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堕とされた母?

堕とされた母 ?
−11−
ホックを外され、肩紐は二の腕にズリ落ちている。
窮屈な戒めから解放された豊かな双乳は、ともに達也の手に掴みしめられて、粘っこい愛撫を施されていた。
「気持ちいい? 佐知子さん」執拗な口吸いを中断して、達也が問いかける。
「……あぁ……達也く…ん……」
解放された口から、掣肘の言葉を吐くことも、佐知子は、もう出来なくなっている。
薄く開けた双眸に涙を光らせて、か弱く達也の名を呼ぶだけ。
揉みしだかれる乳房から伝わる感覚は、快美すぎた。
(……熱い……)直接、達也の手を感じる部分が、火のような熱を孕んで。
その熱に、肉が溶かされていく。ドロドロに。
「ほら、見て、佐知子さん」達也が重たげな肉房を下から持ち上げるようにして、促した。
「佐知子さんの、ここ。こんなになってる」
ノロノロと視線を動かして、佐知子は達也の示唆した部分を見た。
たわわな肉丘の頂上、硬く尖り立ったセピア色の乳頭。
色を濃くして、ぷっくりと盛り上がった乳輪の中心に、見たこともないほど充血しきった姿を晒している。
「……ああ……こんな……恥かしい……」
愕然と見たあとに、居たたまれないような羞恥を感じて佐知子は泣くような声を洩らした。
「どうしてさ? 可愛いじゃないか」達也の言葉が、いっそう佐知子の恥辱を刺激する。
はるか年下の若者に、いいように身体を玩弄されて。その結果、引き出された肉体の反応を、“可愛い”などと評されて。
情けなくて、悲しくて……しかし、蕩けさせられた胸には、そんな思いすら、奇妙に甘く迫ってきて。
「……もう…ゆるして……達也くん…」
結局、佐知子に出来るのは、頼りない声で、達也のゆるしを乞うことだけだった。
「ゆるして、なんて。佐知子さんをイジめてるつもりはないんだけど」
微笑をはりつけたまま、達也がうそぶく。
「ただ、気持ちよくなってほしいだけだよ。僕の手で、気持ちよくしてあげたいだけ」
そう言って、また、指を微妙に蠢かせた。
トロトロに蕩けた豊乳を、ジンワリと揉みこんでいく。
「アッ、だ、ダメッ」たちまち、佐知子の声が鼻からぬける。
火をつけられた乳房に、じれったいほどの、ゆるやかな愛撫。
思わず、“もっと強く”と求めたくなってしまって。
しかし、これ以上の耽溺の行きつく先への恐れだけは、佐知子の意識を離れない。
佐知子はせくり上がる感覚を振り払うように頭をふって、精一杯に強い声で断じた。
「ダメ、駄目よッ、いけない」すると、達也は、佐知子の耳元に口を寄せて、
「大丈夫。これ以上のことはしない。誓うよ」
佐知子の心を読んだような言葉を、真剣な声音で囁いた。
「もう、バスト以外の場所には触らないから」
「………………」
「だから、もう少しだけ。僕の手を感じていてよ」
「…………本当に…?」
「嘘はつかないよ。佐知子さんのいやがることは、したくないから」
「………………」
「だから、ね? もっと気持ちよくなってよ」
「……や、約束よ?」ついに、佐知子は許諾を与えてしまう。
「ほ、本当に、胸だけよ? それ以上は…」
せいぜい、達也の強引さに押し切られたようなかたちを繕って。
佐知子自身も、そう思いこもうとしていたが。
心の底での計算と妥協は、見え透いてしまっていた。すなわち、
“これ以上、危うい域に踏みこまないのならば…もう少しこの愉悦を味わっていたい”と。
「わかってる。約束は守るから」
内心の嘲笑は、無論おくびにも出さず、達也はもう一度請け負った。
「………………」
達也の手をつかんで、かたちばかりの抵抗を示していた佐知子の手が下ろされる。まだ迷いの気配を見せながらも。
達也の手が、佐知子の白衣を、さらに大きくはだけさせた。
双乳の裾野に絡んだブラを、鳩尾へと引き下ろした。
「……恥ずかしい……」改めて、裸の胸を達也の前に開陳することに、強い羞恥を感じて。
佐知子は、か細い声で呟いて、眼を伏せた。
「……あまり、見ないで……達也くん……」
「どうして? こんなに綺麗なのに」
「……もう、若くないから……」火照った頬に、寂しげな翳りを刷いて、佐知子は言った。
子を産み育てた中年の母親の乳房が、若い達也の眼にどのように映るかと思うと……。
「そんなことないよ。本当に綺麗だよ、佐知子さんの胸」
「………………」
達也が力をこめて告げた言葉も、そのままに受け取ることは出来なかったが。
それでも、ひとまずの安堵と、くすぐったいような喜びを、佐知子は胸にわかせる。
達也にしても、それは本音からの評価だった。
いい乳だ、と本心から思った。
たわわな量感と、艶美な曲線。あくまで白く滑らかな肌もいい。
確かに、若い娘のような張りはなく、仰向けのこの姿勢では、自重に負けて、わずかに潰れるようになっている。
また、地肌の白さのせいで強調される乳輪や乳頭の色の濃さや、肥大ぶりも佐知子の気にするように年齢のあらわれであり、子持ちの熟女らしさといえるだろうが。
そんな特徴のすべてが、年増趣味の達也の好みに合っている。
あえて文句をつけるとすれば、むしろ、年のわりには淫色が薄いことだと思った。
(……まあ、それは、これからってことだな)
内心に呟きながら、達也は、こんもりと隆起した肉丘に手を這わせた。
「こんなに大きくて、柔らかいし」
賞賛の言葉を佐知子に聞かせながら、それを確かめるように、指に力をこめる。
ズブズブと指が埋まりこんでいくような柔らかさ。しかし、その奥に、
まだしっかりとした弾力を残していて。
(いいねえ)やはり、形もボリュームも肉質も、極上の熟れ乳だと喜ぶ。
(……それに。感度もバッチリだしな)
軽い接触にも、佐知子は切なげに眉をたわめて、鼻から荒い息を洩らす。
乳房には、熱く体温がのぼっていて。
消えない快楽のおき火に、炙られ続けていることは明らかだった。
(さて。またひとつ、教えてやるか。ウブな佐知子ちゃんに)
この二日間で、キスの快楽をたっぷり仕込んでやったように。
また、新たな快楽を植えつけてやろう、と。
達也は、大きく両手の指を広げて、巨大な双つの肉を掴みなおした。
「……ホントに、大きいなあ。僕の手じゃ、掴みきれないや」
「いやぁ……」つくづくと感嘆して、佐知子を恥じ入らせておいて。
手にあまる巨大な肉房を、やわやわと揉みたてていく。
「……アッ……ア……」
「フフ、それにとっても感じやすいんだよね」
「…やぁ……あ、あっ…」
“胸だけ”という制限で、達也の行為を受け入れたことで、佐知子は、与えられる刺激を、より明確に感じ取る状態になっているようだった。
思惑通りのそんな様を、達也は冷笑して眺めて。
無防備に捧げられた双乳を、嵩にかかって攻め立てていく。
ギュッと鷲掴みに力をこめれば、柔らかな脂肉はムニムニと形を歪めて指の間から飛び出してくる。
十本の指に小刻みなバイブレーションを与えてやれば、プルプルとたぷたぷと面白いほどに震え波打った。
そして、それらの攻めのひとつひとつに、佐知子は、身をよじり、くねらせ、のたうった。
「ヒッ、ア、いやっ、ア、アア……ああぁっ」
引っ切り無しの嬌声を洩らしながら、乱れた髪を左右に打ち振る。
はしたない声を封じようとするのか、快楽に溺れる表情を隠そうとしてか、片手の甲を口元にあてて、もう一方の手は、ギュッとシーツを掴みしめていた。
「佐知子さん、気持ちいい?」
「……あぁ……達也…く…ぅん……」訊くまでもないようなことをことさらに尋ねる達也。
佐知子は、けぶる眼を薄く開いて、舌足らずな声で、甘く恨むように達也を呼ぶだけ。
少なくとも、愉悦を否定しているのでないことは明白だったが。
「気持ちよくないの? こんなんじゃ、足りない?」
「や、ちが……アアアッ!」
意地の悪い解釈に、慌てて左右にふりかけた頭は、叫びとともに
後ろに反りかえって、ベッドに擦りつけられた。
「フフ、やっぱり、ここは感じる?」
「ア、アッ、ダメ、達也くん、そこは、そこ、は」
達也は、両手の親指を、これまで捨て置かれていた佐知子の乳首にあてて、クリクリとこねまわしたのだった。
「ヒ、アッアッ、ダメ、そ、そこは」
ただでさえ痛いほどに勃起しきった肉豆をくじられて、衝撃といっていいほどの強い感覚が突きぬける。
「やめっ、やめてっ」
佐知子は達也の両の手首を掴んで、必死に身をよじって、強すぎる刺激から胸を逃がそうとした。
達也は、それを許さず、さらに指に力をこめて。
濃茶色の肉突起を、爪弾くように弄い、グリグリとこねくりまわし、
柔らかな肉房へ埋めこもうとするかのように、押し揉んだ。
「ヒイイッ!」
「どうなの? 佐知子さん。感じてるの?」
歯をくいしばり顎をそらして、いきんだ声を上げる佐知子の顔を覗きこんで。
しつこく問い質す達也の眼は、嗜虐の愉悦に鈍く輝いている。
仮面がズレて、一瞬垣間見せた本性……しかし、暴虐を受ける佐知子には、それに気づく余裕など、あるはずもなかった。
「ヒ…イッ、た、達也くん、やめて、そこは、もう、やめ」
「どうして? 感じないの? ここ」
「ち、ちがうっ、感じ、感じすぎるから、だから、やめてぇっ」
「やっぱり、そうなんだ」
無理やり佐知子に快感を白状させて、達也はようやく荒っぽいいたぶりを止めた。
しかし、それで佐知子の双つの肉葡萄を解放したわけではなくて、
「じゃあ、ここは優しく触らないとね」
指先を、隆起した大きめの乳暈にそっとあてて、軽く圧迫しながら、なぞっていく。
ゆっくりと数回、屹立した乳首の周りに円を描いてから。
親指の腹で、セピア色のしこりを根から先端へと擦り上げた。
「……フ…ハァ…ア……」佐知子が感じ入った吐息をもらして、喉を震わせた。
硬くしこった乳首の独特の肉感が、達也の指を楽しませたが。
無論、佐知子の感じる感覚のほうがはるかに強い。
「……ア……あぁ、達也…く…ん……」
ヌルヌルとした汗をまぶした柔らかな指の腹で乳首を擦られるのはたまらない感覚だった。
手荒い玩弄の後の優しい愛撫が、ことさらに効く。ジンジンと響いてくる。
「すごいな。こんなにビンビンになって」
「……いやぁ……」感嘆する達也に、羞恥の声をかえしながらも。
佐知子は、刺激に眩む眼を薄く開いて、嬲られる己が乳房を盗み見た。
(……あぁ……こんな……)達也の言葉通り、“ビンビンに”勃起した乳首。
いまは二本の指に摘まれて、ユルユルと扱かれて、切ない快感を乳肉全体へと波のように走らせている。
「敏感なんだね。佐知子さんの乳首」
「あぁ、いやっ、ちがうの」
確かに、そこが感じやすい場所だという認識は、以前からあった。
母子の秘密の閨で、裕樹が特に執着を示すこともあって
(…というよりも。乳房を吸われること以外では、肉的な快感を得ることがなかったので)佐知子にとっては、唯一の快感のポイントとして意識するのが、その個所だった。
しかし。
「……ちがう、の…こんな、こんなに……」
「こんなに? 感じたことはないって?」達也の問いかけに佐知子はコクリとうなずいた。
その通りだ。こんなに感じたことはない。こんな感覚は知らない。
「……達也くん、だから……こんなに…」
秘密を明かすように、ひっそりと呟いた。
恥ずかしげに、しかし、甘い媚びを含んだ眼で見つめながら。
「うれしいよ」達也は笑って。佐知子の頬に、軽く口づけて。
「もっともっと、気持ちよくしてあげる」
「……あぁ……」伏し目になった佐知子の、長い睫毛が震える。
怯えと期待の半ばした慄きにとらわれながら、達也が掬い上げた肉丘の頂へと口を寄せていくのを、佐知子は眺めて。
「……ア…ア……アァッ!」
唇が触れるのと、佐知子が昂ぶった叫びを張り上げて背を反らせるのと、どちらが先だったか、微妙なところ。
硬く尖った乳頭を唇で挟みこんで、チロリと舌を這わせた達也。
それだけでも、甲高い悲鳴を上げて身悶える佐知子の逆上せぶりを見て取ると、一気に烈しい攻勢に出た。
大きく開いた口にデカ乳を咥えこんで、音たてて吸い上げ、こそげるように舐めずり、歯で柔らかく噛んで扱きたて、しこった乳首を舌で転がした。
「ヒイイィッ、アヒ、ん…あああっ、ヒアアァッ」
暴虐的なほどに苛烈な刺激に双乳を攻め立てられて、佐知子はただ甲走った叫びを引っ切り無しに洩らして、身悶え、のたうった。
「ア、アァッ、いや、こんな、ダメェッ」
味わったことのない感覚、鋭すぎる快感は、いくら叫んでも身もがいても身体から出ていかずに。肉体の奥深くで凝り固まり、膨れ上がっていく。
「た、達也くん…達也、くん…」
経験したことのない肉の異変に怯えて、佐知子はすがるように達也の名を呼んだ肩を掴んでいた両手は、いつしか達也の頸にまわされて、抱きつくかたちになっている。
「……いいんだよ」くらいついていた乳房から口をズラして、達也が囁く。
「このまま、もっと気持ちよくなって」
「…アァ……でも、こんな……ヒイイィッ」
達也は再びかぶりつく。すでに、より感度がいいと見破った佐知子の左胸へと。
「ア、ああぁッ、アッアッ…」ひときわ苛烈な口舌の攻撃を受けて。
燃え盛る乳肉の快楽が急速に高まり、一点へと収束していって……
「……ア……ヒイイィィッ!」爆ぜた。
ギリリッと達也の歯が、乳首の根を強く噛みしめた瞬間に。
圧し掛かる達也の体を跳ね上げるようにエビ反った佐知子の肢体が、数秒硬直する。
“イッ”と歯を食いしばって、苦しげな皺を眉間に刻んだ顔を、頸が折れそうなほど、うしろへとふりかぶって。
ギューッと、達也の首を抱いた腕に力がこもって。
乱れた髪の先から反り返った足の指まで。数瞬の間、ピーンと硬直させて。
それから、ドサリと重たい音をたてて、崩れ落ちたのだった。
……激発は唐突であり、さほど深く大きなものではなかった。
だから、佐知子の意識の空白も、短い時間だったのだが。
「……ハ……ア……あぁ…」
自失から戻っても、佐知子には、なにが起こったのか解らなかった。
胸先から強烈な刺激が貫いた刹那、意識が白光に包まれた。
覚えているのは、それだけだった。
「……あ……わ、たし……」呆然と呟いて。頼りなく揺れる眼が、達也をとらえる。
達也は、佐知子の汗を含んで乱れた髪を、優しく手で梳いて、
「……佐知子さん、軽くイッちゃったんだね」労わるように、そう言った。
「……イッちゃ…た……?」達也の言葉を鸚鵡がえしにして。
数拍おいて、ようやく佐知子の胸に理解がわいた。
(……あれ…が……?)
“イく”という現象、性的絶頂に達したということなのか、と。
初めて垣間見た忘我の境地を、呆然と思い出す。
「うれしいよ。僕の手で気持ちよくなってくれて」
微笑をたたえて、そんなことを囁きかけながら。
(……ま、刺激が強すぎてショートしちまったってとこだな)
その裏の冷静な観察で、そう断じる達也だった。
佐知子自身よりも、はるかに正確に、彼女の肉体に起こったことを把握している。
つまりは、佐知子の感度の良さと、そのくせ快感への耐性がないことからの暴発であったのだと見抜いている。
まだ呆然としている佐知子を見れば、あの程度のアクメさえ、これまで知らずにいたことは明白で。
記念すべき最初の絶頂としては、あまりに呆気なかったと思うが。
(まあ、この先、イヤってほど味あわせてやるわけだからな)
それも、こんな浅く弱いものとは比べものにならないキツいヤツを。
とにかく、これでまたひとつ、達也のゲームは終わりに近づいたわけであり。
それには、チョット惜しいような気持ちもあるが。
佐知子の見せる肉の感受性の強さ、乳責めだけでイッてしまうほどの官能の脆さは、ゲームが終了したあとへの期待を、いやがおうにも高めてくれる。
この熟れきった感度のいい肉体が、本格的な攻めを受けて、どこまでトチ狂うのやら…と、淫猥な期待に胸を疼かせながら。
しかし、達也は、今日はここまで、と自制を働かせる。すぐそこまで迫ったゲームの結末を、思い描いた通りの完全勝利で飾るために。
……達也の手が触れて、いまだ虚脱して横たわっていた佐知子は我にかえった。
これ以上…?と一瞬怯えたが。
達也が、佐知子の鳩尾付近にわだかまったブラを引き上げようとしているのに気づいた。
どうやら、約束通りにこれで終わりにするつもりらしいと理解して。
「…い、いいのよ……自分で…」
慌てて達也を止めて、力の入らない腕をついて、重たい体を起こした。
ズリ落ちたブラともろ肌脱ぎになっている白衣にあらためてそんな放埓な姿を晒していた自分に気づいて恥じ入りながら、達也に背を向けるようにして、手早く着衣を直していく。
さんざん苛まれた巨大な乳房を掬い上げて、ブラのカップに収める……
そんな所作に、いかにも情事のあとといった生々しさが滲むようで達也はひそかに笑った。笑いながら、佐知子の背姿に漂う新鮮な色香を楽しむ。
ホックを留めるために両腕を背後にまわした時に浮き上がった肩甲骨の表情も、奇妙に艶かしかった。
気が急くのか、手元がおぼつかないのか、なかなかホックを留められずにいる佐知子に手を貸してやる。
「……ありがとう……」
「どういたしまして。僕が外したんだしね」
「………………」
小さな呟きに冗談っぽく返しても、佐知子はあちらを向いたままで、俯く角度を深くする。
いつ外されたのかも覚えていない自分を恥じていたのかもしれない。
白衣に両肩を入れて。胸のボタンを留めながら、
「……恥ずかしい…」ポツリと、佐知子は洩らした。声には涙が滲んでいた。
「どうして? 恥ずかしがるようなことなんか、なにもないじゃない」
心得ていた達也は、佐知子を背後から抱きすくめながら訊いた。
佐知子は抵抗しなかったが、肩越しに覗きこむようにする達也からは顔を背けて、
「……だって……あんな…」
「感じてる佐知子さん、とっても可愛かったよ」
「いやっ…」
「それに。僕だから、あんなに感じてくれたんでしょ?そう言ったよね。うれしいよ」
「………………」達也の手が佐知子の顎にかかって、そっと向き直らせた。
佐知子は眼を閉じて、達也の唇を受けいれた。
軽めのキスをかわしながら、達也は、佐知子の状態をうかがう。
腕の中、抱きしめた身体は、まだ高い熱を孕んで。
女の臭いが強く鼻をつく。汗と女蜜が混ざりあった、サカリ雌の臭いが。
(こりゃ、パンツはグッショリだな)
この後の、佐知子の行動が、ハッキリと予測できる。
もう少し気持ちが落ち着いたところで。股座の濡れに気づいて。
気づかれまいと必死に取り繕いながら、なにか口実を作って部屋を出ていくまでが。
(…で、トイレなり更衣室なりに駆けこんで。クッサいマン汁に汚れたパンツを見て愕然ってか)
まったく、眼に浮かぶようだと思った。
(……替えのパンツ、持ってんのかね?)
