に陥ってるんじゃ・・・?
そんな心配をし始めた頃、ようやくNが電話に出た。

N「・・・もしもし・・・おはよう。」
俺「すまんな、寝てたのか。 起こしてしまって申し訳ない。」
N「おぅ・・・寝すぎて頭痛い・・・今何時?」
俺「たぶん夜の12時過ぎぐらいかな。」
N「えぇ~~っ!マジで!? ヤバい、お前の家で麻雀した後、家に帰ってずっと寝とったぁぁ!!」
俺「今まで寝てたんかい!!」

アホ発見。形は違えど、どうやらこいつもテストをサボッたらしい。
このNというバカ友は、一度寝ると20時間近く起きない こち亀の日暮さんみたいなヤツなのだ。
俺「お前 今日名古屋がどんな事になっとるか知らんのか?」
N「いや・・・分からん。何かあったのか?」
俺「実はかくかくしかじかで・・・で、今からお前の家に泊めてもらおうと思って。」
N「えっ、マジで!? すげぇ! つーかそこで待ってろ、今から俺も遊びに行くから!!」
俺「いや、ちょっと待て、俺はお前の家で一刻も早く風呂入れて欲しいんだけど・・・」

俺がそう言った時には既に Nは電話を切っていた。くそっ、どいつもコイツも!!
そこから最寄りのコンビニの駐車場で待つこと10分、おかしい。一向にNが現れない。
ここからは そう遠くないはずだが。

ちょっと心配になり始めた時、携帯電話が鳴る。Nからだ。

俺「もしもし? どうした?」
N「いや・・・それが・・・車でそこまで行こうと思ってたんだけど・・・」
俺「え!? 車で!? お前、まさか・・・。」
N「ああ・・・やっちまった。 スカイラインのエンジン止まってもーた!!(笑)」
俺「笑ってる場合じゃないだろ、だからあれほど車がストップしまくってるって言ったのに!」
N「まぁいいよ、とにかく 歩いてそこ向かってるから待っててくれ!」

アホだ・・・俺級のアホだ。 しかし気が重い、俺が電話してなければNの車も壊れる事はなかったろうに。
5分後 歩いて登場したNは、手にカメラを持っていた。
N「いや~、ホント凄い事になってるな!お前 よくこんな街を1駅ちょっと歩いてきたなぁ。」
俺「つか何でカメラ持ってんの?」
N「いや、せっかくだから記念撮影しようと思って。」
俺「はぁ?」

なんと その後俺は、やっとの思いで切り抜けた修羅場に再び舞い戻り、Nと記念撮影大会をするという愚行を冒してしまった。
今 これを書いてる俺の机の引き出しの中に、あの夜 洪水の道路でプールよろしく泳いでいる俺の写真が入っている。

こうして俺の長い長い一日が終わった。
結局 Nはエンジンの修理に20万かかり(因みにスカイライン自体の購入価格は中古で15万w)、俺はあの日の勝ち分10万をNにプレゼントする羽目になった。
Nは受け取ろうとしなかったけど、さすがに申し訳なかったので。
それから その数ヶ月後 実家に返った時、両親にもボロクソに怒られた。
あの日テストをサボッたからだけじゃなくて、俺の成績表が実家に送られたらしく、『不可』だらけの成績を見て、鬼のような形相で怒られた。
正座で説教されたのは厨房時代以来だった。まぁ全部 自業自得なんだけどね。



あれから4年の歳月が経った。
救いようのないバカ大学生だった俺も、なんとか留年スレスレで卒業できた。
俺は大学卒業後、友達の反対を押し切り、実家に帰って田舎で就職した。
やはり両親には感謝してるし、一生両親の傍で面倒見ていきたいと思ったからだ。

あのアホだったNも現在は名古屋の1流企業でバリバリ働いている。

Nとは大学卒業後1度会ったきりで、それ以後は連絡も取っていない。

そんなつい先日のこと。
台風が俺の田舎を襲った。その台風は 俺の田舎に結構大きな被害をもたらした後、そのまま本州に上陸し、名古屋も襲った。
次の日 その台風が北海道でただの低気圧に変わった頃、俺の携帯にメールが来た。Nからだった。

以下原文↓
件名:久しぶり!
本文:おっす○○、元気にしとるか。
なんか四国にも台風上陸しとったらしいな。大丈夫か?実は俺、いまだに台風が名古屋に来るたび、あの日のことを思い出すよ(笑)
それはそうと、お前スロットの調子どうよ。俺今日吉宗で万枚出したぞ。彼女とあの寿司屋で中トロ食ってきた!
ところでお前、××ちゃんの結婚式来るの?また連絡くれ。じゃあな。

俺はだいぶオッサンになった。Nも2年前に会った時、会社勤めのストレスのせいか、かなり老けていた。二人とも容姿は随分変わったはずだった。
でもやっぱり俺もNと同じように 未だに台風が来るたび あの夜の修羅場を思い出すし、懲りずに毎日 バカみたいにスロット打ってる。
結局変わらないんだ。

そうだ、今週末は久々に仕事休んで××ちゃんの結婚式に行こう。
Nと昔みたいに、二人揃ってスロットでも打とう。
今 俺の田舎の空はどこまでも青く晴れ渡っている。名古屋はどうだろうか。Nも同じような青空を見てるのだろうか。
あの日と変わらぬ笑みを浮かべて名古屋の空を見上げてるのだろうか・・・。

~fin~

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