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アイミ(途中)

中学三年の春に転校してきたアイミって女子が凄かった。
俺の中学は奈良の超ド田舎に位置する。そんな所に東京からはるばる
転校生がやってくると知り、同学年の男子はみながみな転校生の話題に
終始していた。おかっぱ頭の小便臭い田舎女に飽き飽きしていた俺(童貞)も
ちょっとだけ心躍ったものだ。転校生がやってきた日の一時間目終了後の
休み時間、俺はおもむろに廊下にでた。すると三年四組の教室の前に
黒山の人だかりができていなかった。なぜだ、四組には転校生がやってくる。
だから当然見物客で溢れかえっていなければならない。
俺は予想外の事態に面くらいながら四組の教室を覗いた。
するとそこには、一人だけ見慣れない女がいた。背は高く、スカートの丈は短く、
靴下はルーズ(当時は都会の女子のステータスだった)で手首には大小様々な
アクセサリーをつけている、垢抜けた感じの女の子が、俺に背を向けて
他の女子と談笑している。やっぱり思ったとおりだ。後姿を見ただけで
可愛さが伝わってくる。間違いない、都会の女だ!俺は彼女の顔がみたくて
うずうずした。どうにか振り返ってくれないものか。

俺は彼女を振り返らせるために、奇策を思いついた。
「ままのおっぱいちゅ~ちゅ~すいたいよ~垂れたおっぱいちゅ~ちゅ~♪」
三年四組全員が俺を見た。冷めた視線が痛かった。
注意を引くために大声で歌うという策はよかったが、歌詞が若干場違いだったようだ。
しかしとりあえずは目的は達成した。都会からきた彼女も俺を見てくれていたのだ。
彼女の顔は、少しだけ期待はずれだった。分厚く塗りたくったファンデーションは、
舞妓さんを想起させ、長すぎるマスカラはおフランス人形を体現し、毒々しい青の
ファンデーションはオカマのまがまがしさをかもしている。
舞妓さんとおフランス人形とオカマを異種混合させた天然記念物。
もし彼女が、流行のファッションに身を包んでいなかったら間違いなく迫害していただろう。
都会からやってきた転校生じゃなかったら、間違いなく糾弾していただろう。
俺は期待感を見事に叩き潰され、自分の教室に戻った。
所詮美人の転校生なんてドラマの中だけだ。現実はつまらないぜ。
この時の俺は気づかなかった。のちに彼女が学校中の価値観を根底から覆す凄まじい
事件を起こすとは。

彼女が転校して一ヶ月が経った頃、妙な噂を耳にした。
いつものように臭い便所で小便をぶちまけていると、個室から煙草の煙と共に、
ヤンキーどもの痴話言がもれてきた。
「マジで!?嘘だろ?それはねーって!」
「いやいやマジだって。俺もう三回したし!」
「うわ、サイテーだなお前、いくらなんでも金払ったら駄目だろ」
「てっちゃんも、さとっぺも、のりおも、みんなしてるんだぜ?」
どうやら何かやってはいけないことを何人かのヤンキーが金を払って
やっているようだ。二人のヤンキーの個室外によく聞こえるコソコソ話が、
ヤケに俺の好奇心をくすぐるものだから、小便をしているフリをしたまま便所に居座った。
「でもたけーだろ?やっぱ3万くらいか?」
「いやいやいや、そんなにするならやらんぜ。なんとたった5000円だ!」
「ぶっ!やすすぎだろ!アイツがそれでいいっていったのか!?」
「もちよ!しかも気に入ってる相手だったらもっと安くなるらしいぜ!」
何かを売り買いしているようだが、三万円で売るものといえば…薬物か?
「やっぱ東京の女は違うよな、金やりゃすぐにやらしてくれるんだからよ」

「なんだってぇぇぇぇぇぇ!?」
あまりの衝撃的内容に、思わず身を隠して聞き耳を立てていた身分を
忘れ大声をはりあげてしまった。喫煙に気づいたセンコーかと思った
ヤンキー達は個室から大慌てで飛び出してきた。そして驚き立ちすくむ俺を
見て、盗み聞きしてんじゃねえぞカッペが!と叫びながら俺のふとももに
蹴りを見舞った。あまりの痛さに汚い便所の床に倒れこみそうになりながら、
いつもの逃避手段を試みる俺。すばやく胸ポケットからメモ帳を取り出す。
「五月二日十時五十五分三十二秒、東校舎一階の男子便所で、三年一組
出席番号十二番、高宮大輔に左大腿筋に極度の重傷を負わされた。
この外傷により、五時間目の体育を自粛しなければならない。
自粛する理由は五時間目開始直後に体育担当の山寺先生に微に入り
細をうがって説明する所存である」
口頭で伝えながらも、激しくペンを走らせ速記する。あまりにも意味不明な
リアクションに気味悪く思ったのか、チクられるのが怖かったのか、
ヤンキー二人は急いで便所から立ち去った。俺は白紙のメモ帳を胸に仕舞い、
一人勝ち誇りつつ転校生を思った。