……いま、自分がいる状況が、危うすぎるものであるということを。
佐知子は自覚してはいた。
意識のすみで危険を叫ぶ声を確かに聞いていて。
だが、それに従うことが出来ない。ズルズルと流されてしまっている。
今日もまた、ふたりきりの病室で。
達也の腕に抱かれて、甘美なキスに心身を蕩けさせられて。
しかし、それだけで終わる密事ではなくなっている。佐知子が剥き身の胸を玩弄されて、生まれてはじめてのアクメを味わった三日前から。
いまも、あの時と同様に白衣の前ははだけられ、ブラジャーはズラされて、豊かな胸乳は露になっている。張りつめ、熱く体温をのぼらせて、横抱きの姿勢で脇の下から片乳を掴んだ達也の指の間に、乳首を勃起させている。
だが、それすらも、もうたいした問題ではないのだ。
ふたりの行為が、加速度的に危険な領域に踏みこんでいることを示すのは、達也のもう一方の手の行き先だった。
達也の片手は、佐知子の股間に伸びて、たくし上がった白衣のスカート部分に潜りこんでいるのだ。
佐知子のストッキングは膝まで捲くり下ろされて、両の太腿が白い素肌を晒している。
そして、逞しいほどに張りつめた太腿は、白衣の下で達也の手が微妙な蠢きを見せるたびに、ビクビクとわななき、キュッと内腿の筋肉を浮き立たせ、ブルルと柔らかそうな肉づきを震わすのだった。
「……フフ。すごく熱くなってるよ。佐知子さんのここ」
口を離した達也が悪戯っぽく笑って。“ここ”と言いながら、潜った手にどんな動きをさせたのか、佐知子が高い嬌声を上げて、喉を反らした。
達也は、仰け反った白い喉に唇を這わせながら、お決まりの問いかけを。
「気持ちいい? 佐知子さん」
「……あぁ……達也くん…」わかりきったことを聞く達也を、恨めしげに見やりながらも。
コクリ、と。小さく佐知子はうなずいた。
素直になれば……もっと、気持ちよくしてもらえる。
それが、この数日間の“レッスン”で、佐知子が学んだことだった。
レッスン−そう、それは肉体の快楽についての授業だった。
無論、達也が教師で、佐知子が生徒だ。
ふたりきりの病室が教室で、教材は佐知子の熟れた肉体。
日に何度となく繰り返される、秘密の授業。
達也は、教師として、この上なく優秀であった。その熱心な指導のもとに、佐知子は急速に快楽への理解を深めている。
本当に……自分はなにも知らなかった、と佐知子は思うのだ。
結婚生活を経験し、子供を生んで。それで、人並みには性についても知った気になっていたけれども。
それが全くの誤りであったことを、思い知らされている。この年になって。
親子ほど年の離れた若い男によって。
巧緻を極める達也の手管は佐知子自身が知らなかった肉体の秘密を次々と暴き立てていく。
性的には鈍であると思いこんでいた自分の肉体が、達也の手にかかれば、たやすく燃え上がり、過敏なほどに感覚が研ぎすまされる。
こんなにも豊かな官能が自分の身体に潜んでいた……という発見は、震えるような喜びへとつながった。より強く鮮明に、達也の手を、唇や舌を感じられることが嬉しいのだ。
だから、佐知子は、ここが病室であることも勤務中であることも意識の外に追いやって従順に達也の行為に身を委ねる。
愛しい若者の手から快楽を授かることに、至極の歓悦と誇らしさを感じて、少しづつエスカレートする達也の行為をゆるしてしまう。
いまも、スカートの中に潜りこんだ達也の手指に、下着越しに秘所を愛撫されて。
まさに、紙一重というべき危うい状況だと自覚しながら、そこから逃れようともせず、緩めた両脚に恭順の意を示して、達也の問いかけにも素直にうなずいて。
あけすけに、この瞬間の愉悦を明かして、さらなる快感を求めてみせるのだった。
「すごく濡れてるよ。また、下着を取り替えなくちゃならないね」
「……いやっ…」
達也の言葉に、佐知子は頬に新たな血をのぼらせて、かぶりをふった。
悦楽の時間のあとに、トイレで、汚れたショーツを穿き替える時の情けなさ。
だが、それほどに身体を濡らすことも、達也によって教えこまれたのだと思えば、この瞬間には、もっと濡らしてほしい、もっと溢れ出させてほしい、という倒錯した衝動がわきあがってくる。
「アアアァッ」
グリリッと、達也の指が、布地の上から強く女芯を押し揉んで佐知子の願望は叶えられた。
新たな蜜を吹きこぼしながら、淫猥に腰がくねる。
「アッ、イ、アッアッア…」
さらに連続するクリ責めに、佐知子の嬌声が高く小刻みになっていく。
そこを攻めたてられて絶頂を極めることも、すでに何度も経験させられていた。
呑みこみの良い佐知子の肉体は、すでにその感覚を覚えていて、忘我の瞬間へと気を集中させていく。
「アッアッ……あ…?」
だが。急激に高まった快感は、不意に中断した攻めに、はぐらかされてしまった。
ボンヤリと開いた眼に怪訝な色を浮かべる佐知子をよそに、達也は、肉芽から離した指を引っ掛けて、ショーツの股布をズラした。
「あ、いやっ…」
ベッタリと貼りついていた布地を剥がされ、熱く濡れそぼった秘肉を晒されたことを感得して、佐知子が心細げな声を洩らしたが。
それが拒絶の意味でないことは、すでに了解済み。
女の部分を直接触れられることさえ、これがはじめてではないのだから。
充血した肉厚の花弁を擽るように弄ったあとに、達也の指は、ゆっくりと進入する。
「……あぁ…」
佐知子が熱く重たい息をついた。女の中心を穿った達也の二本の指をハッキリと感じとる。
それへと、自分の蕩けた肉が絡みついていくのも。
達也の長い指が根元まで埋まりこんで。ゆったりとしたテンポで挿送を開始する。
「ふあっ、あ、いっ、アアッ」
たちまち佐知子は、はばかりのないヨガリ声を上げて、ギュッと達也のパジャマを握りしめて、崩れそうになる体を支えた。
「すごく熱いよ、佐知子さんの中。こんなに僕の指を締めつけて」
囁きで、佐知子の悩乱を煽りながら。達也は抜き差しする二本の指に玄妙な蠢きを与える。
「アヒッ、ア、んあ、ああぁッ」
熱く滾った肉壷を攪拌され、肉襞を擦りたてられて佐知子の閉じた瞼の裏に火花が散った。
たやすく自分の肉体を狂わせていく、達也の魔力じみた手管に畏怖と甘い屈従の心をわかせながら。さらなる狂熱と快楽の中に沈みこもうと、腰が前へと突き出される。裸の腿がブルブルと震えながら横へ広がって、膝の位置で白いストッキングがピーンと張りつめる。
「気持ちいい?」
また、達也に訊かれると、一瞬の躊躇もなくガクガクとうなずいて、薄く開いた眼で、うっとりと達也を見やった。
達也が唇を寄せると、待ちかねたようにそれを迎える。
濃密に舌を絡め、唾を交換しながら、達也の手は休むことなく動き続ける。
女肉への指の挿送を強く激しくしながら、豊満な乳房をキツく揉みしごいて、佐知子の官能を追いこんでいく。
知りそめたばかりの快感に対して、熟れた女の肉体は、あまりにも脆く。
くぐもった叫びを塞がれた口の中で上げた佐知子は、必死にキスをふり解いて、
「アアッ、た、達也くん、私、もうっ…」
切羽つまった声で、いまわの際まで追いつめられた性感を告げた。
また、あの魂消るような悦楽の瞬間を味わうことが出来るのだ、という喜びに潤んだ眼を輝かせて。
−だが。
「ああっ!?」
直後、佐知子の口から洩れたのは、感極まった法悦の叫びではなく、意外さと不満の混じった声だった。
突然達也が、女肉への攻撃を止めてしまったのだ。
「あぁ、いやぁ、達也くん」
絶頂寸前で中絶された快感に、ムズがるように鼻を鳴らして、腰をくねらせる佐知子にはお構いなしに、達也は白衣の下から手を引き抜いてしまった。
「……あぁ…」
泣きたいような焦燥と喪失感が佐知子を襲って。恨むように達也を見たが。
ほら、と、目の前にかざされた達也の手に、
「い、いやっ」
火の出るような羞恥を感じて、慌てて眼を逸らした。
達也の指は、佐知子の吐きかけた淫らな汁にまみれて、ベッタリと濡れ光っていた。
「スゴイね。佐知子さんて、ホントに感じやすいんだね」
「ああ、いやいやっ」
感嘆する達也の言葉が恥辱をあおって、佐知子は小さく頭をふった。
「……た、達也くんだからよ。達也くんだから、私、こんなに」
涙を浮かべた眼で、縋るように達也を見つめて、そう呟く。
実際、亡夫との営みでは(裕樹との情事でも、勿論)これほど濡らしたことなど一度たりともなかったから。佐知子にとっては、それは真実だった。
「うれしいよ」お定まりの弁明に、これまた、お決まりの言葉と笑みを返して。
その後に。達也は、指にからんだ佐知子の蜜を、ペロッと舐めとって、佐知子に悲鳴のような声を上げさせた。
「や、やめて、達也くん!?」
「フフ、佐知子さんの味」
「い、いやあっ、汚いわ」咄嗟に達也の手を掴んで止めさせようとする佐知子に、
「そんなこと、あるもんか。佐知子さんの身体から出たものが汚いわけないよ」
ふざけるでもない調子で、そう言い放って。
さらに達也は、チュッと音立てて、指先を吸って見せた。
「……あぁ、もう……」
あまりな達也の行動に言葉を失って、呆然と見やる佐知子。
佐知子の偏狭な常識をはるかに逸脱した行為。変質的ともいえる行為のはずなのに。
しかし、それが嫌悪の感情へ結びつかずに。
(……そんなにも……私のことを……?)
キワどい戯れも、自分に向ける想いの強さのゆえかと。恋と快楽に酔わされた心に納得してしまって、痺れるような歓喜を感じてしまう。
「ねえ、佐知子さん」達也は、佐知子の手を握って、下へと移動させた。
導かれるまま、佐知子の手は、達也の股間に触れる。
指先に感じた熱と硬度に、ハッと佐知子は息をのんで、反射的に手を引こうとしたが。
無論、達也はガッチリと押さえこんで、それを許さない。
「佐知子さんの感じてる顔が、あんまり色っぽいから。僕のも、こんなになっちゃった」
「……………」
甘えるように囁かれると、佐知子から抵抗の気ぶりが消えた。
ね? と達也に促されて、おすおすと巨大な膨らみに指を這わせる。
「……あぁ…」
相変わらずの、度外れた量感と鉄のような硬さを感じとって、熱い息が洩れた。
佐知子の指に力がこもるのを感得すると、達也は押さえていた手を外して、再び白衣の裾から潜りこませた。
「アッ、い、あぁっ」
秘裂への刺激が再開されると、佐知子は待ちわびたといったふうに、たちまち反応した。
腰をうねらせ、舌足らずな嬌声を断続させながら、達也のこわばりを掴んだ手を動かしはじめる。半ば反射的な行動だったが、さすられた達也の剛直が、ググッと力感を増すのを感じると、もう手を止めることが出来なくなった。
……白昼の病室での秘密の痴戯は、相互愛撫のかたちとなって、いっそう熱を高めていく。
もはや、“達也の強引さを受け入れるだけ”などという、おためごかしの言いわけもきかない痴態を演じながら。
佐知子は夢中で嵌まりこんでいった。
逞しい牡の象徴に触れていると、いっそう血が熱くなって、肉体の感覚が鋭くなって。
達也の手から与えられる快感が、何倍にも増幅されるように感じられた。
だから佐知子は、やがて達也がパジャマと下着をズリ下ろして、猛り狂う怒張を露にした時にも、それを当然のことのように受け容れて、一瞬の躊躇もなく巨大な屹立へと指を巻きつけていった。
−12−
「……あぁ…」
熱く、生臭い息が洩れる。佐知子は快楽に霞んだ眼を細めて、握りしめた牡肉を見つめた。
“生”は効いた。類稀なる逸物の凄まじい特徴のすべてが手肌からダイレクトに伝わってきて脳髄を灼く。総身の血肉を沸騰させる。
狂乱を強める佐知子の肉体を、達也は嵩にかかって攻め立てた。
荒々しく、しかし、悪辣なまでの巧妙さで、パンパンに張りつめたデカ乳を揉みたくり、とめどなくヨガリ汁を溢れ出す肉孔を抉りたてて、母親ほども年上の熟女ナースを
身悶えさせ、引っ切り無しの嬌声を上げさせる。
「アッ、いぃっ、たつや、くん、ああっ」
剥き出しの胸や腿を粘っこい汗にテカらせ、半脱ぎの白衣もベッタリと肌に貼りつかせて、たまらない快美にのたうちながら、佐知子は対抗するように達也の剛直を烈しく扱いた。
達也が顔を寄せると、鼻を鳴らして、自分からも吸いついていく。
舌をからめ、達也の唾を飲みこむうちにも、体の奥で、巨大な感覚の波がせくり上がってくるのを感じた。
(……く…来る…?)
これまでで最大級の波濤を予感して、ブルッと身震いを刻みながら。
無論、肉の震えは、恐れよりも遥かに大きな希求のゆえであったから。
佐知子は、諸手を上げて、迫りくる巨大な波へと身を投げようと……。
……したところで。
「…いま」口吻をほどいて。達也が囁きかけた。
「佐知子さんと、ひとつになれたら最高に気持ちいいだろうな」
「……あぁ……あ…え…?」
目の前の悦楽を掴みとることだけに意識を占められて、佐知子はうわの空に聞き返したが、
「こんなに熱くなってる佐知子さんの中に、僕のを入れたら。死んじゃうくらい気持ちいいんだろうな、って」
もう一度、より露骨に繰り返した達也の言葉の意味を理解して、ギョッと目を見開いた。
「だ、ダメよっ、達也くん」
「わかってるよ」
怯えた声で掣肘する佐知子に、達也はうなずいて見せる。
「僕も、無理やりなんてイヤだからね。佐知子さんの心の準備が出来るまでは我慢するよ」
年に似合わぬ物分りの良さを示して。それに、と笑って続けた。
「病室で、そこまでしちゃうのはマズいよね、さすがに」
「………………」曖昧な表情になって。佐知子には、答えようもない。
まだ、達也と最終的な関係を結ぶ覚悟は決められずにいた。
これだけの痴態を演じておいて、いまさらとも言えるだろうが。
それでも、やはり、“最後の一線”を越えるかどうかは、佐知子にとって大問題だった。
それを踏み越えることで決定的に倫理や良識を犯すことになる…という恐れがある。
そんな理性の部分での恐れの感情は、当然のこととしてあって。
しかし。それとは別に、もっと強く大きな恐怖がある。
もっと、根源的な部分で感じる恐れが……。
「だから、いまは、こうして触れあうだけで満足しておくよ」
そう言って、達也は、緩めていた愛撫をまた激しくしていく。
「アッ…はぁ、ああ」
水を差された快感を掻き立てられて、佐知子はたやすく悩乱の中へと追い戻される。
だが、悦楽に浸された意識にも、最前の達也の言葉は刻みこまれてしまっていた。
“ひとつになれたら、最高に気持ちいいだろうな”
……握りしめた達也の肉根が、これまで以上の存在感で迫ってきて。
佐知子は薄く開いた眼で、それを盗み見た。
(……あぁ…)圧倒的なまでの逞しさと、禍々しい姿形が眼を灼く。
その凄まじい迫力は、佐知子を怯えさせる。
そうなのだ。佐知子が、ここまで痴情の戯れに耽溺しながら、最後の一線を越えることを逡巡する最大の理由は、達也の逞しすぎる肉体に対する恐怖のゆえなのだった。
(……こんなの…無理よ……)
出産経験のある年増女の言いぐさとしては可愛らしすぎる気もするが。
佐知子としては、まったく正直な思いなのだった。なにしろ、佐知子が過去に迎え入れたことがある亡夫と息子の男性は、達也とは比較にならないほど卑小だったから。
(……こんな……)
こんなに太くて長くて硬いモノに貫かれたら……肉体を破壊されてしまう、と佐知子は本気で恐怖する。
だが。その一方で。
その巨大さに、ゴツゴツとした手触りに、灼鉄のような熱と硬さに、ジンと痺れるものを身体の芯に感じてしまいもするのだ。
若く逞しい牡の精気に威圧されて、甘い屈従の心を喚起されそうになる。
そんな己の心を自覚すれば。もうひとつの、本当の恐れにも気づいてしまう。
単純な苦痛への怖気の先にある、より深甚なる、暗い闇のごとき恐怖。
こんな肉体を、迎えいれてしまったら……こんな牡に犯されてしまったら。
自分は、どうなってしまうのか?
その時こそ。達也によって齎されてきた自分の変容は決定的なものとなって。
まったく別の自分に変えられてしまうのではないか、これまでの、越野佐知子という存在は消え失せてしまうのではないか。
そんな不穏な予感があって、佐知子を怯えさせるのだった。
……だが、そんな懊悩や葛藤も、佐知子の肉の昂ぶりを冷ますことはない。
むしろ、“達也によって変えられてしまう自分”への恐怖は、そのまま甘い陶酔に転じて、佐知子の血を滾らせてしまう。
「……でも」
そんな佐知子の心の揺れは、冷酷な眼で読み取っているから。達也は、このタイミングで
言葉をかける。熱っぽい声で、予定通りの科白を。
「正直いえば、早く佐知子さんと、ひとつになりたいよ。僕のを、思いきり、佐知子さんの中にブチこみたい」
「…ああぁっ」
露骨な物言いに刺激されて、佐知子は高い叫びを上げて、ブルッと胴震いした。
「こ、怖いのよっ」けぶる瞳で達也を見つめて、釣りこまれたように本音を口走る。
「達也くんのが、あまりにも逞しいから……怖いの」
「そんな、心配してたの? 大丈夫だよ」内心で哄笑しつつも達也の声はあくまで優しく。
「これまで、みんな、とっても気持ちいいって言ってくれたよ。僕のオチンチン」
サラリと。過去の女遍歴を仄めかして、保証した。
「……………」カッと、喉が熱くなるのを佐知子は感じる。
勿論、達也が豊富な経験を積んできたことは聞くまでもなくわかっていた。
そうでなくて、どうしてこれほど女を狂わせる術を身につけているものか。
これほど魅力に溢れた達也だから、当然だとも思う。
しかし、実際に言葉にして聞かされれば、乱れてしまう心を抑えきれずに、
「……たくさん……女を知っているのね…」
そんな言葉が、勝手に口をついて出た。
責めるではなく、恨むような声になってしまうのは、はるか年上な女の負い目か、今この瞬間にも痺れるような快楽を与えられ続けている身の弱さか。
「気になる? 佐知子さん」
「……知らないわ…」
「遊びだよ、これまでのことは。言ったでしょ?佐知子さんは、僕がはじめて本気で好きになったひとだって」
甘ったるく囁いて。達也は、弱めていた玩弄の手にジンワリと力をこめていく。
「こうして、佐知子さんを喜ばせるために、経験を積んできたってことかな」
「……調子の…いいこと…を…」
そう言いながら。確かに、女の優越心を刺激されてしまって、佐知子の声も甘くなる。
どだい、グショ濡れのヴァギナに指を突っこまれたままの状態では、年甲斐もなく拗ねたような態度を持続できるわけもなかった。
先ほど、絶頂の間際まで追いこまれた時点から、落ちることも昇ることも出来ないままに、緩やかな攻めに官能を炙られ、焦らされてもいたから。
「……あぁ……達也くん…」
佐知子は、もっと強く、とねだるように、秘肉を貫いた達也の指の周りに腰をまわした。
達也は、佐知子の快楽を引き伸ばすように、ジックリと攻め立てながら、
「だからね。その時が来たら、僕を信じて任せてくれればいいんだよ」
暗示をかけるように、佐知子の耳へと吹きこんだ。
「そうすれば、こんな指なんかより、ずっと気持ちよくしてあげるから」
「……こ…これより…も…?」これ以上の快楽など、本当にありえるのだろうか?と。
「そうだよ。だって」
グッと、達也は二本の指を根元まで佐知子の中へ突きこんで、高い嬌声を上げさせると、
「ペニスなら、こんな指よりもずっと、佐知子さんの奥深くまで届く。これまで触れられたことのない、気持ちいいところを刺激してあげられる」
それに、と。指先を曲げて、熱くトロけた膣襞を強く擦りたてた。
「アヒィッ、あっあっ」
「ペニスなら、これよりずっと太いから、佐知子さんの中を一杯に満たして。ゴリゴリ、擦ってあげられる」
無論、達也は、自分が仕向け追いこんだ佐知子の窮状を見通していた。
この同級生の母親が理知的な美貌と豊満な肉体をもった熟女看護婦が自分の与える快楽に溺れこんで“触れなば落ちん”という状態にまで追いつめられていることを理解していた。
しかし、このゲームの終着は、あくまで佐知子の側から自発的な屈服を引き出すことだと。
自らの構想に固執する達也は、非情なまでの手管で、燃え狂う佐知子の官能を、さらに追いこんでいく。
「あっ、あああっ、もう、もうっ」
今度こそ、という切実な思いを気張った声にして、佐知子が喚く。
汗に濡れた半裸の肢体を、瘧のようにブルブルと震わして。
ドロドロの女陰が、達也の指をギュッと絞りこんで。
「あ、もう、もうっ」
極限まで膨れ上がった愉悦が弾け飛ぶまで、もう、ひと突き、ひと擦り……
「……ヤバい」
らしくもない、焦った声。だが、そう洩らした達也の顔は冷静で。
見計らった、このタイミングで、女肉を攻める手の動きをピタリと止めた。
「アアッ!?」佐知子が悲痛な叫びを上げて、カッと眼を見開く。
達也の、わざとらしい呟きを、佐知子は聞かなかった。聞き取る余裕などなかった。
佐知子にわかったのは、今度こそ快楽のトドメを刺してくれるはずだった指が、突如動きを止めたことだけ。
「イヤッ、イヤ……あ、ダメェッ!」
悶絶せんばかりの焦燥を泣き声で訴えて、ズルリと引き抜かれていく指を追って、
あさましく腰を突き上げても無駄だった。乱れた白衣の裾から、
佐知子の淫汁にベットリと汚れた達也の手が抜き出される。
その動きで白衣のスカート部分は完全に捲くれ上がって、佐知子の白い太腿や、股布が横にズラされたまま伸びてしまったようなパール・ホワイトのショーツ、黒い濃厚な繁みまでが露になった。それらは、一面、粘っこい汗と蜜液にビッチョリと濡れそぼっている。
しかし、佐知子には、自分のそんなあられもない姿態を顧みる余裕などなかった。
「ど、どうしてっ? 達也くん」
泣きそうに顔を歪めて、達也に質した。ふいごのように腹を喘がせ、巨大な双つの乳房を大きく揺らして。片手は達也の男根をキツく掴んだまま、もう一方の手には、彼女自身の淫液にまみれた達也の手を引き戻そうという気ぶりさえ示しながら。
とにかく、一刻も早く行為を再開して、悦楽を極めさせてほしいという切実な思いが全身から滲んでいたが。
「……ごめん」
バツが悪そうに苦笑した達也は、自分の屹立を握る佐知子の手を外して、
「あんなこと、言ってたせいか……なんだか、我慢できなくなりそうで」
「……え…?」
「その、佐知子さんと本当にセックスするイメージを掻き立てちゃってさ、自分の言葉で。これ以上続けたら、我慢できずに、佐知子さんを襲ってしまいそうで」
「……襲っ、て…」
「それじゃ、約束を破ることになるもんね」
それを避けるために、行為を止めたということだった。
佐知子は呆然と、達也の説明を聞いて。
「……で、でも…」思わずといったふうに、取りすがるような声を出した。
「うん?」
「そ、それで、いいの?達也くんは…」
「佐知子さんが、本当に僕とひとつになる決心をつけてくれるまで、待つっていうのが約束だからね」
言葉に迷うようすの佐知子と、アッサリと言い放つ達也。
「勢いに流されて、佐知子さんの意思を無視することだけはしたくないんだ」
「………………」決然たる態度に、佐知子はなにも言えなくなってしまう。
確かに、それはあくまでも佐知子の意思を尊重しようとする達也の誠実さの表れと言えるのだろう。
(……でも……)
それにしても、あまりにも酷なタイミングではなかったかと。生殺しの悶えを抱えて、佐知子は恨めしさを感じずにはいられないのだった。
あと少し……ほんの少しだったのに……。
それほど、達也も追いつめられていたということだろうが。責めるのは、身勝手すぎるのだろうが。
でも……。
剥き出しの胸を隠そうともしないまま、ギュッと自分の腕を抱くようにして、火照りの引かぬ肉体の疼きに耐える佐知子。
その悩乱のさまを尻目に、
「……よっと」達也は、器用に腰を浮かせると、下着とパジャマを引き上げた。
「あっ……」
佐知子は、惜しむような小さな声を洩らして、咄嗟に手を伸ばしかけてしまう。
いまだ隆々と屹立したままの達也の男性が、無理やり隠される。
パジャマの股間を突上げる大きな膨らみを見下ろして、
「…ま、そのうちおさまるでしょ」また苦笑して、達也は言った。
「ほ、本当に、いいの? 達也くん」
念を押すというよりは、翻意をはかるように佐知子は訊いた。
達也の解消されぬ欲求を気遣うようで、実のところは途絶した淫戯に未練を残しているのだということは、見えすいてしまっていた。佐知子に自覚する余裕はなかったが。
「うん。我慢する。正直、手でしてもらってるだけでも、自分を抑えきれなくなりそうなんだよね、いまは」
「……そう、なの…」
「病室で、それはマズいもんねえ?」
「そ、そう、ね」
「僕だって、いやだからね」
つと、達也が佐知子の裸の肩に手を伸ばして。佐知子はドキリと反応したが。
「そんな、ドサクサみたいに佐知子さんと結ばれるのは」
しかし、達也の手は佐知子の肘までズリ落ちた白衣を掴んで、そっと引き上げたのだった。
「……あ…」
いまさら、自分の放恣な姿に気づいたように、佐知子は達也が肩まで戻してくれた白衣の襟を掴んで引っ張った。
「今日の反省もこめて、改めて誓うよ」真剣な眼で、達也は佐知子を見据えて。
「佐知子さんが、すべてを許してくれる決心がつくまで、僕は我慢する。けっして、強引に佐知子さんを奪ったりしない」
「…………………」
佐知子は、なにも言うことが出来ずに。ただ、気弱く揺れる瞳で達也を見つめるだけ。
達也は、またバツの悪そうな笑みを浮かべて、
「でも……今日ので、僕の理性も、あんまり信用できないって分かっちゃったからなあ。 明日からは、佐知子さんにキスしたり触れたりするのも、少し控えなきゃね」
「…………………」佐知子の唇が、微かにわななく。だが、結局、言葉は紡がれずに。
「…………………」首を傾げるように俯いて、捲くれ上がったスカートを直した。
膝にわだかまったストッキングを引き上げる。
しどけない横座りの姿勢での、その挙措には、物憂い色香も漂ったが。
どこか茫然とした表情や、覚束ない手の動きには、ひどく頼りない風情があった。
途方にくれるようにも見えた。
「あんた、鬼だよ。宇崎クン」
つくづく……といった思い入れで、高本が言った。電話の向こうの達也に。
市村も、それには同意である。
定例の、達也からの経過報告。今日は、ずっと高本が達也と話しているのだが。
傍らで聞いてるだけで、おおよその状況は解った。
実際、達也の遣り口は、ムゴいとも言えるほどで。それをして、鬼や悪魔呼ばわりするのにもまったく異存はないが。
しかし、やたらといきり立っている高本が、達也に翻弄される越野佐知子に同情しているわけではないこともわかっている。当たり前だ。
「ハァ?いや、越野ママが、どんだけ悶え苦しもうが、そんなこたあどうでもいいのよ。つーか、それについちゃ、ジャンジャンやってくれとお願いすることも、ヤブサカでないオレなのよ」
案の定、この言いぐさである。……なんだか、ニホン語が怪しいが。
「オレが言いたいのはさ、そうやって、宇崎クンが楽しんでる間はさ、越野ママと一緒に、 オレも焦らされてるってことよ。まだかまだかと待ち続けて、ギンギンになってる、このチンコを、どうしてくれるのかと」
ようするに、言いたいことは、それなのだった。
実のところは、それほど時間がかかっているわけではない。むしろ、順調すぎるほどに達也の佐知子攻略は進行しているわけだが。
しかし、すでにいつでもモノに出来る状態にありながら手を出さない達也のやり方が、高本には承服できかねるらしい。
「つーかさ、その状況で、ブチこまずにすませるってのが、信じられないよ。ホントに血ィ通ってるのかって、思うよ」
……まあ、高本らしい憤慨の仕方ではある。
でも、それが達也だろう、と市村は思うのだ。
まだ完全にはシナリオを消化していない。まだ、佐知子へのいたぶりを楽しみ尽くしていない。だから、達也は、トドメを刺さなかった。
すでに完全に達也の手に落ちて、本音では達也に犯されることを待ち望んでいる佐知子を突き放すこと。達也にとっては、それこそが自分の快楽に素直に従った行動だったのだ。
(……まあ、異常だけどな)
つくづく、こんな化け物に眼をつけられた、それもかなり気に入られてしまった佐知子は、哀れなことだと、同情する市村だった。
……同じ頃。越野家。
白いバスローブ姿の佐知子が、浴室から出てきた。
首にかけたタオルで洗い髪を拭きながら、キッチンへと向かう。
冷たいミネラル・ウォーターをあおって、湯上りの喉と身体を潤す。
ホッと息をついて、見るともなく周囲を見回した。
キッチンにも、続きの?リヴィングにも、ひとの気配はなかった。
先に入浴を終えた裕樹は、二階の自室に引き上げたようだ。
明日はテストがあるから、今夜は少し遅くまで勉強しなけらばならないと夕食の時に言っていた。
だから……今夜、裕樹が寝室に訪れることはないだろう。
そんな思考をよぎらせて。直後、そんな自分に眉をしかめて。
佐知子は、使ったコップを洗って、キッチンを出た。
自室へと向かう途中、階段の前で足が止まった。
階上は静かだった。かすかに、気配が伝わるだけ。裕樹は真面目に試験勉強に取り組んでいるらしい。
……やはり、今夜、裕樹が寝室に来ることはないようだ、と。
また、その事実を佐知子は胸に呟いてしまう。
学業に差し障るようなら関係を絶つと、以前に釘をさしたのは佐知子自身であり、裕樹はよく母の戒めを守っていた。
「………………」
ボンヤリと暗い階段を見上げていた佐知子の手が、手すりにかかった。
素足にスリッパを履いた片足が上がって、一段目のステップを踏みかけて……
フウと息を深い息をついて、佐知子は足を戻した。
踵をかえして、階段から離れる。
……馬鹿な考えを起こしかけた、と自省する。
やって来た息子を受け入れるのと自分から息子の部屋を訪れるのとでは、まるで話が違う。
裕樹との秘事は、快楽を求めてのものではなかったはずだ……と。
自らに言い聞かせたのは、心理の表層の部分。その裏には。
求めるだけ無駄だという諦めが、確かにあった。
この肉体に巣食った疼きを、裕樹に鎮められるわけがない、と。
それよりは……この数日に覚えてしまった、ひとりの行為のほうが……。
その思いに急かされて、佐知子は駆けこむように寝室に入った。
バタンと、大きな音をたてて、ドアは閉ざされた。
……さんざん、高本が達也への恨みごとを並べたあとで、市村は電話を代わった。
『いや、まいった』さすがに辟易した調子で、達也が言った。
「まあ、ずいぶん、念入りに楽しんでるみたいだからね。高本が焦れるのも無理ないよ」
「そうだよ。もっと言ってやって、市やん」
『うーん、実際、楽しいんで、ついついな』
「でも、怪我の回復は順調なんだろ? いつまでも入院してるわけにもいかないんだよ」
『ああ。そうだよな』
「そろそろ、次の楽しみ方に切り替えてもいいんじゃないの」
「市やんが、いいこと言った!」
横で、うるさく騒ぐ高本に手をふって黙らせる。
「まあ、達也がデティールに凝るのは知ってるけどさ。それだってもうじきなんじゃないの?」
『そりゃあ、佐知子しだいだな。どんだけ辛抱するかって』
「見当はついてんだろ? こっちも、越野への報告会を開く都合があるからさ。実際、あとどれくらい持ちそうなの? 越野のママは」
『どのくらいって…』達也はせせら笑って、
『明日一日、持ちこたえたら、感心するけどな』
まあ、無理でしょう、と。自信たっぷりに言い放った。
……その一日は、いつもとまったく変わらぬように始まった。表面的には。
「おはよう、佐知子さん」
「お、おはよう、達也くん」
いつも通りの笑顔で迎えた達也に、ぎこちなく挨拶をかえして。
朝の検診をしようと、ベッドの傍近くに寄った時に、
「……あっ」
腕を捉えた達也の手に柔らかく引き寄せられて。次の瞬間には、佐知子の身体は達也の腕の中にあった。
「今日も、綺麗だね」間近に見つめて、惚れぼれと述懐した達也が口を寄せる。
「……ん…」
少しの抵抗も示さずに、佐知子はそれを迎えて。唇が合わさると、ギュッと達也の肩にしがみついた。
「……ふ…ん……」達也の舌が滑りこめば、はや昂ぶった息を鼻から洩らして。
待ちかねたように自分から舌をからめて吸いついた。
ここ数日の習慣となった朝の挨拶。それが、この日も行われたことが佐知子を安堵させ喜ばせた。
昨日の達也の自戒の科白、“キスや身体に触れることも控える”という言葉が気にかかって、
胸を重くさせていたから……。
あっという間に口舌の快楽に嵌まりこんで、ふんふんと鼻を鳴らしながら、熱っぽい体を押しつけてくる佐知子のノボセ面を、達也は観察する。
今朝の佐知子は、特に念入りな化粧を施しているのだが。
しかし、その下の憔悴の色を隠しきれていなかった。
(クク…悶々と、眠れぬ夜を過ごしたってとこだな)
独り寝の褥で、熟れた肉体の火照りに、朝まで身悶え続ける佐知子の姿が目に浮かぶようだった。
(俺の指を思い出して、自分で慰めたのか?俺にされるみたいに気持ちよくなれたかよ?)