俺のような下位階層に生きる者にまで、噂が広まっているということは
学校中の誰もが知っているという事だ。金で体を売るなんて話を聞いたら、みなは
彼女のことをどう考えるだろう。きっと汚らしい拝金主義者として見下すはずだ。
同性からは陰湿ないじめが、異性から性的ないじめが彼女を待っている。
可哀相に。もしかすると転校してきた理由も、体を売ることに関係しているのかもしれない。
まぁどうであろうとも俺には関係のないことだ。なにせ俺には、今しがた知った
ビッグニュースを話題に、盛り上がれる友すらいないのだから。
しかし一週間後、事態は思わぬ方向に展開する。
いつものように教室で休み時間を消費していた時だった。
俺のように話し相手がいない人間は、眠たくもないのに机につっぷして、あたりで
聞こえるクラスメートの話声に耳をすませるのが習慣だ。いつものようにつっぷしていると
「ねぇ、知ってる?久美と祐樹君別れたんだって!」
「え、マジ?なんでなんで!?」
「よくわからないんだけどさ、アイミが祐樹君と売春したんだって!」
「あちゃぁ~!それ知ったら久美怒るわ」

祐樹&久美といえば、学年で誰もがうらやむベストカップルだ。
どちらも容姿端麗でケチのつけどころがなく、二人の恋の進展状況は
なぜか誰もが気になる情報だった。祐樹君が昨日久美と放課後にBまでいったんだって!
今日は屋上の隅っこでCまでいったんだって!明日はきっと部屋でDよ!
祐樹&久美は恋の月面探査機だ。学年の誰よりも早く二人が未開の地に足を踏み入れる。
それを見て他のカップルは、祐樹&久美がいったのなら私達もいこうと、勇気を踏み出す。
そうやってゆっくりと大人の階段をのぼっていた田舎の女達を横目に、
エレベーターで天高くのぼっていくのが、転校生アイミだった。
アイミは恋愛の進歩を急激に加速させた。キスしたかどうかで大騒ぎしていた人間に、
いきなり一発五千円というお手ごろセックスを提供したのだ。
久美に比べてアイミはかなりブサイクだ。でも顔の凹凸など、セックス未体験の男子には
どうでもいいことだ。初めてAVを買う時、女優の顔にこだわっただろうか。
AVを買うという行為に思考は全て奪われていたはずだ。
すぐさまセックスできるという魅惑に、祐樹君は惑わされたのだった。

同学年で表だって交際しているカップルは、約七組だった。
性のお手本である祐樹&久美カップルが崩壊したのを皮切りに、残った六組も
次々と破滅の一途を辿っていった。祐樹は友人にアイミとの情事を話して聞かせた。
それに触発された男どもは、次々とアイミの毒牙にかかっていき、交際していた
男たちは彼女に性行為を無理強いし嫌われ、交際していなかった男たちは
我先にとアイミに金を払った。気づけばアイミと交わった男は、同学年で
数十人を越えていた。アイミがくるまでは、うちの学校は童貞率十割という
純潔度を誇っていたのだが、アイミ爆誕後は童貞率が四割にまで落ちていた。
まさに性の暴動だった。男たちは女=穴という間違った価値観にとらわれ、
しちめんどくさい告白から性交友にいたるまでのプロセスを一切合財拒否した。
アイミ以外の女は不必要。アイミさえいればそれでいい。
女達は一様に待遇の不当さに怒り狂った。しかし中には、アイミの存在を否定せず、
アイミと同じように振舞えばいい思いができると考える女もいた。
そう、女ヤンキー達である。