まあ、無理だろうな、と倣岸に確信する。
いくら自分の指で疼く体をイジくりましたって、望むような快感は得られずに。
結局、肉の昂ぶりを鎮めるどころか煽りたてるだけで終わったのだろうと。
(また、そんな辛い夜を過ごしたいか? とっとと楽になっちまえよ)
苦しみから解放されるにはどうすればいいのか、いい加減に理解しろ、と。
(まあ、佐知子が素直になれるように、俺も協力してやるけどな)
恩着せがましく、そう内心に呟くが。
“協力”などという名目で、実際にやろうとしていることは……。
優しく佐知子を抱きとめていた達也の手が滑って、肩から二の腕を撫で下ろした。
「……フン……ンフ……」
それだけで、佐知子はビクリと身体を震わせて、鼻から洩れる息を甘くする。
全身の肌が、驚くほど敏感になっていた。
一晩中、官能の火に炙られ続けたせいだ。
隠せぬ憔悴があらわす通り、佐知子はほとんど眠っていなかった。
長い夜の煩悶ぶりも、達也の見抜いたとおり。
素っ裸で、ベッドの上を転げまわるようにして。
切なく達也の名を呼びながら、自分の手で張りつめた乳を揉みたくり、濡れそぼる女肉をコネまわした。
懸命に達也の愛撫をなぞって、しかし、得られる快感は達也の与えてくれるものとは程遠く、あまりにも頼りないもので。
夜が白む頃に、疲弊によって短く浅い眠りにつくまで、ついに満足は得られなかった。
肉奥の火は燃え続けて、身体の熱は高まり続けている。
だから、朝っぱらから達也が仕掛けた接触に、佐知子は歓喜して縋りつく。
むしゃぶりつく、という気ぶりを口舌の激しい蠢きにあらわして、
腕を達也の首に巻きつける。
クタリとしなだれかかった柔らかな身体、その総身から、なにもかも受け容れるという心情が滲み出ていた。
どうにでもして、と。
この苦しみから救ってもらえるなら、なにをされてもいいから、と。
なにを……されても……
「……ンフウウッ」佐知子が、喉の中で歓悦の叫びを上げる。
白衣に包まれた豊満な胸の膨らみに、達也の手が触れたのだ。
閉じた瞼の裏に光が弾けた。
どうして、達也の手はこんなにも気持ちいいのだろう。
まだ、着衣の上から、そっと掴まれただけなのに。昨夜、自分の手で裸の胸を強く握って、どれだけ激しく揉みしだいても得られなかった鮮烈な快感が、熱く滾った肉房から身体中へと伝わっていく。
(……もっと……もっと……)
さらなる快楽を求めて、達也の手へ乳房を押しつける佐知子。それに応えて、達也の指に力がこもる。
(……あぁ……)
ソフトなタッチで、熱く体温をのぼらせた乳肉を揉みほぐされて、佐知子の背に甘い痺れが広がる。うっとりと眉宇がひらいていく。
だが、一夜の焦燥に炙られた肉体には、その繊細な刺激は、切なさを増すだけだった。
(……もっと……もっと強く揉んでっ)
口を塞がれていなければ、その求めは言葉になって吐き出されていた。
代わりに、なおも軽い愛撫を続ける達也の手を掴んだ。それは、もっと強い行為を促すためだったのだが。
(あぁっ!?)あっさりと、達也は佐知子の胸から手を外してしまった。
「わかってるよ」キスも解いて。達也は、目を見開いた佐知子にうなずいてみせた。
「控えるって、昨日約束したもんね」
「ち、違っ…」愕然として。そんなつもりではなかったと訴えかける佐知子をよそに。
「どうしても誘惑に負けちゃうんだよなあ。佐知子さんを前にすると」
自嘲するように呟いた達也は、佐知子の肩を抱いた腕も離してしまう。
「た、達也く…」
「……どんどん、佐知子さんへの想いが強くなってるってことだろうな。危ないよね。謹まないと」
「………………」苦笑する達也に、なにも言えなくなって。
佐知子は泣くように顔を歪めて、呆然と達也を見つめていた。
……佐知子の、長く辛い一日は、まだはじまったばかりだった。
達也は誓約を守った。
佐知子への身体的な接触を“控える”という誓言を守って、この日の午前を過ごした。
そう、“控える”と達也は言ったのだ。“もう、しない”とは言わなかった。
ふたりきりの病室で、昨日までは頻繁に行っていた淫らな戯れの、回数を控える。
過激さを増して、危険な領域にまで踏みこんでいた行為の、程度を控える。
そういう心づもりであったことを、実践によって佐知子に知らせた。
午前中に、もう一度だけ、達也は佐知子の腕をとって引き寄せた。
無抵抗に、というよりは、ほとんど自分から倒れかかるように達也の腕の中におさまった佐知子にキスして、身体に手を這わせた。
胸を、朝よりは強く長く揉みしだき、腰から尻を撫でまわした。
過剰なほどの反応を佐知子は示して、必死の勢いで達也の舌に吸いつき、熱い身体を押しつけた。嬉しそうに撫でられる大きな臀を揺らした。
その熱烈さには、なんとか達也を誘いこもうとする意図が見え透いていたが。
しかし、達也の手は、佐知子の着衣を乱すこともなく、核心部分に近づくこともせずに、疼く肉体の表面を撫でただけで離れた。
哀切なうめきを洩らして、やるまいと引き止める唇もふりほどかれて。
そして達也は、笑って言うのだった。
『これくらいは、いいよね』
まだ、しっかと達也の首に抱きついて、悲痛な眼で見つめる佐知子の表情には“これくらい”で終わられることこそ辛いのだ、という心がありありと映っていた。
『……達也く…ん…』
淫情に潤んだ声で名を呼ぶことで、察してくれと訴えた。佐知子には精一杯のアピール。
しかし達也は、首に巻きついた佐知子の腕を(そこにこもった抵抗の力にも気づかぬ素振りで)
優しく外すと、体を離してしまった。
佐知子には、いや増した肉体の苦しみだけが残されたのだった……。
そんな残酷な振る舞いの後は、すぐに達也は平素の態度に戻った。
ベッドに身を起こした姿勢で、傍らの佐知子にあれこれと会話をしかけることで、まったりとした時間を潰すという、いつも通りの過ごしかた。
しかし。当然ながら、対する佐知子のほうは、平常な状態ではいられなかった。
……この部屋で達也と過ごすようになって以来、佐知子が“平常な状態”でいられたことのほうが、稀であるとも言えるが。
定位置である椅子に座って、表面上は達也との会話につきあいながら、佐知子は一向に落ち着かぬ気ぶりをあらわにしていた。
すぐに、うわの空になり、沈思に入りこむ。
しきりに、椅子にすえた臀の位置を直した。
切ない色をたたえた眼で、ジッと達也を見つめた。
時折、なにか言いたげに唇が動いて。逡巡の末に、ため息だけを洩らすということを繰り返した。
何度か、些細な理由をつけては立ち上がって、ベッドへと近づいた。
急に、シーツを取りかえると言い出したのも、そのひとつだった。
その作業をする間、佐知子の体には滑稽なほどの緊張が滲んでいた。
いつものように、達也を寝かせたまま、シーツを替える作業に、やけに時間をかけて。
そして、これは無意識のことだったろうが。屈みこむときの腰つきには、微かにだが明らかなシナを作っていた。
不器用で迂遠な、しかし佐知子なりには懸命な誘いかけ。
そうと気づいたから、達也はなにも手だしをしなかった。内心の嘲笑を穏やかな笑みに変えて、佐知子を見守ってやった。
たっぷりと時間をかけて。それ以上どうにも引き伸ばせないとなって。
佐知子は、失望に顔を暗くして、外したシーツを手にベッドから離れた。
……このように、佐知子には、もう自分がどれほど、その内心の焦燥や煩悶をあからさまに態度にあらわしてしまっているか、顧る余裕もなくなっていた。
そして、その変調が、時間が経つほどに強まっていることも、明らかと見えた。
残酷な愉悦をかみしめながら、なにくわぬ顔で達也は観察を続けた。
ひとつ、達也の注意を引いたのは、佐知子が時おり、白衣の腰のポケットを気にするようすを見せることだった。手で押さえるようにして、ジッと視線をそこに向ける。
そっと達也の顔をうかがい、また手元に視線を戻す。
なんだ?と達也が怪しんだのはそうする時の佐知子が特に緊張の気配を強めるからだった。
真剣な表情で考えこんで。意を決したふうに、ポケットの中に指を差しこんで。
そこで迷って。結局、ふんぎりをつけられずに、嘆息とともに指を抜き出す。
そんなことを、達也の眼を隠れて(隠れているつもりで)、佐知子は何度も繰り返した。
佐知子の不審な行動の意味を達也が知ったのは、午後になってからのことだった。
昼食を終えて、ベッド用のテーブルを片そうとした佐知子を、達也は抱き寄せた。
この時も佐知子は、ことさらゆっくりと行動していたし、身ごなしはスキだらけだったから(そのくせ、緊張しているのだが)
後ろから腰に腕をまわして引き寄せることは雑作もなかった。
無論なんの抵抗もなかった。軽く力をかけただけで重く柔らかな肢体が崩れかかってくる。
達也は、広げた両脚の間に佐知子の大きな臀をつかせて、白衣の背に覆い被さるようにしながら、肩越しにキスを仕掛けた。
佐知子は身をよじり、細い首をねじって、それに応える。
窮屈な姿勢をものともせず、熱烈に達也の舌を吸いながら。
腰にまわっていた達也の手が、腹を撫でまわし始めると佐知子は素早く自分の手を重ねて。
重たげに張りつめた豊乳へと、掴んだ達也の手を導いた。
この積極さには、さすがに達也も驚きを感じながら。求めに応じて、掬うように柔肉を掴んだ手に、ギュッと強い力をこめる。
悦びに佐知子は喉を震わせて。しかし、これだけでは、与えられる快感に酔っているだけでは、また同じこと繰り返しになると、思い知っていたから。
さらに佐知子は、攻勢に出た。
ベッドに乗り上げた巨臀をひねって、グルリと体を反転させて、向き合うかたちになった達也に、圧し掛かるといった勢いで抱きついた。
まるで、人が変わったような積極的な動き。
それほどに佐知子は追いつめられていた。満たされぬ官能の疼きに苦悶する、長い時間に。
これ以上は耐えられない、と。必死な思いに衝かれて。
キツく達也の首ったまにしがみついて。豊満な乳房を、潰れるほど強く圧しつけて。
そして……片手が達也の背を腰のあたりまで滑りおりて。
数瞬の逡巡のあとに、前へとまわりこんで。
おずおずと、達也の股間の膨らみを掴みしめたのだった。
「……佐知子さんっ!?」
口を離した達也が瞠目する。達也からの誘導もなしに、佐知子がそんな露骨な行為に出るのは、はじめてだった。
佐知子は俯いて、達也から表情を隠すようにした。かたちのいい耳朶まで赤く染めているのは羞恥のゆえだったろうが。達也の下腹部へと伸ばした手を離しはしなかった。
「ダメだよ」腰を引きながら、狼狽を装って、達也はそう言ってみた。
佐知子の手は、離れずについていく。ギュッと指の力を強めながら。
わずかに力を得た状態だった達也の肉体が、ググッと頭をもたげていく。
それを掌に感じとって、大きく肩をあえがせると。佐知子は顔を上げた。
一瞬だけ達也に合わせた視線を、すぐに横へと逸らしながら、
「た、達也くん、辛いでしょう?」微かに上擦る声で、口早にそう言った。
「まあ……そりゃあ、ね」
とりあえず、達也は調子を合わせた。内心に、“おいおい”と呆れた思いを呟きながら。
「でも、仕方ないよ。我慢する」
「………………」
昨日からお定まりとなった、その返答を、佐知子も当然予期していたはずだが。
さて、どうでるか? と、達也は待った。
二日に渡る焦らしに耐えかねて、俄然大胆な動きに打って出た佐知子だが。
どこまでハラをくくったものかと。
「……ホントに、すごく欲望が強くなっちゃってるって感じるんだ、自分で。だから……手でしてもらったとしても、絶対、途中で抑えがきかなくなる気がするから」
胸の中で、なにか激しく葛藤しているようすの佐知子へと。
思いやるふりで、さらに追いつめる言葉をかけながら。
「大丈夫だよ。我慢できるから。そんな、気を使わないで」
そう言って、膨らみを掴んだ佐知子の手を、そっと外した。
これで、この戯れは終わり、という雰囲気を作って。
それが、佐知子にためらいを振り払わせた。
「あ、あのっ…」引き止めようとする気ぶりを、やはり上擦った声にあらわして。
片手が、例のポケットに差しこまれて、なにかを掴む動きを見せる。
なに? と物問いたげな表情を浮かべて、佐知子の思いつめた顔を見返す達也だったが。
視界のすみには、ちゃんと佐知子の手の行動を捉えて。
(まさか、“ビスケットがひとつ”ってわけでもないだろうしな)
なにが出るかな…と、興味深く待っていた。
「……あ……あの、ね…」佐知子の声は急速に勢いを失って。気弱く眼が泳ぐ。
それでも佐知子は、大きくひとつ息をつくと、
「……こ、これ、を…」
ギクシャクとした動きで、ポケットから抜き出した手を、達也へと差し出した。
「……これ?」達也は怪訝そうに、佐知子の顔と、その手に握られた物を見比べた。
佐知子が白衣のポケットから取り出したのは、薄いパス・ケースだった。
「………………」佐知子は朱を昇らせた細首をねじって、顔を横に向けている。
とにかくも達也は、ケースを受け取ろうとした。
一瞬、佐知子の指に力がこもって。まだ迷う色を見せながら、手離した。
達也は、受け取ったパス・ケースを掲げて、よく眺めてみる。
赤い合皮の、薄手でシンプルな。なんの変哲もない品物だった。
二つ折りを開いてみる。
内側の透明なプラスチックの中に差し込まれているモノを見つけて、軽く眼を見開いた。
ピンク色の小さな正方形。その中に浮き上がった丸い輪。
思わず達也は、口笛を鳴らすかたちに唇をすぼめてしまった。
(ポケットの中には……コンドームがひとつ、か)
−13−
「……達也くんが」
真っ赤に染まった顔を横に向けたまま、佐知子は震える声を吐き出す。
「達也くん、が、辛いなら……い、いいの…よ…」
弁解の響きを帯びた言葉が尻すぼみになりながらも、佐知子は言いとげた。
「………………」達也は無言で見つめた。
視線の先で、佐知子は、身も世もない羞恥に灼かれている風情だ。
実際、達也も意表をつかれたような、佐知子の大胆な行動と科白だった。
昨日来の生殺しは、達也の予想以上の効果を佐知子に齎したようだ。
それほど、達也の与える絶頂の味に病みつきになっていたということでもある。
そして、昇華されない官能の昂ぶりに責め苛まれる中で、渇望はより大きく育ってしまったのだ。
その挙句の行動が……コンドーム持参とは、ある意味、いかにも佐知子らしいというか。
どうせ、“万一のときのために”とか自分に言いわけしたのだろうが。
結果としては、それを持ち出すことで、達也に“抱いてくれ”と願ったわけだ。
言葉面はどうあれ、内実はそういうことである。佐知子の追いつめられた心の真実は見え透いていた。
佐知子にすれば、せめて許諾を与えるというかたちをとることが、最後の矜持だったのだろうが。
(……甘い)それでは、達也を満足させることは出来なかった。
(まあ、ウブな佐知子ちゃんにしちゃあ、ガンバったってのは認めるが。この期におよんで、まだカッコつけようってのが、ダメ)
到底、合格点はやれないと無慈悲な判定を下した達也は、
「……ありがとう、佐知子さん」いかにも感激したように、そう言ったあとで、
「でも、無理しないで」とても優しい声で、残酷な言葉をかける。
「……え…?」
間の抜けた声を洩らして、佐知子が横に逸らしていた顔を達也に向けた。
「僕のことを気づかってくれるのは、本当に嬉しいけど。でも無理はしないでよ。いまは、佐知子さんの、その気持ちだけで充分だから」
そう言って微笑む達也を、佐知子は呆然と見つめた。
まさか……拒まれるとは、思ってもいなかった。
「僕なら大丈夫だから」
「で、でも、達也くん」
請け負う達也の穏やかさは、佐知子が予測し期待していた反応とは、かけ離れたもので。
慌てて、取りすがるような声をかけても、
「佐知子さんの優しさにつけこむようなことは、イヤなんだ」
柔らかな口調で、しかしキッパリと言い切られてしまえば、それまでだった。
“達也が辛いなら”などと、体裁を取り繕ったばかりに。
達也はパス・ケースの中からコンドームを抜き取ると、
「これは、もらっておくよ。佐知子さんの心づかいの証として」
「………………」
そんなふうに言われても。頭から冷水をかけられたような気分のいまの佐知子には、
達也の手にする薄い四角形が、自分の姑息な手口の証拠品にしか見えない。
「……約束のしるし、でもいいけどね。“その時”まで、預かっておくってことで」
「………………」呆けたような表情のまま、佐知子は達也に眼を合わせた。
瞳が揺れる。どうして?……と。これ以上、どうすればいいのか?……と。
しかし、無言の、悲痛な問いかけにも、達也は微笑をかえすだけ。
佐知子は、自分自身で、それを見つけなければならない。
……その後、佐知子は洗面所へ逃げこんだ。
居たたまれなかったのだろうし、いろいろ後始末の必要があったのだろう。
ショックを引き摺った虚ろな表情で、心許ない足取りで、
備えつけの個室へと入っていった。
(ま、もう一度、よーく考えなさい。どこがいけなかったのか)
冷笑して、見送って。しばらくは、出てきそうにないなと見当をつけて。
達也は、例のコンドームを取り出して眺めた。
ごく普通の、いかにも廉価品。
無論、達也は、こんな無粋なものを使う気はない。
“その時まで預かっておく”と佐知子には言った。“着ける”とは、言ってないんだから、嘘にはならない。
(だいたい、この達也さまに、ゴムをつけろなんてーのが)
間違ってる、と倣岸に呟いて。
しかし、これはこれで、なかなか愉しい一幕だったな、とも思う。
こんなものを、制服のポッケに忍ばせて、職場である病室に持ちこんで。
ずっと、その存在を意識して。何度となく、取り出す機会をうかがっていた。
その時の、佐知子の真剣な形相を思い出して、達也は笑った。
ようやく、それを達也へと差し出したときの、羞恥の表情と懸命な取り繕いぶり。
しかし、あっさりと撥ねかえされて、茫然とする佐知子を思いうかべて、笑った。
とにかく。
長い逡巡と葛藤の末に決行された佐知子の大作戦は、なんら得るところのないまま潰えてしまったわけである。
(さて……どうするかね、佐知子ママは)
達也は、佐知子が消えたドアを見やった。
(難しいことでもないだろうに。どうすりゃいいかなんて)
しごく簡単なことである。素直になればいいだけなんだから。
今度こそ、佐知子もそれを理解したのではないか。身にしみて。
(いよいよ、かな)ゲームの終わりを、達也は予感した。
……静寂の中で、午後の時間が流れていく。
会話はなかった。沈黙を続ける佐知子に、達也もあえて話しかけようとはせず、本を読んでいる。勿論、読書にいそしむポーズで、佐知子をうかがっているわけだが。
長い時間を洗面室にこもって。出てきた時に、佐知子の眼は赤かった。
泣いたと、はっきりわかる眼で、佐知子は達也を見ている。
決まった場所、いつもの椅子に座って、達也の横顔を見ていた。
見つめる、というには、その眼色も表情もボンヤリとしていたけれども、視線が達也から外されることはなかった。
午前中のように、そわそわと落ち着かぬ素振りを見せるでもなく。
なにか言いたげに、唇がわななくということもなかった。
ただ佐知子は、力なく肩を落として座りこんで、達也を見ていた。
そんなふうに、無為に時間が過ぎて。
達也にすれば、アテが外れたというところである。
佐知子から伝わってくるのは、本当にもう、なにをどうすればいいのか解らない、といった放心の気配だった。
(……しょうがねえなあ)
どうやら、佐知子にとって先ほどの行動は、こちらが思う以上に重大なものであり、それを拒まれたショックも大きかったのだと理解する。
(それにしたって、ガッツが足りねえや、ガッツが)
とにかく、達也としては、今日のうちに決着をつけるつもりになっていたわけで。
予定が狂うのは、はなはだ面白くないのだった。
(とりあえず、少し、つついてみっか)
まったく世話がやける…と内心にひとりごちて、行動に出る。
ふぁ……と、生あくびを噛み殺して、達也は読んでいた本を閉じた。
「……なんか、眠くなってきた」目をショボつかせて、呟く。
「少し、寝るね」佐知子にそう言って、ベッドを倒した。
「佐知子さんが帰るときには、起こしてね」
「……えっ…?」ここで、ようやく佐知子は反応をかえして。
達也の言葉の意味を理解して、慌てて立ち上がった。
佐知子の勤務時間は、残り二時間ほど。
その時間を、達也は午睡に費やすというのだ。
眠って、そして、勤務の終わった佐知子に、さよなら、また明日と挨拶して。
それで、佐知子はこの部屋をあとにして。達也から離れて。
帰宅する。
そして……昨日と同じ夜を過ごすことになる……。
「………………」 フラリと、佐知子は足を踏みだした。
ベッドを平らかにして、枕を直して、すっかり寝る体勢を作っている達也の傍らに立つ。
「……なに? 佐知子さん」
「………………」佐知子は答えずに、無言で達也を見下ろした。
頬を強張らせ、唇を引き結んで。達也を睨んでいた。
達也は静かな顔で、佐知子を見上げる。
そんな奇妙な対峙が、数瞬あって。
不意に、佐知子の怒りの表情が崩れる。
泣くように顔を歪めて、震える唇から声がこぼれた。
「……達也くんは……ひどい……」
「どうしてさ?」落ち着いた声で、達也が訊く、と。
佐知子は、身体を投げるようにして、達也の上に圧し掛かった。
ベッドを重く軋ませながら、達也に飛びかかって。
両手でしがみついて、その柔らかな身体を押しつける。
「……ひどい……ひどい……」達也の胸に顔を埋めて、切れぎれにそう繰り返した。
「だから、それじゃ、わからないよ」
「うそっ、嘘よっ」
佐知子の重みを受け止めて、優しく宥めるように達也が言うのにも、
激しく頭をふって、子供じみた否定を返して。
顔を上げた佐知子は、涙の滲んだ眼で達也を見やって、
「……わかってるのでしょう?わかってるくせに…」
恨みを吐いた唇が、そのまま達也の口を求めて。
両の腕で達也の首に抱きついて、佐知子は自ら仕掛けたハードなキスに溺れこんだ。
タップリと達也の口舌を味わい、唾を啜り上げて。
糸引きながら離れた紅唇で、荒い息をつく。
「……それでも」やはり呼吸を軽く弾ませながら、それでも達也の声は冷静で、
「ちゃんと、言ってもらわないとね」
「…………ひどい…わ……」もう一度だけ、そう呟いて。
しかし、佐知子のけぶる瞳には、諾いの色があった。
ギュッと、達也の首を抱く腕に力をこめて。
頬を擦りよせることで、達也の眼から顔を隠して。
そして、佐知子は囁いた。
「………して……」
「なにを? なにをしてほしいのさ?」
「……アァ…」
声音だけは甘く、意地悪く聞き返す達也に、佐知子は切ない嘆声を洩らして、
また頭を横にふった。
死ぬような思いで、その言葉を口にしたのに、まだ赦してくれないのか、と。
しかし、ついに心の真実を吐き出してしまったことで、血の滾りと肉の昂ぶりは一段高い次元へと押し上げられてしまっていたから。
「……して……抱いて……」
せくり上がる情感に震える声で、佐知子は、はるか年下の若者に乞い願った。
熱い乳房を達也の胸に押しつけ、太腿を達也の脚に擦りよせて、早くと誘う。
早く、狂熱の中にすべてを押し流してくれと願ったが。
「抱く?セックスするってこと?」達也は、そうしてはくれない。
聞くまでもないことを聞いて、佐知子の羞恥を煽って。そのくせ、佐知子を抱いた手は優しく背や腰を撫でて、ゾクゾクとした快美を走らせるのだ。
「それって……また、僕のためなのかな?」
“また”という達也の言葉に、佐知子の肩がこわばる。
おずおずと顔を上げて、不安を宿した眼で達也を見た。
「……ちがう…わ……」小さく顔を揺らしながら、怯えるように言った。
昼間の自分の失策を持ち出されたことで、このあとの展開までが昼と同じ轍を
踏むのではないかと、怖れたのだった。
「…ちがうの……私が……」その恐怖が、佐知子に必死の気概を掻きたてた。
ああ……何故、あんな誤魔化しをしてしまったのだろうか?
あんな欺瞞、“達也のため”などと……。
「私、が…してほしいの……抱いてほしいのっ」そう、求めていたのは自分なのだ。
心の奥深くの真実を曝して。
佐知子の胸を満たしたのは解放の喜びだった。
「私が、してほしいの、達也くんに、抱いてほしいって、私が」
堰を切ったように感情が溢れ出す。佐知子はうわごとのように熱っぽい言葉を繰り返した。
「……でも、ここは病室だよ?」
なおも無粋な問いを達也はかけたが。しかし、その声色には、佐知子へと距離を詰める機微がうかがえて。
その証左のように、佐知子の腰にまわしていた手が滑って、張りつめた豊臀を撫でまわした。ネチっこく、はっきりと淫らな蠢きで。
「いいの? 病室でそんなこと?」
「……か…かまわない…わ…」
甘く鼻を鳴らして、愛撫される臀をくねらせながら、佐知子が答える。
いまさら、ここが病室であることへの拘泥など、ほとんどなかった。
ここは、この隔離された部屋は、自分と達也ふたりだけの場所。
いまの佐知子にとって重要なのは、その事実だけだった。
「いいの、ここでして……私を、達也くんのものにしてしまって」
昂ぶり続ける心のままに、赤裸々な言葉が勝手に口から迸る。
それによって、血肉がまた滾りを強めていく。
「本当に、いいんだね?」達也が訊いた。これが最後、という響きをこめて。
即座に佐知子はうなずく。何度も。達也のその気を逃すまいとするかのように。
「……わかった」
おもむろに達也は、佐知子の柔らかな身体を抱いた腕に力をこめて、自分の上に乗せ上げるようにして。そして、両手で佐知子の双臀を掴みしめた。
ギューッと、強烈な把握で、タップリとした臀肉に指を食いこませる。
「アアァッ」
歓悦の悲鳴を上げて、佐知子は達也の体の上で背を反らせる。
「僕も、もう我慢しない。いま、ここで、佐知子さんを僕のものにする」
そう宣言して。達也はさらに、両手に掴んだ熟れ肉を攻める。
ギリリと十指の爪をくいこませて、揉みたくり、こねくりまわした。
「アッ、あぁ、んあっ」
「この大きな尻も。デカいオッパイも。それから、オマ○コも。佐知子さんのエッチな身体、全部、僕のものにしちゃうからね」
「アッ、うっ、あ、達也、くぅん…」
身悶える佐知子を見つめる眼には、猛禽のような獰猛で冷酷な光。
はじめて本当の牙を剥いたような達也の烈しさが、佐知子の背筋を痺れさせた。
卑猥な言葉も、臀肉を痛めつけるような荒々しい愛撫も、達也がついに自制を解いて、激情をあらわにしたゆえだと思えば、どよめくような歓喜だけを佐知子に掻きたてる。
そして。太腿の付け根のあたりに感じる、硬い隆起。
今度こそ、自分の肉体を蹂躙するための欲望を充填しはじめた、若い牡の凶器。
「アアァ……」目眩むような昂奮が、総身の肉を震わせる。
「し、してっ、私の身体、全部、達也くんのものにしてぇっ」
いま、この瞬間の、ただひとつの願いを叫んで。
佐知子は、達也の唇にふるいついた。
ピッタリと唇を合わせて、舌を絡めあい、唾液を交換しながら。
重なったふたりの体が横へと転がる。
達也は、熱く生臭い息を吐く佐知子の唇から口を離すと、体を起こした。
ギブスの左足が、わずかに動きを不自由なものにするが。
それを気にかけるべき佐知子は、達也の怪我のことなど念頭から消し去って。
豊満な肢体をしどけなく横たえて、荒いあえぎをつきながら、
淫情に潤みきった眼で、若い情人を見上げていた。
達也の手が、大きく上下する佐知子の盛り上がった胸へと伸びた。
白衣の襟を掴んで、一気に引きはだける。
「アッ…」白衣のボタンが千切れ飛び、佐知子が竦んだ声を上げた。
露わになった胸肌と、白い清楚なブラジャーに包まれた大ぶりの肉房を達也は眺め下ろした。手に入れた獲物を吟味する眼だ。
……佐知子から、交接を乞い願う言葉を引き出したことで、達也のゲームは終わった。
同級生の美しい母親を篭絡するというゲームは終わって。
あとは、この艶麗な年増美女を、好きなように弄ぶだけである。
まずは、ゲームの締めくくりとして、圧倒的な勝利の祝いとして、その爛熟の肉体を、思うさまに貪り犯しつくす。
この後も、まだ佐知子に対する芝居をやめる気はない。この哀れで愚かな中年の未亡人に狂い咲きの夢を見させたまま、遊んでやるつもりだったが。
ま、かまわないだろう、と。達也はタガを緩めることを自分に許した。
もう、この女は、すっかり俺にハマってるし。一発ブチこんでやれば、決定的だし。
その後は、ズブズブ、ハメまくってやればいいだけのこと、と。
倣岸な自信は揺るぎのないものだが。その思考が急にぞんざいになっていたのはさすがに鬱積した欲望が荒れ狂いはじめていたせいでもあったし。
もう奸智をしぼる必要もないわけだった。
ゲームは終わって。あとは野放図に気ままに、手に入れた玩具で遊ぶだけだ。
飽きるまで。
……しかし、そんな緩んだ思考をよぎらせて、欲望への制御を解きながらも。
佐知子の純白のブラジャーに指をかけて、白衣同様に引き剥ぐように外した、達也の荒っぽさは、性急な昂ぶりからではなくて、
(これくらいのほうが、喜ぶだろ)
という冷笑的な洞察によるのだから。やっぱり異常である。
佐知子は、また小さく悲鳴を上げて。しかし、達也を見上げる濡れた瞳には、その荒々しさを歓迎するような、陶酔の色が浮かんでいた。
つまり、まったく達也の予測通りの反応だった。
達也らしからなぬ乱暴さも、自分を求める想いの強さのあらわれだと、幾多の障壁を乗り越えて、ついに結ばれることへの思い入れの表現だと、頭の天辺まで浸りこんだ幸せな夢の中で、勝手に納得して、歓喜しているらしかった。
裸にされた胸を隠そうなどとは考えもせず、すでにジットリ汗ばんだ胸肌と、巨大なふたつの肉果を、達也の眼に晒している。双丘の頂は当然のように尖り立っていた。
達也は手を伸ばして、巨きな乳房を握りしめた。この熟れきった豊乳は、達也のものだ。
佐知子自身がそう言ったのだ。
手に余る巨大な肉塊に、広げた指を食いこませて。達也はギューッとキツく握りしめた。
「ああぁ……達也くん、そんなにしたらぁ……いっ、アアッ」
苦痛に眉を寄せる佐知子だったが、嬲られる乳を逃がそうとはしなかった。
その声も、甘く鼻から抜けている。
「僕のものなんだろ? この大きくて柔らかいオッパイは」
なおもギュッギュッと強い力を送って、佐知子を啼かせながら、達也が言った。
「だったら、どんなにしても、いいはずだよ」
「……アアァ…」上気した佐知子の面に、酔いが色濃くなった。
“達也のもの”という表現が、ことのほか佐知子には効いた。
“達也のもの”である自分にこの上ない幸福を感じて、それを完全なものとしてもらうことを、待ち焦がれている。
(罪な男だぜ、俺も)驕った述懐は、まあ、まったく正しくはあるわけだが。
いうまでもなく、達也と佐知子では“自分のものにする(相手のものになる)”という言葉で表現される状況に、大きな違いがあった。
それを、佐知子が知るのは、もう少し先のこと。
いまの佐知子は、ただ、達也との関係が決定的なものとなる瞬間、この奇妙な“恋”が成就するときへの期待に、熱い身体を震わせながら、玩弄の手を甘受するのだった。
淫情に蕩けた眼は、うっとりと達也を見つめ、荒っぽい揉みたてをうけて、かたちを歪める己が乳房を見やった。
すすり泣きに似た低い啼泣が、喉を震わせ続けている。
立ち昇る汗と女の体臭が、強く濃くなっている。
衣擦れの音をたてながら、皺だらけのシーツの上を臀がくねる。
両の太腿を擦り合わせる動きで、白衣の裾はたくし上がっている。
「……アァ……達也くん……」達也の手の蠢きは、乱暴な中にも狡猾な巧緻さを潜めて。
焦らされ続けた肉体に、たまらない愉悦を与えてくる。
肉が溶けるような乳房の快感を、しかし佐知子は怖れた。
このままでは、敏感な乳肉への愛撫だけで、気をやってしまいそうで。
いまの佐知子が求めるのは、そんな軽い悦楽ではなかったから。
逆手にシーツを握りしめて、快感に耐えていた手が動く。
はっきりとした意志に従って、達也の股間へと。
「……あぁ……ハァ……」
硬い隆起を確認して、安堵の息が洩れて、すぐに恍惚たる嘆息に変わった。
達也の欲望は、まだ完全に漲ってはいない。それは、佐知子にはわかったけれど。
それでも、すでにして、甘い屈従の心を喚起せずにはおかないような量感を掌に伝えてくるのだった。
(……はやく……これで……)
いやます昂ぶりは、そのまま達也を握りしめた手の動きに表れる。
この数日間に達也によって仕込まれた淫猥な技巧を、手指に演じさせれば、牡肉はグッと硬さと膨張を増した。その反応が嬉しくて、汗ばむ手に感じる熱さと逞しさが縋りつきたいほどに愛おしくて。
追いつめられた官能が、佐知子を、さらに大胆な行動に出させる。
やはり、シーツを掴んでいた、もう一方の手を滑らせる。
白いストッキングの太腿の半ばまで捲くり上がった、白衣の裾へと。
ギュッと薄い布地を掴んだ手が、一瞬だけ躊躇しても。
思い止まるには、佐知子の心も身体も熱くなりすぎていた。
「……達也…くん……」
声が震え、掠れたのも、羞恥よりは灼けつくような昂奮のせいであるようだった。
手がそろそろと動いた。腰のほうへと。
ストッキングに汗を滲ませた太腿が、その息苦しいほどの肉づきのすべてを露にする。
その下の、豊かな腰を包んだ瀟洒なショーツも姿をあらわした。
露出、というには、まだ二枚もの着衣を残してはいたけれど。
それでも、自らの手で白衣を捲り上げて、ムッチリとした下肢を
さらして見せる佐知子の姿態は、息をのむような凄艶さが漂った。
達也も、マジマジと凝視する。
「……ああぁ……」
視線を感じて、佐知子が恥じいるような声を洩らす。ブルッと太腿が戦慄いて、熟れ肉が波打った。
それでも、白衣の裾を捉えた手は、腰の位置に留まったままだった。
「佐知子さん、いやらしいね」達也が、からかうように言った。
「自分で、めくっちゃって。すごく、いやらしい格好だよ」
「……いやぁ…」泣くような声を洩らして、佐知子は首を左右にうちふったが。
「早く、そこに触ってほしいってことだよね?」
達也に訊かれると、こくりと小さなうなずきをかえした。
「今日の佐知子さんは、素直だね」
その御褒美だとでもいうように、達也にしてはアッサリと佐知子の求めに応じて、そこへと手を伸ばした。
「ヒッ…アッ…」スッと内股を撫でられて、佐知子は大袈裟なほどの感応を示して
ビクビクと腰を戦慄かせた。裸の胸が揺れる。
「これでいいの? ストッキングとパンティの上から触るだけで、いいのかな」
くすぐるように指先を這わせながら、達也が訊いた。
「ぬ、脱がせて」また素直に佐知子は求めて、自然に両肢の開きが大きくなった。
「そうだね。脱がないと、僕のを佐知子さんの中に入れられないもんね」
「……アアァ…」この先の行為を口にして、佐知子の情感を煽りたてて。
達也は、太腿の肌に貼りついたストッキングに爪をかけて、繊維に裂け目を作ると、指先を突っ込んで、一気に引き裂いた。
「アアッ」佐知子が悲鳴を上げる。
下肢を覆った白いパンストに大きな穴が開いて、佐知子の蒼白いような内腿の肌が露わになった。
「フフ…」その煽情的な光景を愉しみながら、さらに達也は指を滑らせる。
プツプツと微かな音をさせながら、繊維の裂け目が広がって、深く切れこんだ腿の付け根が晒され、白いショーツに覆われた恥丘が姿を見せる。
「ここは、もっと広げないとね」
そう言って、達也は両手を使って、パンストの股座の穴を広げた。
「あぁ、達也くん、こんな…」
かたちばかりの抗議を口にして、佐知子は達也の乱暴な行為から逃れようとはしなかった。
「フフ……、すごく色っぽいよ、佐知子さん」仕上がりを検分して達也が満足そうに呟く。
佐知子の片肢は、膝から上がほとんど露出して。汗ばんだ雪白の肌を覗かせる破れ目は股座にまで繋がって。純白のショーツのプックリとした盛り上がりまで露わになっていた。
「すごく、いやらしい。そそられちゃうな」
「……アァ……こんな…恥ずかしい……」
チラリと、自分の無惨な姿を一瞥して、佐知子が恥辱の声を洩らす。
腹まで白衣をはだけて、下肢には引き裂かれたストッキングを纏いつかせた己の姿が、裸にされるよりも、恥ずかしいように思える。
しかし、その無惨さが奇妙に胸をどよめかせもするのだった。
なによりも、握りしめた手の中で、達也の肉体がグッと力を増していくことが佐知子の脳髄を痺れさせた。
「アヒッ、アアッ」
達也の指が、ショーツの盛り上がりを撫でて、佐知子に甲高い声を上げさせた。
白い下着は、派手さのないシンプルなデザインのものだったが、それなりに上質そうな品である。明らかに達也の目にふれることを意識しての身拵えは、ジットリと汗に湿って、肌にはりついていた。
布地越しに濃密な叢の感触をなぞったあとに、達也の指は中心部へとすべっていった。
「グッショリだよ。佐知子さん」
「ああ……いやぁ…」
達也の言うとおり、ショーツの股布の部分は、色が変わるほどに濡れそぼっていた。
軽く押しただけで、達也の指先は、沁み出した淫汁に濡れた。
立ち昇る“牝”の臭気が強くなる。
「すごいな」
感心したように呟いた達也は、ショーツの上縁を掴むと、グイと強く引き上げた。
股布が食いこんで、恥丘の肥沃な肉づきを強調し、秘苑のかたちまでが濡れた薄布ごしにクッキリと浮かび上がる。
「あ、やっ、達也くんっ…」
「フフ、佐知子さんのかたちが、ハッキリわかるよ」
「いやぁっ」
言われなくとも、繊細な部位に感じる圧迫で、佐知子にもそれはわかっていた。
思わず、白衣の裾を押さえていた手で達也の手を掴む。
淫らな徴候で汚してしまった下着を見られ、その上から嬲られるのは、直接肌に触れられるより、辛く恥ずかしかった。
スンナリと達也は佐知子の制止に従って、ショーツを引っ張っていた手を離したが。
今度は、揃えた二本の指で、ピッチリと貼りついた布地の上から、濡れにまみれた部分を、強く擦りたてた。
「アッ、アアッ」
「すごいな。どんどん溢れてくる」
たちまち嬌声を断続させて身悶える佐知子の股間を覗きこむようにして達也が言ったとおりに、指の嬲りを受けて噴き出した新たな蜜が、濡れジミを広げ、ジュクジュクと沁み出てくる。
それを面白がるように玩弄を続ける達也の手指の動きは、いつもより荒っぽかった。
しかし、それがいまの佐知子には、強い刺激となって愉悦を沸騰させる。
「アッアッ、達也、くんっ、アアッ」
下着の上からもハッキリとわかるほどに膨れた肉芽を、グリグリと押し揉まれて、高い声で囀りながら、縋るように達也を見つめる佐知子。
「佐知子さんが濡れやすいのは知ってたけど。今日は特別だね」
「あぁ……達也くん、だからよ、達也くんに触れられてるから、こんなに、私」
実際、達也の手に触れられるまでは、自分がこんなに濡れやすい体だとは思いもしなかった佐知子である。
むしろ、性感の薄いほうだと思いこんでいた自分の肉体。眠っていた感受性を掘りおこしたのも達也だ。こんな愉悦があることを教えてくれたのが。
それを思うたびに、佐知子の胸には達也への甘い屈従の意識と、こよない愛しさが溢れて。
「達也くんだから……達也くんだけよ」繰り返す声と見つめる眼色に、切ない熱をこめる。
「うれしいよ」
簡単に達也は答えた。口元に浮かんだ笑みも、冷ややかとさえいえる。
しかし、そんな倣岸で不敵な表情が、確かに、ひどく魅力的ではあるのだった。
普段の、穏やかで爽やかな顔以上に、見るものを魅了し呪縛する力に満ちていて。
すでに、その魔力に絡めとられている佐知子は、潤んだ眼でその冷たく美しい笑みに見惚れて。胸を熱くし、股座を濡らす。
「……ねぇ…」甘く、媚びた声で、呼んだ。
「…脱がせて……達也くん…」
達也の手で、熱く濡れた女を包む薄布を奪ってくれと訴える自分の破廉恥さを自覚することも、いまの佐知子には昂ぶりを強めるだけだった。
「脱いで……そして、僕のをここに入れてほしい?」
“ここ”をグショ濡れのショーツの上から、指で押しこみながら、達也が訊くのにも。
佐知子は、素直に、淫情に火照った顔をうなずかせる。
「でも、佐知子さん、僕のが怖いんじゃなかったの? 大丈夫?」
「……怖い、わ……」念を押す達也に、これも正直に心情を吐露して。
佐知子は、握りしめた硬直へと視線を向けた。
どれほど昂ぶっていても、ケタ外れな巨根への恐怖は残る。
本当に受け入れられるのだろうか? と、年甲斐もない危惧を抱かずにはいられない。
しかし、恐れは、そのまま未知の快楽への期待でもあった。
達也は言っていた。それは、ここまで教えられた愉悦より、ずっと深く強いものだと……。
「……怖いけど……でも…」
「それでも、僕とひとつになりたい?」
「そうよ、そうなの、だから」 渇望を、達也が、ていのいい言葉にする。
それに飛びついた佐知子は、いよいよせくり上がる激情に切迫した叫びを上げた。
「わかった」達也は、佐知子の背の下に腕を差しこんで、優しく抱き起こした。
軽く唇を合わせるだけのキスを与えて。
「……脱がせてくれる?」佐知子の耳に、そう囁いた。
小さくうなずいて、固い唾をのみ下した佐知子は、達也のパジャマの腰を両手で掴む。
両脚を投げ出して後ろ手をついた達也が、尻を浮かせるのに合わせて、下着ごと、膝まで引き下げた。
「……あぁ…」現れるのは、引き締まった太腿と。牡の象徴。
何度見ても、そのたびに佐知子の肝をひしがずには置かない、達也の男性だが。
巨大な鎌首をもたげたその姿が、いまはひときわ獰猛な迫力を見せつけるように佐知子には感じられた。
「佐知子さんも脱いで」達也に命じられて、佐知子はほんの少しだけ躊躇を見せた。
自分の手で……ということに、いまさらな羞恥を感じて。
しかし、逡巡は長い時間でもなく、佐知子は自分の腰へと手を伸ばす。
脱がなければ、達也を迎えいれることは出来ないのだから。
ベッドの上に膝立ちになって、ストッキングの残骸を捲くり下ろす。
交互に膝を浮かせて、最後には引き剥ぐように脱ぎ捨てた。
生脚を晒して、もう一度、皺のよった白衣の裾に手を差しこんで。
さすがに、頬に新たな血を昇らせながらも、一息に引き下ろした。
白い薄布が小さく縮まりながら、膝まで滑り下りて。
覆うものがなくなった股間は、この時はまだ、白衣の中に隠れていたのだが。
膝を抜くのに、動きを抑制する意識が強すぎて、バランスを崩してしまう。
前のめりに倒れかかって、慌てて片手をついたが。
四つん這いで、尻を後ろに突き出したかたちになって。たくし上がった白衣の裾から尻タブが覗いてしまう。
すかさず、達也の手が伸びて、白衣を腰まで捲くり上げた。
「あっ、イヤッ」
佐知子の羞恥の声にはお構いなしに。しらじらと曝け出された巨きな熟れ臀を掴み、撫でまわして。さらには深い切れこみの下の暗い秘裂へと指を挿しこんだ。
「ヒィアッ、ダ、ダメェッ」
期せずしてとった姿勢と、尻を剥かれる恥ずかしさに、佐知子が悲鳴を上げるが。
膝に絡んだ下着と、今日はじめて達也の指を迎えいれた女肉から伝わる鮮烈な刺激に抗いの動きを封じられてしまう。
「アッ、や、ああぁん」
達也が挿しこんだ指を抽送すれば、思わず噛み締めた愉悦の甘さに、腰がくねり、裸の臀が揺れ、重たげに垂れ下がった豊乳が揺れる。
だから、達也がアッサリと指を引き抜いたときには、佐知子は思わず惜しむような声を洩らして、ふり仰いだ。
達也は、佐知子の中から引き抜いた指、ベットリと蜜にまみれた指を眺めて、
「佐知子さんの準備は出来てるみたいだね」そんな言葉でまた佐知子を恥じ入らせてから、
「僕も、もう我慢できない。早く、佐知子さんとひとつになりたい」
熱っぽく、逸る心を見せて、そう言った。
その思いは全く同じであったから。横座りに体勢を崩し、白衣の裾を戻して、乱れた息を整えていた佐知子は、無言で小さくうなずいた。
膝に絡んだ下着を、ようやく爪先から抜きとって。素早く丸めると、先に脱いだパンストとまとめて、背後に隠すように置いた。
いよいよ、これで、本当に準備は整ったわけだが。
どうすれば……と、惑うようすで、佐知子は、おずおずと達也を見やった。
隆々と巨大な肉根をおっ立たせて、脚を伸ばして座った達也は、佐知子へと片手を差し伸べた。こちらへ、と招くふうに。
達也の意図、どのようなかたちで交わろうとしているのかを悟って、佐知子は、えっ? と硬直してしまう。
つまり、このまま跨ってこいというのだ。
それは佐知子にはまったく意想外なことだった。
そんな体位など経験がない。というか、佐知子は正上位以外での交わりをしたことがない。
セックスにも多様なスタイルがあることくらいは、さすがに知っていたが、自分には無関係なことと考えていた。
だから、達也との交わりも、当然自分にとっての唯一のかたちを想像していたのだった。
抱き合って、見つめあって、達也の重みを感じながら。
愛を囁きあいながら、優しく睦みあう。そんな行為を思い描いていたのだ。
「……た、達也くん…?」困惑のままに、佐知子はうかがうように呼んだ。
達也は、少し苦笑してみせて、
「脚が、こうだからね。これくらいしか…」と、ギブスをはめた左足を指差した。
「…あっ」佐知子は達也の言わんとするところを理解する。
「こんなのは、イヤかな?」
「えっ?あ、あの…」訊かれても、答えに困ってしまう。
確かに、ギブスした足では、とるべきかたちが制限されることはわかる。
この体勢が、達也にとって一番無理のないものであることも理解できる。
しかし、だからといって、素直に達也の指示に応じられるかといえば……。
「……イヤじゃ…ない、けど……」とても出来ないと思いながらも言葉はあやふやになる。
イヤだ、と忌避を示すことが、怖かった。
「そ、そんなふうに、したことが、ないし…」
「大丈夫だよ」手を差し出したまま、達也は安心させるように言った。
「…………………」
結局、佐知子は、その手をとった。おそるおそる伸ばした手で、達也の手を掴んだ。
惑い、竦みながらも、ここで終わるという選択肢は佐知子にはなかった。
握った手を強く引かれて、尻が浮き上がる。
膝立ちになって、達也へといざり寄る。
「……さあ」達也は、佐知子の腰に手を添えて、優しく促した。
「…ど、どうすれば…?」
「立って、僕の腰を跨いで」
「……………」ゆっくりと佐知子は立ち上がる。ベッドの上で。
膝は曲がって、背を丸めた半端な立ち姿になって。
縋りつくように手を握ったままの達也を、気弱く見下ろす。
生身の脚が、やけにうそ寒く感じられた。すでに下着さえ着けていないことがいまさらに強く意識されて、佐知子は白衣の裾を押さえた。
「そのまま、僕に跨ってきて」あくまで優しい声で、達也は指示を繰り返す。
「……………」逡巡、というよりは覚悟を決めるための間があって。
そろそろと、佐知子の片足が浮く。危なっかしいバランスをとりながら、足先が横へと流れて。達也の両脚を跨いだ向こうに、着地する。
「……あぁ…」堪えきれぬ羞恥の息を、佐知子は洩らす。
脚を大きく開いて、達也の体を跨いだ、自分のあられもない姿を思って。
しかし、当然ながら、問題は、この後の行動なのだった。
「後は、わかるでしょ?」達也は、そう言った。今度は明確な指示を出さなかった。
「………………」確かに、ここまで来れば、後はどうすればいいかは、佐知子にもわかる。
このまま……腰を落としていけばいいのだ。
達也の上に。達也の股間に屹立するものの上に。
佐知子は、視線を落として、“それ”を見やった。
天を突く、といった勢いで聳え立つ、達也の男性。
佐知子の眼には、やはり巨大な肉の蛇に見えた。
凶悪に張りつめた鎌首が、佐知子を睨みすえて。
チロチロと舌を出して差し招いている、という幻視。
達也は、もう指示を出さない。
逡巡する佐知子を促すこともせず、無言で見上げている。
すなわち、佐知子には、なんの言い逃れの余地もなく。
自らの意志で。この先へと踏みこまねばならない。
……本当に、いいのか?