女ヤンキー達は、元来より浮世離れした生活を送っていたので、
アイミの持ち込んだ売春にも柔軟に対応したのだった。彼女達は初め、
同類である男ヤンキーを対称に売春を始めた。何度か繰り返すうちに
味をしめたのか、客層を拡大し部活に汗を流す体育会系にも体を売った。
この女ヤンキーの売春行動が更に学内を淫猥に染めたのは言うまでもない。
今ならわかるが、女ヤンキーというのは存在自体がツンデレなのだ。
いつもはどぎついファッションに身を包み、中腰でコンビニの前を占拠し、
目があったひ弱な男にガンをくれる、凶暴な習性を持っている。
その女ヤンキーがひとたび性行為となると、釣りあがった眉毛を下げ
いかついパンティーを下げ、男の溜飲を下げてくれるのだ。
誰もがこのギャップに打ち負かされた。
もちろん俺も、女ヤンキーを買いたかった。しかし俺にはセックスさせてくださいと
切り出す勇気がなかった。もし切り出せたとしても相手にしてもらえないだろう。
俺みたいなキモい奴なんて。半ば諦めかけていた俺だったのだが
奇跡は突然にやってきた。

夏間近の蒸し暑い日だった。俺は授業の合間に三年五組を尋ねた。
俺と似た暗そうな男に有紗という女を呼び出してもらう。
男に話しかけるだけでも手に汗がにじむ。どこまで対人恐怖症なんだ俺は。
呼ばれて出てきた有紗と目が合った際には、汗脇パッドが必要なほどだった。
有紗と俺は小学校からの知り合いだった。昔はよく一緒に遊んでいた仲だ。
だが俺の股間にチン毛が生え、有紗の乳房がふくらみ始めた頃になると、
外見で他人を値踏みするという人類の最も醜い習性が互いに身につき、
有紗は俺を劣等種と判別し、一切口をきかなくなった。
ある日突然、何を話しかけても無視されるようになったあの日が今でも
トラウマになっている。俺が人に心を開かなくなったのは有紗のせいと
いっても過言ではない。そんな有紗になぜ会いにきたのかというと、
貸している金を返してもらおうと思ったからだ。
中学生になった有紗は非行に走った。髪を染め、アウトローな先輩方から
違反した制服を買い、自転車の盗難方法を学んだ。
小学校の時のように俺を無視することはなくなったが、代わりに
金をせびるようになった。

有紗は金に困るとすぐに俺を頼った。最初は千円ずつ貸していたが、
やがて額は大きくなり、今では一度に一万円借りるようになっていた。
貸した金が合計十万を上回り、さすがの俺も返済を執拗にせまった。
しかし有紗は一向に返す気配を見せない。もうすぐ夏休みだ。
一ヶ月も間が空けば借りた覚えなどないととぼけられる可能性がある。
俺は多少しつこく有紗に会いに行った。
「もうちょっと待ってくれよ。もうすぐ小遣い入るから。な?」
有紗は手を合わせ、申し訳なさそうにそう言った。
いくら小遣いが入ろうとも、さすがに十万一度にはもらえないだろう。
この場を丸くおさめるための嘘。返す気など初めからないのだ。
「あと一週間で返してくれなかったら、家に電話して親に言うから」
俺のこの発言が有紗を怒らせたらしい。突然胸倉をつかまれ廊下の壁に
叩きつけられた。
「馬鹿じゃねぇのかお前はよ!何様のつもりだゴミ!」
平手で頭を何度も叩かれる。たまに膝蹴りが交ざる。

俺は体を丸くして有紗の猛攻をただ耐えた。
「絶対やるなよ?いいか?」
「返さないと電話する」
「なんだとコラ!!」
このやりとりを何度か繰り返した。俺はどんなに殴られても頑として
首を縦に振らなかった。何度か暴力をふるわれてわかっていた。
この手の暴力に物を言わせる人種は、暴力をふるわれても
考えを変えない人間には無力なのだ。ただじっと耐えて拒めばいい。
気づくと有紗の息遣いは荒くなっていた。殴り疲れたのだろう。
「一週間じゃ…金返せないぜ?」
「じゃあ電話する」
有紗の眉間に皺がよる。若干鼻の穴がヒクヒク動いている。
俺をどうにかしたくてたまらなそうだ。勝った。有紗に勝った。
「わーった。じゃあやらせてやるからそれでチャラにしろ。な。」
「え?」
一瞬何を言われたのかわからなかった。

一回10万てどんだけ~

最後のオチはベスカですか?
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純愛・恋愛 | 【2017-07-20(Thu) 20:00:00】 | Trackback:(0) | Comments:(0)
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