もう一度だけ、その自問が脳裏に響いた。
亡夫と裕樹の顔が、胸をよぎる。
……いいわけがない。こんなことが、赦されるはずがない。
そう断じて。
そして、佐知子は、ゆっくりと腰を落としていった。
もとより、赦されることだとは思っていなかったから。
己の罪も愚かさも知ったうえで、それでも選んでしまった恋であるから。
(ごめんなさい)
最後の謝罪を、心の中の裕樹に呟く。それで、愛する我が子の姿は佐知子の中から消えていった。
後には、生まれてはじめて知る激情と渇望に衝き動かされる“女”が残った。
達也に出会ったことで、佐知子は自分の中の“女”を思い出した。
この閉ざされた部屋で、達也とともにある時にだけ“ママ”でも“越野主任”でもない、生身の“女”の姿をさらけ出してきた。
そのことも、佐知子を急速に達也にノメりこませた大きな理由であっただろう。
思いもかけなかった邂逅と、激動の数日間。
蕩けるような快楽と、焼けつくような苦悶に過ごした時間のはてに。
ついに……達也と結ばれるのだ、という感慨が胸を震わせて。
そこに待つ、新たな悦楽への期待に、肉を震わせて。
佐知子は、ゆっくりと膝を折って、その豊かな腰を落としていった。
−14−
……すべての桎梏をふり払って。この恥ずかしい形式をも受け容れて、自ら達也と繋がろうとする佐知子だったが。
その決意とは裏腹に、身体を沈めていく動きには勇ましさのかけらもなく。
へっぴり腰で、怖々と。片手は達也の手を握ったまま、もう一方の手を達也の肩について、フラつきそうになる身体を支えて。
なにより、その目的にそぐわないのは、内向きになった両膝。
と、達也の手が、小刻みに震える佐知子の膝小僧にかかった。
ビクリと、中腰で動きを止めた佐知子と眼を合わせて。達也は無言のまま、軽く手に力を加える。佐知子の膝を外へと押しやるように。
「………………」達也の指導の意味を理解しても、佐知子は数瞬ためらった。
しかし、やがてシーツを踏みしめた裸足がスタンスを変えて、両膝が外向きに開いていった。ゆっくりと。
内股から、ややガニ股ぐあいへと。より恥辱を強めた体勢に首筋を紅く染めた佐知子だったが。
達也の手はさらに白衣の裾を掴んで、ペロンと捲くり上げてしまう。
「いやっ」ギクリと腰を浮かせて、達也の手を捉える佐知子。
「ダメだよ」やんわりとだが、叱るように達也が言って。
それだけで佐知子の手から力が抜ける。
達也は捲り上げた裾を、制服の腰の飾りベルトの内側にたくしこんで固定する。
腕をまわして、後ろの側も、両横も同じようにする。
「うん、これでいい」達也は満足そうにうなずいたが。
「ああ、こんな……」佐知子にすれば、泣きたくなるほどに恥ずかしい姿だった。
もはや白衣が隠しているのは、肩と背中と腰もとだけである。
胸も腹も下半身もつまりもっとも隠しておくべき個所は、みな剥き出しになっているのだ。
ことに、股間は、丁度達也の眼の高さにある。
「……見ないで…」涙声で訴えて。
しかし佐知子は、捲り上げられた白衣を戻そうともせず。
達也の眼前にある股座を隠そうともしない。いや、片手は咄嗟にそこへと向かいかけたのだが。気弱く躊躇したあとに、結局は元通りに達也の肩を掴んだのだった。
唯一、羞恥に悶える心に添った行動といえば、腰を後ろに引いて、外を向いていた膝を、またすり合わせるようにしていることだけだった。
だが、それさえも、達也の手が軽く促せば、なんの抵抗も示さずに、またユルユルと外へと広がっていくのだ。
「……アア……恥ずかしい……」
顎を反らすようにして洩らした嘆声は、まったく本気のものであるのだから、佐知子の心情と行動には脈略がなくなっているとも言える。
とにかく、もはや達也の意には少しも逆らうことなく。
佐知子は、破廉恥な姿で破廉恥な姿勢をとった。
スッポンポンの下半身、息苦しいほどの肉感に満ちた両肢を、ガニ股開きに踏んばってみせたのだ。
「……すごい。すごく、いやらしいよ。佐知子さん」
うっとりと達也が呟いた。まさに、カブリつきで佐知子の淫らな姿を眺めて。
さしもの達也も、カッカと熱く滾るものを体の中に感じて。おえらかえった巨根をビクリビクリと反応させていた。
……ビデオか、せめて鏡があればな、と達也は惜しんだ。
いまのこの佐知子の痴態を、背後からも眺めたかったのだ。
達也が眼にしている前面の眺めも、それは絶景ではある。
巨大な熟れ乳も、滑らかな腹も、盛りマンと濃い陰毛も丸見えだし、佐知子の恥辱に耐える表情も楽しむことが出来る。
だが、後背からの眺めには、また違った味わいがあるはずだった。
後ろから見れば、佐知子は、上はまだちゃんと白衣を着たままで、白帽も被っていて。
ただ、腰から下だけが剥き身なのである。“尻隠さず”なのだ。
ベテランのナースが、身に馴染んだ制服姿で、白い尻を曝け出して。
病室のベッドの上、患者を跨いで、ガニ股立ち。恥ずかしさに身をよじるたびに、デカい熟れ臀も、くなくなとふりたくられるのだ。
まったく、実に珍妙で、滑稽で、そして卑猥なさまではないか、と。
気を惹かれながらも“ま、この先いくらでも、同じような光景を拝む機会はある”と自分を納得させたのは、達也の欲望もかなり差し迫ってきていたからだった。
達也は、目の前におっぴろげられた佐知子の股座へと手を伸ばした。
恥辱のポーズに固まって、ただ小刻みに震えている佐知子に、最後の燃料をくべるために。
汗と淫蜜に濡れた叢をかきわけて、秘肉を暴き立てた。
「アッ、んあっ、アッアッ」
莢から頭を覗かせた女芯を擦られ、女陰に指を挿しこまれて、佐知子が嬌声に喉を震わせ、腰をくねらせる。
無論のこと、肉の孕んだ熱は、少しも冷めていない。いっそう熱く滾っていた。
僅かな指の弄いにも、噴き出すように零れた淫汁が、ボタボタと垂れ落ちて、達也の太腿を濡らした。
その状態を確認すれば、すぐに達也の手は離れた。
佐知子も、それをムズがりはしない。肩をあえがせながら、伏し目に達也を見つめた。渇望に潤んだ眼で。
「……来てよ。佐知子さん」達也が呼び、佐知子が、コク、とうなずきをかえす。
左右に広がった膝にグッと力がこもって。
そして、白い豊満な臀が、再び沈みこんでいく。
その動きは、やはりゆっくりとしたものではあったが、先ほどよりは淀みがなく。
恐るおそる、というよりは、慎重な身ごなしであるように見えた。
踵を浮かせて、太腿をさらに開いて。脹脛をグッと気張って。
緊張に強張った面を俯けて、視線を下へと向けながら。
中腰から、蹲踞に近い体勢へと、佐知子は裸の尻を落としていった。
「あっ!?」腿の付け根のあたりに、熱く硬い感触があって。
佐知子は、反射的に腰を浮き上がらせた。
達也は、片手で屹立の根元を握って、もう一方の手で佐知子の腰の位置を調整する。
「……いいよ。そのまま来て」
「……………」固い唾を呑み下して。佐知子は、いっそう慎重に、そろそろと。
せわしなく、達也の顔と自分の股下を交互に見やりながら、腰を低めていって。
「………ァ…」
今度は、洩らした声はあるかなきかの小さなもので。止まった腰も、逃げようとはせずに。
達也の先端は、正確に佐知子の中心にあたっていた。
濡れそぼった肉弁に、わずかに触れた、灼けるような熱さ、鋼のような硬さ。
達也の男根。生身の達也の……
「……っ!」そこで、佐知子は思い出した。
「達也くんっ、コンドームはっ?」うかつにも、この瞬間まで忘れていた、そのことを。
(気づきやがったか…)
チッと舌打ちしたくなるのを堪えて、まずは達也は、佐知子の腰を掴んで、咄嗟に浮き上がろうとする動きを封じた。
「あんなの着けたら、本当にひとつにはなれないじゃない?」
「ダ、ダメよっ!絶対にダメ」
達也が猫なで声を出しても、佐知子は頑として譲らず、達也の肩においた手を突っ張るようにして、体を離そうとする。
(…ったく。いまのいままで忘れてたくせに、なにが、絶対ダメ、だよ)
達也も、いよいよ…と勢いこんでいただけに、苛立ちを禁じえない。
「た、達也くん、お願いだから…アッ、いやぁ」
思わず、佐知子の腰にまわした腕に力が入って、さっきより強く、怒張の先端を女肉に押しつけることとなり、佐知子に怯えた声を上げさせる。
いっそ、このまま…と心が動くのを、達也は必死で抑えこんだ。
それでは画竜点睛というものだと。腕をゆるめて。
「……なんにも邪魔されずに、佐知子さんと溶け合いたいんだけどな」
「……そ、それは……でも…」切なく訴えれば、佐知子は確かに心を揺らすように見えた。
ごく軽くだが、互いの性器はまだ触れ合ったままだ。それが佐知子の昂ぶりを煽って身も世もない心地にさせてもいる。しかし、
「……ダメ、よ。いけない」
佐知子は、流されてしまいそうな自分を鞭打つように、声を強めた。
(ああ、もう。いい年こいて、生ハメの一発や二発でガタガタ言うんじゃないよ)
まあ、こんな足掻きを見せるのも、これが最後だろうが、と。
「……わかった。佐知子さんの嫌がることはしたくないからね」
達也はそう言って、佐知子を、一瞬、安堵させたが、
「でも、さっき貰ったコンドームは使えないよ」
「…えっ?」
「入らないもの。僕には、無理」
「そん、なっ…」
「無理に被せたって、破けちゃうだけだよ」
「………………」
達也は本気で言っているのだが、日頃コンドームなど使ったことはないわけだから、真偽のほどは怪しかった。いずれにしろ、佐知子は鵜呑みにしてしまった。
裕樹に着けさせていた物だから。達也ほど大きさが違えばそういうこともあるだろうかと。
「だから、佐知子さんがどうしても、ゴムをしなきゃ嫌だっていうなら…。今日は、ここまでだね」
達也の言葉が、佐知子を強張らせる。
しかし、そう言いながら、達也は腰を送って、怒張の先を擦りつけた。
「ヒッ、た、達也く…」
「仕切り直しってことになるね。残念だけど」
「あ、そ、そんな、アッ」
なおも淫靡な接触を達也は仕掛ける。言いぐさと行動はバラバラだった。
佐知子の洩らした声も、達也の残酷な言葉に対するものか、疼く女肉を擽る行為に対してなのか、判然としなかった。
「退院まで待ってくれれば、僕が適当なサイズのを探してくるけど」
さらに途方もないことを言い放った。
達也の肩を両手で掴んで、堪えがたい感覚に腰をうねらせながら、佐知子は、愕然と眼を見開いた。
退院…? あと何日あるというのか?
「もちろん、僕は」
と、達也の声が変調する。どこか投げやりな調子から、熱く粘っこい響きへ。
「このまま、佐知子さんとひとつになりたいけどね。そのほうが、ずっと気持ちいいに決まってるもの。僕も、佐知子さんもね」
「……あぁ……ヒアァッ」
その囁きと、その直後に膨れ上がった肉芽を擦った硬い肉の感触が、佐知子に最後の屈服を選ばせた。
「な、中はっ…」
「え?」
「…中には…出さないで…」
「……佐知子さん?」
「おねがい、約束して」叫ぶように、佐知子は言った。
極限まで追いつめられた肉の苦しみに、総身を震わしながら、必死な眼で、達也に約束を迫った。
「わかった。約束するよ」
無論、そんなつもりは毛頭ないが。そう言ってやれば、気がすむのだろうと。
達也の誓約に、佐知子は忙しなく二度、三度うなずいて。
「た、達也、くん…私、もう…もう…」
達也の肩を掴んでいた手を、首へとまわして。
達也を跨いだ腰をうねらせて、グショ濡れの秘裂を、巨大な肉傘へと擦りたてた。
犯してくれ、と全身で訴える。いますぐ抉ってくれ貫いてくれ、と。
すでに、その腰の蠢きが、達也の逞しい肉を捉え咥えこもうとする意志を見せている。
達也は、熱烈だが蒙昧な求愛を、正しく導いてやる。
くねる臀を抱えて、しかるべき位置へ誘って。肉根の照準をあらためて合わせて。
ヌプリと、肉矛の先が涎を垂れ流す淫花をとらえて、肉厚の花弁を押した。
「……アァ……」ブルルッと、佐知子が、くびれた腰に、また震えを走らせる。
あとは……どちらかが。ほんの少し、腰を突き上げるか、落とすか。
それだけだった。
「……ひとつになろうよ。佐知子さん」達也が囁きかける。
佐知子は、極度の昂奮に引き攣った顔をうなずかせて。
そして、息をつめた。
腰が落ちる。白い、円い、巨きな臀が沈む。
剥かれた牙の上へと。喰われるために。喰らうために。
すべて、自らの意志で、自らの動きで、それを求めても。
「……グッ…ムッ…」
巨大すぎる、逞しすぎる肉体を迎え入れた刹那に、洩れたのは苦痛のうめきだった。
佐知子の動きが止まる。
まだ、ほんの切っ先が入りこんだだけ。しかし、肉口を強烈に押し広げられる感覚は
無論、佐知子にとって未曾有の経験であり。
「……アッ…クッ…」
いくら濡れ蕩けた女肉にも、到底ムリだと思えるその魁偉さを、まさに実感して。
佐知子は達也の両脇に踏んばった逞しい太腿をブルブルと震わせて、硬直してしまう。
後を引き取るために、達也は佐知子の腰を掴み直した。
強い力で、おののく腰を、グイと引き寄せる。
「んああっ、い、痛ッ」肉を裂かれる苦痛に、佐知子が鋭い叫びを上げる。
それでも、しとどな濡れにも助けられて、達也の巨砲は、もっとも広がった肉冠の部分を佐知子の中に潜りこませた。
「ア…く…おっき…」深い苦悶の皺を眉間に刻んで、佐知子がうつつに呟く。
いっぱいに媚肉を拡げて嵌りこんだ肉傘の巨大さに意識は占領されてしまっていたから、それ以外の言葉が出ない。
だが、無論、本格的な侵入はこれからだった。
再び、達也の手に力が入って、ジワジワと佐知子の尻を引き下げていく。
「アッ、ハァッ…た、達也、く…ん…」霞む眼を開いて、怯え声で佐知子は呼んだ。
「力を抜いて」達也の簡潔な答えと冷徹な表情は、医者のようでもあった。
実際、狭隘な肉路を一寸ずつ切り裂いていく作業に集中しているわけである。
(肉のメス…というには、太すぎる刃だったけれども)
その冷ややかに見える態度こそが、達也ののめりこみようのあらわれだった。
昂ぶるほどに、冷徹になり残酷になるのが、この尋常ならざる少年の性質である。
ジワジワと抉りこんでいくのも、べつに佐知子を思いやってのことではない。
手に入れた女をはじめて犯す刹那の、この悦楽を、長引かせる。
じっくりと、佐知子の肉体の構造を確認して、熟れ肉の味わいを堪能する。
同時に、自慢のデカマラの威力を、佐知子にもじっくりと味あわせてやるのだ。
「……ア…く、くぁっ…ぎッ…」
キリキリと歯を食いしばって、それでも堪えきれぬ苦悶の声に喉を震わす佐知子。
達也の狙いどおり、凄まじい肉の凶器の威力をタップリと思い知らされていた。
信じられないほどに佐知子の女肉を拡げた太い剛直は、わななく襞肉をかきわけながら、ゆっくりと突き進んで。
そして、今度は、どこまでも止まらないのだ。佐知子の中へ、奥深くへ、熱い硬い肉矛の切っ先が、どこまでも入りこんでくる。
「アヒッ、こん、こんな……アアァッ」
達也の肉体の逞しさは、その眼で見て、手に触れて、知っていたけれど。
こんなもので貫かれたら……と、恐怖と期待に胸を震わせた佐知子だったけれども。
ついに、その夢想が現実となってみれば。
肉体に受ける衝撃は、味あわされる感覚は、どんな想像をも超えていた。
「アィッ、ぎ…ヒッ……こんな…の……ヒイイッ」
惑乱の中に投げこまれて、佐知子が引っ切り無しに洩らす声は、
なんの構えもない剥き出しのものとなって、扱いきれない苛烈な感覚をそのままに伝える。
そこには、まだ苦しみの色が濃かったが。
むしろ残酷な悠長さで侵攻を続ける達也が、半ばまで突きこんだままで
軽く佐知子の尻を揺さぶれば、
「アヒイィッ」
硬く張り出した肉エラに、繊細な襞肉を掻きむしられる強烈すぎる刺激に鋭い叫びを迸らせて、顎を突き上げた。
歓喜にうねって蹂躙する牡肉へと絡みついていく女肉は、すでに気づいているようである。
たとえ、その侵入が、どれほどの衝撃と苦痛を伴おうとも。
いま、蕩けた肉を穿つ、この猛々しき侵略者こそ、待ち焦がれた存在であること。
あとは、その圧倒的な力の前に跪き、まったき隷従を誓うしかないのだということを。
「…んああっ」 佐知子が、ひときわ大きな声を上げて、背筋を反らした。
達也の先端が、佐知子の最奥に達したのだ。
しかし、それで侵略が終わるのではなかった。なおも達也は佐知子の腰を引き寄せていく。
「アアッ!? うんん…む…」
驚愕の叫びは、子宮を突き上げられ、押し上げられて、重いうめきに変わる。
その長大な男根のほとんどを佐知子の体内に埋めこんで。
達也は、最後の仕上げに、ベッドのスプリングを利して、ズンと腰を弾ませた。
「アオオオッ!」
脳天まで突き上げる衝撃に、佐知子は咆哮して。達也の首にまわした腕にギリギリと力がこもった。
…ふう、と、達也は息をついて。
「完全に繋がったよ」
キツく両眼を閉じて、苦悶とも恍惚ともつかぬ表情で歯を噛み締める佐知子に囁きかけた。
佐知子は、うっすらと眼を開いて、
「…あ…あぁ……たつや、くん……」苦しげな呼吸の下から、達也の名を呼んだ。
言われるまでもなく、結合が完全なものであることは、佐知子が一番よくわかっていた。
肉体で、臓腑で感じとっている。
左右に踏んばっていた佐知子の両肢からは力が抜けて、達也の上に座りこむかたちになっていた。
達也の、巨大な肉根の上に。
互いの股座は密着して、根元まで佐知子の中に没した達也の肉体は、佐知子の肉孔を満たしつくして。その先端が、子宮を強く重く圧している。
「わかる? 僕のが、佐知子さんの中に入ってる」
佐知子の極上の肉の味に満悦してか、達也は甘ったるい言葉を振舞う。
「…わかる、わ……達也くん、が、私の、中に…」
ああ……とうとう…、と。ついに迎えた、この瞬間への深い感慨。
しかし、佐知子は、じっくりとそれに浸れるような状態ではなかったのだった。
「達也くんのがっ、私の中、いっぱいに、お、おくまで」
それだけが、引き裂けそうなほどに女肉を押し広げて最奥まで嵌りこんだ達也の雄々しい牡肉だけが、佐知子の感じられるすべてだった。
「そうだね。僕のが、佐知子さんの一番奥にあたってる」
「そ、なの、あたって、達也くんの」
うわごとみたいに口走って。それがたまらないのだと、霞んだ眼の色で訴える佐知子。
「こんな感じ?」
達也は、両手で掴んだ佐知子の重たい尻を、グリッと円を描くようにまわした。
「ヒアアアッ」達也の硬い先端が、子宮を押し上げたまま、グリグリとこねまわす。
「そ、それっ、あ、たまんないっ」
あられもない言葉が吹きこぼれる。そうとしか言いようがない感覚に。
「気持ちいいの? 佐知子さん」
達也の指を食いこませる、佐知子のぶ厚い臀肉は、ヌルヌルに汗にまみれている。
尻だけでなく、真っ赤に火照った顔も、達也に押しつける裸の乳房も、達也を跨いだ太い腿も、力なくシーツの上に落ちた膝から爪先まで、全身を汗みどろにしてのたうつ佐知子の奥地へと、さらに軽いジャブを繰り出しながら、達也は訊いた。
「ね? 気持ちいい? こんなふうに奥を突かれたら」
「…んあっ、ヒッ、わ、わからない、わからない…の…」
グラグラと首を揺らして、泣くように答える。
本当に、佐知子にはこの強すぎる感覚を、快感と呼んでいいのか、わからない。
耐え難いほどの感覚だから、“たまらない”と言った。
これを“気持ちいい”と言っていいのか、わからない。
少なくとも、佐知子は、こんな“気持ちいい”は知らない、知らなかった。
「でも、佐知子さんの“ここ”は、気持ちいい気持ちいいって、言ってるよ」
からかうように、達也が言ったとおりに。
未知の感覚に惑乱する佐知子の意識よりも先に、肉体はそれを快感だと認めて、歓悦に震え、随喜の涙を流していた。
極太の剛茎を咥えこんだ秘肉が、貪婪に収縮しては、とめどなく淫蜜をタレ流す。
「こんなに僕のを締めつけて。中も、すごくうねって、絡みついてくる」
「ああ、イヤッ、いやぁ」
陶然たる声で、己が肉体の淫らな反応を指摘されて、佐知子は首を力なく打ち振って、身悶えた。しかし、そのわずかな動きにも、女の源泉に接した達也の先端が擦れて、またたまらない刺激を走らせ、だらしなく鼻を鳴らすのだ。
「イヤなの? じゃ、やめる?」
意地悪く達也は訊いて。ほんの少し佐知子の重たい臀を持ち上げた。
佐知子の中での淫靡な接触を、ギリギリ、わずかに触れるという具合にするのは、それこそミリ単位の調節であって。この期におよんで、自身も、佐知子の熟れた女肉の美味に背筋を痺れさせながらの、達也のこの執拗さは、やはり、どうにも異常ではあるが。当人は、これが楽しいのだから、しょうがない。
「アアッ、いやっ」
そして、佐知子は、息子の同級生、中学生の少年の手で、爛熟の肉体に眠っていた官能を掘り起こされ、身も心も靡かせてしまった美しい母親は。
ここでも達也の思うがままに操作されて、焦った声を上げて、逃げようとする刺激を追いかけて、そのくびれた腰をのたうたせた。
しかし、こういう際には、達也の手は万力のようにガッチリと抑えこんで、佐知子に思い通りの動きをさせないのである。
「あっ、やぁ、達也くん」
佐知子はムズがるような声と、ネットリと潤んだ眼の表情で訴えるしかない。
「イヤなんじゃなかったの? どうしてほしいのさ?」
「あぁん、も、もっと…」
「もっと? もっと、こうしてほしいの?」
「イヒイッ、それ、それ、もっとっ、アッアアッ」
また密着が強められ最前よりも強烈に肉奥を擦りたてられて佐知子の眼前に火花が弾けた。
ひしゃげるほどに突き上げられ、こねまわされる子宮の感覚が、たまらない。
達也の太い根元に肉芽が擦られるのが、たまらない。
「アッ、いっ、もっと、もっとグリグリって」
はばかりなく貪欲な希求を喚きたてて、佐知子は、拘束を緩めた達也の手の中で大きな臀を踊りくねらせた。
「気持ちいい?こうやって、奥をグリグリされたら、気持ちいいの?佐知子さん」
再びの達也の問いかけにも、今度は一も二もなく、ガクガクとうなずいて、
「い、いいの、気持ちいい、奥、おくが、グリグリって、達也くんのが」
“たまらなく、気持ちいい”と訴える。
「フフ、最初から素直にそう言えばいいのに」
「だ、だって、だって、こんなの、知らない、から」
「こんなふうに、奥を突かれたこと、なかった?」
また、ウンウンと佐知子は頭をたてにふって、
「大きいから、達也くんのが、とっても大きいから、私の中、いっぱいで奥、おくまで……んああっ」
また、くじられる子宮から響いた重い愉悦に、ガクリとそりかえったあとに、
「ああ、達也くんっ」
佐知子は、ぶつけるように顔を寄せて、達也の唇を求めた。
ブチューッと吸いついて、挿しこんだ舌が熱狂的に達也の舌を求め、からみついて。
「……ぁああ、好きっ、好きよ」
唇を離して、想いを告げて、また忙しなく口舌を押しつけていく。
自ら仕掛ける濃厚な口吻に酔いながら、喉をヨガリに泣きに震わして。
嬉々として達也の唾を呑みこみながら、腰を臀をのたうたせる。
熱烈な佐知子の舌の求愛に、適当に答えながら。
達也は、冷酷な眼で、年上の女の狂乱ぶりを眺め、愉悦を噛み締めている。
出逢ったばかりの頃の佐知子の姿を思い出して。
あの、取り澄ました生真面目な美人ナースを、わずかな間に、ここまで堕としめてやったのだということに、満悦していた。
(……しかし)予想以上の、佐知子のトチ狂いぶりである。
達也とすれば、自慢のデカマラでブッスリ貫かれた佐知子のマ○コが、長いこと男を咥えてなかった空き家のオマ○コが、馴染むまでの暖気運転くらいのつもりで、軽いいたぶりを与えていたのだが。
そんな必要もなかったかと思わせる、佐知子のレスポンスの良さである。
(やっぱり、メスブタだったな)
しかし、この雌ブタの場合、秘めた淫乱さはかなりのものがあるくせに、性的な熟練に乏しく、オボコいところが面白い。
いまも、平素の慎み深さなど投げ捨てて、あられもない言葉で肉の愉悦を訴えるのも、その未熟さのゆえだ。
快感を宥めたり、いなしたりする術も知らず、真っ向から受け止めて。
それを媚態や喃言にまぎらせるということも出来ないから、そのまま露骨な言葉にして吐き出してしまうのだ。
こりゃ、しばらくは飽きずに遊べそうだな、と達也はほくそえんだ。
もともと、達也のうるさい好みを満たす女は少ない上に、飽きさせずに長く楽しませてくれる女となると、さらに希少なのであった。
(期待するぜ。せいぜい、励んでくれよ)
そうして。呆れるほどに執拗ないたぶりと、邪悪な思索のすえ、達也は、ようやく欲望を吐き出すための動きに出るのだった。
達也の両手に、また力がこもって。
粘い汗にまみれた、佐知子の裸の臀を、グイと持ち上げた。
「ヒイアァッ」佐知子が魂の抜けるような声を洩らして、喉を反らせる。
半ばまで抜け出していく肉根の張り出した硬いエラに、トロけた襞肉を掻き擦られて。
と、快美に震える腰は、すぐにまた引き戻された。
「んぐううっ」
生じた空白を一気に埋められて、激しい勢いで子宮を叩かれて、佐知子は生臭いうめきをしぼって、ギリギリと歯を食いしばった。
そのまま、達也の膂力が、佐知子の臀に連続してアップ&ダウンを演じさせていく。
「ヒッ、ヒイイッ、うん、あはっ、ヒアッ」
ゴリゴリと擦られて、ズンズンと突き上げられて。
肉奥に連続して炸裂する凄まじい感覚に、ただ叫喚する佐知子。
「どう?佐知子さん。僕らSEXしてるんだよ。いま、僕と佐知子さんSEXしてるんだ」
佐知子のこめかみを流れる汗の粒を舐めとって、達也が熱っぽい言葉を吐きかける。
確かにそれは、いよいよ本格的な性交の開始といえるアクションだった。
達也は動かない(動けない、というのはかなり怪しかったが)なら、
繋がりあった部分を擦り合わせて快楽を与えあう動きは上になった佐知子がするしかない。
いまは、それを達也の手が操り、強要しているわけだが。
「んああ、達也くん、達也くんっ、アヒッ、アッアアアッ」
「気持ちいい?佐知子さん、僕とセックスして、気持ちいい?」
快楽の暴風に吹き飛ばされまいとするように、しっかと達也の首を抱いて、また何度もうなずいた佐知子だったが。肉に受ける愉悦の大きさは、そんなことでは伝えきれず、
「気持ちいい、いいのっ、スゴい、こんなの、イイッ」
見栄も恥もない、剥き出しの肉の叫びとなって、噴き出した。
「す、すごい、の、達也くんのが、おっきいのが、ヒグッ、擦れ、こすれて、アアアッ、そこっ、それ、うんん……」
ヨガリ啼きと生臭いうめきの間に、こよない悦楽を告げる言葉を撒き散らかして。
「僕も、すごくイイよ。佐知子さんのオマ○コ、すっごく熱くて、僕のを締めつけてくる」
「ヒッ、アアアッ、達也くん、達也、くぅん……んああっ」
卑猥な賛美で、己が肉体の状態を言い表されて。しかし、燃え盛る血肉は、恥辱も恥悦に変えて、ブルブルと身震いを走らせて。
休みなく、達也に乗り上げた雄大な臀は上下している。もはや達也の制御を離れて、佐知子自身の意志で、ふりたくられ揺さぶられている。崩れていた膝を立てて、両の腿を、またガニ股開きに踏んばって。達也に御されていたときより、はるかに激しく淫猥な蠢きを演じている。
デカ尻を上げ下ろす力仕事から解放された達也の手は、まずはそのまま、汗にぬめる臀肌を撫でまわして。それからぶ厚い双臀の肉を鷲掴みにして、グッと左右にかき寛げた。深い切れこみがパックリと別れて、色素を沈着させた陰裂があらわになる。
裂けそうなほど拡がって、極太マラを咥えこんだ佐知子の淫肉。
臀が上下するたびに、白いヨガリ汁にまみれた剛茎が半ばまで姿を現し、また肉厚の花弁を巻きこみながら没していくさまは、達也には見ることは出来ないが。
達也は伸ばした指先で、その結合の上方で、ヒクリヒクリとわなないているセピア色の蕾を探りあてた。
「アッ、やっ」深い皺をなぞられ、窄まりを軽く押されて、佐知子が羞恥の声を上げる。
臀の運動が弱まり、達也の指を払おうとするように、左右に打ちふられた。
無論、これまで佐知子は、その不浄の器官を弄られた経験はない。
しかし、やはり無論のこととして、この淫蕩なメス豚は、後ろの感覚も鈍いはずがなかった。
いままで、あえて、そこには触れてこなかった達也だが、そう確信している。
その正しさを実証するように。
「いやっ、ダメ、そこ、そこはっ、ヒッ、ひいっ」
後門への弄くりに感応してデカマラを咥えこんだ女肉がキュッキュと小気味よい締めつけを繰りかえす。忌避の叫びは嬌声にまぎれていって、達也の指を避けようとする臀ふりも、そのまま性交のスラストに同化して、より複雑で淫らがましいのたうちへと変えていく。
それに満足して、いまは達也は、佐知子の肛門、やがて達也によって初花を摘まれて妖しい快楽を植えつけられる隠微な穴から、指を離した。
わずかに下へと滑らせて、二本の指で戸渡りのあたりを強く擦りつける。
「ヒアアァッ」今度は、より明確な歓喜の声が、佐知子の口から迸った。
なおもゴシゴシと佐知子の会陰を擦りたて、結合部まで指を這わせながら。
達也は、もう一方の手を、ふたりの体の間に差しこんで、佐知子の乳房を掬い上げる。
熱い熟れ肉を握りしめて、痛々しいほど勃起した乳首を摘むと佐知子は鋭い叫びを上げて。
「アヒ、やっ、ダメ、そこ、あっ、いいっ、んああ」
性感のポイントを一斉攻撃される息もつまるような快感に泣き喚いて。
それでも、その半狂乱の身悶えは、与えられる快楽のすべてを受け止め貪ろうとする女の欲深さを感じさせて。
反撃の腰ふりは、巨きな臀を達也の太腿に叩きつけるようにして。
「アアッ、いいっ、すごい、達也くん、すごっ…ヒイッ」
「……クッ…」
物狂ったような佐知子の激しさと、強烈な女肉の収縮は、さしもの達也をも、うめかせた。
その腹いせに、ズンと腰を跳ね上げる。
「オオウッ」
短く太く佐知子が吼えて。“オ”のかたちに口を開いたまま、呼吸を止める。
佐知子の視野は白い閃光に包まれて。
総身の肉は数瞬の硬直のあとに、ガクガクと痙攣の波を走らせた。
しかし達也は、その瞬間の、痛いほどの佐知子の締めつけにも耐えぬくと、そのまま攻め続けた。痙攣を刻む佐知子の臀を臼ひくようにふりまわし、激しく揺さぶった。
「ヒアアッ、ガッ、んあっ、アアア」
自分を見舞った激発の正体を理解する暇さえ与えられず、追いやられた高みから下りることも出来ないまま、いっそう苛烈な攻めにさらされて、ただ佐知子は、獣じみた声を振り絞って、堪えきれぬ感覚を訴える。
「アアアーーッ」また白い光が弾けた。
佐知子は、折れそうなほど背を反らして、女叫びをふりしぼった。
苦悶にも似た表情に顔を歪めて、達也の肩にギリギリと爪をたてながら。
また食いちぎるような女肉の締めつけに襲われて、達也は歯を食いしばって堪えた。
佐知子の肉の反応は、快楽を重ねるごとに激烈に濃厚になっている。
達也のものを引きずりこもうとするかのような蠢動に、一瞬だけ誘いこまれそうになってしまった。
(やっぱ、溜まってるなあ…)
再びの硬直と痙攣のあとに、グッタリと胸に崩れてきた佐知子を抱きとめながら、達也は、内心に呟いた。それもそのはずで、こんなに長い間、女を断ったのは童貞切って以来だ。佐知子の篭絡という目的に専心していたから、気にしていなかったが、体は正直である。
まあ、若いチ○ポの味はタップリと教えてやったし、あとは派手にブチまけるだけだ。
(中出しの良さを思い知らせてやって。それで、今日のところは終了、と)
残りのカリキュラムを確認して。
達也の肩に頭をもたれてまだ小刻みな震えを走らせている佐知子の髪を優しく撫でてやる。
乱れた黒髪は汗に湿って、強い香を放っている。ナース・キャップはとうに外れ落ちて、
達也の脚の間に転がっていた。
「……佐知子さん、イッちゃったんだね」
「……う……あ……」佐知子が、ノロノロと顔を傾けて、虚ろな眼を向けた。
「そんなに、気持ちよかった?」
「…あぁ……達也…くぅん…」
頬を撫でる達也の手に、甘えるようにスリスリして、鼻から抜ける声で呼んだ。
その態度にも声にも、潤んだ眼の表情にも。
母親ほども年上の女らしい貫禄は、微塵も残っていなかった。
「…私、わたし、こんな…こんなの…」
ただ征服された女の媚びとおもねりだけを滲ませて佐知子は甘美な屈服の感情を告白した。
「こんなに気持ちいいの、はじめて?」
「そう、そうなの……こんな……はじめて」
「でも、まだだよ」そう言って、達也は軽く腰を揺さぶった。
「んっ、アアッ」途端に佐知子はいきみ声を上げて、弛緩していた体に緊張がよみがえる。
「ね?僕はまだ終わってないし。もっともっと、佐知子さんを気持ちよくしてあげる」
キュッとしこった佐知子の豊臀を掴んで。ゆっくりと円を描かせる。
「んああっ、たっ、達也くん、」
連続して快楽を極めた媚肉を攪拌される、強すぎる快感に身悶えて。
しかし、佐知子は達也にしがみつく腕の力を強くした。
「ど、どうにでもしてっ」たちまち火勢を取り戻す肉欲の炎の中から、叫んだ。
「私の体、達也くんのものだから、だから、もう、どうにでも、達也くんの…アアアッ」
「うれしいよ。今度は一緒に天国に昇ろう、佐知子さん」
「アアアァァ……」
熱っぽく耳に吹きまれただけで、佐知子の厚い腰の肉置は、ほとんどアクメを迎えたような痙攣を走らせる。
至福が、佐知子の胸を満たす。
それは、さらに肉をトロけさせ、血を滾らせる。
「アッ、アアハッ、ふんっ……んはあっ」
暴れ馬のような勢いで、佐知子の白い巨臀が踊り狂う。
際限なく高まり続ける愉悦に鞭打たれて、その蠢きを、どんどん貪婪に卑猥にしながら。
「いいっ、すごいっ、気持ちいいっ、アヒイッ」
ヨガリの叫びと汁を、とめどなく溢れ出して。
「すごい…のっ、達也くんの、いいのっ」快美を告げる科白もどんどん露骨になっていく。
「そんなにいいの? 僕のオチンチン」
「いいのっ、達也くんの、オチンチン、すごいっ」
口移しのままに、そんな言葉まで使って。しかし、それは心底から、突き上げられる臓腑の底から噴き上がる礼賛だった。
「すごい、達也くん、すごい」
うわごとにように佐知子は繰り返した。そうとしか言えなかった。
「佐知子さんも素敵だよ。僕のを、すごく締めつけて。すごく気持ちのいいオマ○コだ」
「……アアアァァ……」佐知子の中に法悦が膨れ上がる。
若く逞しい牡に愛され貪られることの歓喜。
女であることの悦び。
「好き、好きぃっ」
歓悦の涙を流しながら、達也に、この至極の幸福を教えてくれた愛しい男にすがりついて、唇を求めた。
ああ、なにを迷っていたのだろうか、自分は。
この無上の喜びを手に入れることを、何故、あんなにも躊躇っていたのだろうか?
愚かだった己への怒りさえ、胸にわかせて。
愚かな逡巡で無駄にしてしまった時間を、取り戻そうとするかのごとき激しさで佐知子は、達也の口舌と肉体を貪った。
汗みどろの豊満な肢体が、狂おしくのたうつ。その肉の中で沸騰し続ける快楽が、限界に近づいていく。
「………ぁあああっ」
口吻をほどいた佐知子が、互いの唾に濡れ光る唇から、震える声を洩らした。
「ああっ、くる、スゴイのが、くるっ、アアアッ」
せくり上がる波涛の大きさに、怯えながら。
しかし、燃え盛る肉体は、トドメを求めて、最後の狂奔を開始する。
淫蕩な臀ののたくりが、より直線的な動きへと変わって。達也の腰へドスドスと重たく打ちつけられる。
「ん…あああ、くるっ、きちゃう、んひいっ」
「佐知子さん、イキそう? イっちゃう?」
こちらも息を弾ませ、快楽に耐える表情を見せながら、達也が訊いて。
佐知子の動きに合わせて、ズン、ズンと腰を突き上げた。
「んあっ、アッアッ、達也くん、私、アアアッ」
「一緒にイこう。僕と一緒に」
「あっ、イっちゃ、イク、ああ、イクッ」
一緒に、という達也の言葉の意味するところ、その行動の結果を顧ることなど、無論、佐知子には出来るはずもなく。
身体の中で、達也の巨大な肉体が、さらに膨れ上がるのを感じても、
「アアアッ、スゴッ、や、ヒイッ」ただ、驚倒して、悲鳴をふり絞って。
「……おおおっ」
咆哮した達也が、最後の一撃を叩きつけた瞬間に、快楽を破裂させた。
「アアッ、イッ…く……アアアアアアアーーーーーッ」断末魔の絶叫が病室に響く。
凄まじい絶頂へと佐知子を追いやって、達也も引鉄をひいた。
佐知子を最奥まで貫いた肉根が脈動して、怒涛の勢いで若い牡精を噴出する。
「ヒッ、ヒアアアーーーッ」
熱い波に子宮を叩かれる衝撃が、佐知子を、さらなる高みへと飛ばす。
達也の爆発は何度も連続して、膨大な量の熱精で、佐知子の腔内を満たしていく。
「ヒッ、あっ、熱、あついっ」
灼けるように熱い奔流が噴きかけられるたびに、佐知子はビクリビクリと総身をわななかせて。
しかし、その表情には、膣内での射精を許してしまった悔恨や恐怖は、少しも浮かんでいなかった。
ギュッと達也の首にしがみついて、両腿で達也の腰をはさみこんで。
うっとりと眼を閉じて。愛しい男の生命の迸りで満たされる至福を噛みしめていた。
ようやく、達也の長い遂情が終わった時、
「……あぁ……イ…ク……」
かすかに囁いた佐知子の腰がブルリと震えて。
そして、佐知子は、至福のうちに悶絶した。
−15−
週二回の塾通いの日には、裕樹の帰宅は母よりも遅くなる。
母は夕食の支度をすませて裕樹を待っている、それがいつものパターンだったが。
この日は違っていた。
「ただいま」裕樹の挨拶に応えはなく、いつものような出迎えもなかった。
母の通勤用の靴は玄関にあるし、家の中には灯りもあったが。
「……ママ?」少し声を大きくして呼んでみた。やはり返事はない。
多少の訝しさを感じながら、リヴィングに入った。
灯りの点いた室内にも、母の姿はない。
キッチンは暗く、食事の用意もなかった。
「……?」
ますます、おかしいなと首をひねりながらも、取り合えず着替えようと、
廊下に出て、階段をのぼりかけて。
ふと、奥の母の部屋のほうに目を向ける。
……一応、確認しておくか、と。
そちらへ足を向けた裕樹は、そこに、同じように母の寝室を訪ねた夜のことを重ねて、ちょっと胸を騒がせたり。
実は、帰宅前から“今夜あたり”と期するものがあった。
だから余計に、母の姿が見当たらないことが、気にかかるのかもしれない。
閉ざされたドアの向こう、母の部屋の中はシンと静かで、ひとの気配を感じとることは出来なかった。
「ママ? いないの?」ノックのあとに、呼びかけた。
少しだけ、間があって。ドアの向こう、かすかに、ひとが動く気配。
なんだ、いるじゃないか……と軽く安堵した裕樹の前で、ドアが開いた。
「……ママ?」
しかし、現れた母のようすを見て、裕樹はちょっと慌てることになった。
「……おかえりなさい」
ユラリという感じで部屋の入り口に立った佐知子は、寝ていたのか、
声も表情もボンヤリとして。髪も少し乱れていた。
「どうしたの? 具合悪いの?」
「……ちょっと。疲れて……横になってたの」
佐知子は出勤時の服装のままだった。ブラウスにもスカートにも皺がよって。
唯一、ストッキングは脱いで、白い脚をさらしていたが。
几帳面な母が、着替えもせずに横になるほど体調が悪いのか、と裕樹は不安になった。
「ママ…」
「大丈夫よ、そんなに心配しなくていいから」安心させるように、佐知子は笑ってみせる。
「本当に……少し疲れが出ただけだから」
「う、うん……」
確かに、言葉をかわすうちに、佐知子の口調も表情も、だいぶしっかりしてきたし。
病気というわけではなさそうだと、裕樹はひとまず納得した。
「……それで、晩ごはんの準備が」
「いいよ。なにか取るから。ママは休んでいて」
「そうしてくれる? ごめんね」
すまなそうに言う佐知子には、やはり深い疲弊が滲んで。
しかし、その気だるい表情や、どこかしどけない佇まいには、やけに凄艶なものがあって。淫らな翳り、とでもいうべき色が刷かれていたのだが。
(……なんだか、今日のママは、感じが違うな)
裕樹の幼い感性には、その程度の認識しか出来なかった。
それも、体調の悪さのせいだと簡単に納得してしまうのだった。
「気にしないで。ゆっくり休んでよ」
それでも、そんな労わりを口にしながら、つと手を伸ばして。
そっと母の腕に触れたのは、元気づけようとする思いのほかに、いつもと違う母の雰囲気に引きこまれるものがあったのかもしれない。
「……ありがとう……ごめんね、裕樹」
「そんなこと……」
眼を伏せた母の謝罪の言葉に、奇妙なほど深い感情がをこもっているように感じられて、裕樹は面くらった。
やっぱり、疲れてるんだな。早く休ませてあげよう、と。
そう思ったとき、ふっと鼻に感じた。
「……ママ、汗かいてる?」
「えっ!?」
裕樹とすれば、それほどの陽気でもないのに汗を匂わせた佐知子に、それも体調のせいかと案じてのことだった。
まあ、母子ならではの遠慮のなさでもあって、軽い気持ちで訊いたのだが。
佐知子はハッと身を引いて、
「に、匂う?」狼狽して訊き返して、しきりに身体を気にするようすを見せる。
「え、いや、そんなでもないけど…」
過剰な反応に当惑しながら、やはり不躾だったかと反省する裕樹。
ママも女なんだから、気にするか、と。
「お風呂、わかそうか?」お詫びのつもりでもないが、そう申し出た。
汗を流してサッパリして、ゆっくり休めばいいじゃない、と。
「……え…ええ……」なぜか佐知子は、迷うようすを見せた。
俯いて、しばし考えこむ。
「……やっぱり……今日はやめておくわ……」静かに、そう言った。
「……今夜は……このまま、眠るわ……」
囁くような声は、当然自分への返答だろうと思ったから、裕樹は、
「そう? そうだね、体調が悪いなら…」
別に無理じいすることでもないと、アッサリ引き下がった。
佐知子の浮かべた薄い微笑も、自分に向けられたものだと思った。
その目が、どこか遠くを見ていたことには気づかなかった。
そっと愛おしむように、お腹のあたりにあてられた手にも、特に注意を引かれなかった。
「じゃ、ゆっくり休んでね」
最後に、そう念押しして。無言でうなずきをかえした母の部屋から離れる。
……まあ、ぐっすり眠れば、大丈夫かな、と。
疲れが出ただけだという母の言葉を信じて、安心しようとする。
それでも、階段を上りかけて、もう一度、母の部屋のほうを見やった。
「明日は……元気な姿を見せてくれるよね。ママ」そう呼びかけた。
視線のさき、佐知子の寝室のドアは閉ざされている。
その部屋の中。ひとりで。
愛しい母が、なにを思って、どんな夢を見て、この夜を過ごすのか。
いまの裕樹には、知りようもなく、想像しようとも思わない。
裕樹が階上に去り、あとには静かな家内の景色。
エホン、と咳払いひとつ。
「ええ、本日、また越野に来てもらったのは、他でもない」
芝居がかった物々しさで、高本が言う。
「こないだ、相談にのってもらった、オレのダチの件で、新たな進展があったんだな」
「うん……」人のいい裕樹は、高本の態度に引きこまれて、真剣な表情でうなずく。
「それでまた、越野にも聞いてもらってだ、意見を聞かせてもらいたい、と」
「うん」場所もメンツも、先日と同じ。放課後、繁華街のバーガー・ショップ。
裕樹の向かいには、高本と市村が並んで座っている。
「……いや、ぶっちゃけ、驚きよ、これが」急に高本は地にもどって呆れたように言った。
「ど、どうしたの?」思わず、裕樹は、軽く身を乗り出してしまう。
いまだ、このふたりに付き合うことに、積極的な気持ちにはなれないながらも今日こうしてついて来てしまったのは、その件、高本の友人の恋のゆくえが気にかかったからである。
「堕ちちゃったよ」
「え?」
「だから、その子持ちの年増女。とうとう、口説きおとしちまったんだと」
「ええっ!?」
確かに、裕樹は驚かされた。まったく予想外だった。
「ほ、本当にっ?」
「ああ。マジらしい。そんな、すぐに割れるようなホラふくやつでもないからな」
グイとコーラを呷って、ガリガリと氷を噛み砕いた高本は、
“ま、チョイと聞いてくれよ”といった感じで、
「そいつもさ、やっぱオトナのいい女、オトしたのが自慢らしくてさ、コマかく教えてくれるんだけども。そこまでのなりゆきってやつをさ」
滔々と、まくしたてた。
「さんざんコナかけたあとに、正面突破で、好きだってブチかましてさ。女のほうは、年のことやら持ち出して、返事を渋ったらしいけども。それでも、強硬にイエスかノーかと迫ったら、結局うなずいて。夕陽の中で、誓いのキッスですと。ったく、聞いてらんねーよなあ?」
大袈裟に嘆息してみせる。
「……………」裕樹は、ショックをあらたにして、口を噤んだ。
息苦しいような心地……もっと言えば、不快な気分になっている。
その高本の友人の想いを応援したい、と、以前に裕樹は言ったが。
しかし、現実に、その恋が報われるとは、少しも考えていなかった。
“応援したいが、無理だろう”というのは表層的な感情で。
“無理に違いないから、応援してやれる”が本音であったとまで、冷静に自己の心理を顧みることは出来なかったが。
「なあ、どう思うよ? いや、ダチの想いが叶ったんだから、オレも喜んでやるべきなんだろうけど。どうも、こう、おさまりが悪いんだよなあ」
「う、うん…」
「だって、中学生だぜ? それが…」
「……まあ、中学生っていっても」今日はじめて、市村が口をはさむ。
「見た目は、そうは見えないからな。大人っぽいヤツだから」
「や、そうだけどさあ」と、やはり中学生には見えない二人は言い合う。
「それに美形だし。もともと、女にはモテるやつじゃん」
「って、市やん、それはミもフタもなくない?」
「そんなもんだろ、女なんて。年くってようが、母親だろうが」
そう言って。市村は、高本以上に納得いかない顔で見ている裕樹に、言葉同様に冷淡な眼を合わせた。
「そのママさんもさ、最初に会ったときから、美形だってことは意識したろうし」
「なによ? いい年こいた女が、中学生にひとめ惚れしたってか?」
「かもよ。とにかく、ハナから憎からず思ってたんじゃないか。そんな相手に、熱烈にモーションかけられりゃあ、ノボせもするだろ。いい年こいた女でもさ」
わずかに皮肉な口調で。事実を読み上げるように語る市村。
裕樹は、知らず、その顔を睨みつけるようにしていた。
聞けば聞くほどに、高本の友人なる人物への反感が募っていく。
どうも、話が違っている気がするのは、その友人が、件の年上女性に向ける気持ちがあまり真摯なものではないように感じられることだった。
それを是認するような市村の言いようも、当然、気にいらない。
「そんで、フラっと、よろめいたって? どーかと思うなあ、それ」
だから、市村に食い下がる高本を、応援するような気持ちになっていた。
「だって、市やんさあ、いま母親っていったけど。ガキはどうするわけ?女のガキの気持ち、っつーかさあ」
果たして、一番自分が言いたいことを代弁されて、大きく肯いた裕樹だったが。
「そのガキ中三だろ?自分の母親が自分と同い年のガキとくっついたなんて知ったら…」
「えっ!?」 いかにも憤懣やるかたないといった調子で続けた高本の言葉に、驚愕する。
「うん?」
「…………」ふたりが、同時に、大声を上げた裕樹へと視線を向ける。
それぞれの仮面を被って。しかし、その眼には、同じものを湛えて。
「なに? 越野」
「その、その女のひとの子供って……僕らと、同い年なの?」
「そうよ。あれ、言ってなかったっけか?」
「聞いてないよ。だって、そのひと、三十歳くらいだって」
「ハァ? んなわけねえや。中三のガキがいるのによ」
「だって、この前は…」
「んなこと、言った? 市やん」
思い出す…フリで。市村は、予め用意の釈明を口にする。
「…ああ“三十は越えてる”って言ったんじゃないか。正確な年はわからんから、とりあえず」
「なるほど。それを越野は、三十くらいだと思いこんじゃった、と」
高本は、納得顔でうなずいて。
「さすがに、三十ってことはないわ。やっぱ、オレらの母親くらいの年代」
「そ、そうだったんだ…」
「そう聞いたら、余計に信じらんないだろ? 自分のガキと同い年の男とさあ」
「う、うん」
その通りだった。本当に、信じられない。そして、いっそう、いやな気持ちになった。
しかし、裕樹は、
「……あ、あのさ」おずおずと、訊かずにはいられなかったのだった。
「本当に…信じられないけど……その女のひとも、好きになっちゃったんだよね?その、高本くんの友達のことが…」
「そうらしいな」
「でも、さ。それで、どうする気なんだろ?」
「はぁ?」
「これから。中学生と、つきあうってこと?」
神妙な顔で、裕樹は問い質したのだが。
高本は、プッと吹き出した。
「な、なに?」
「……や、悪い。スマン」高本は、なおも、ウププと笑いを堪えながら、
「だってさ、おかしくない?中学生の男と、母親くらいの年の女が、“つきあう”ってさあ」
「それは…そうかも知れないけど…」憮然とする裕樹。
妙にツボに入ってしまったらしい高本の、言わんとすることもわからないではなかったが。
でも、他にどんな言いようがあるのか、と。
「……まあ、当人たちは、そのつもりみたいよ」とりなすように、市村が言った。
「“つきあう”つもりらしい。当然、まわりには内緒でだけど」
「……そうなんだ」
「…って、いうかよ」笑いの発作をしずめて、高本が、
「もう、オトナの“つきあい”は始めちゃってるんだもの」
「えっ?」また驚愕する裕樹を、ニヤニヤと、やたら愉しそうに眺めて、
「そりゃあ、たかがチューくらいで“堕とした”なんて、えらそうに言わないって、そいつも」
「それ、って…」
「もう、ヤっちゃったってこと」
「………………」
「なあ?チョイと、問いつめたい気分には、なるよなあ?息子と同じ年の中学生に股ぁ開くママンの気持ちってヤツをさあ。どうよ、市やん?」
ショックに固まる裕樹を横目にみながら、相方にふった。
「んなこたあ、知らんけど。でも、ヤっちまったあとのことは、想像がつくよな」
「ああ…ねえ? あんなデカマラ、ブチこまれちまったらねえ…」
「………え?」
「いや、スゲエのよ、そいつのが。まさに馬並みってやつ」
「女の扱いにも、慣れてるしな」
「え、え? だって、僕らと同い年、なんでしょ?」
「まあ、いろんな意味で、ケタが外れてる男なのだよ」
「そ、そうなの…」
「だから、一発ヤられた時点で、もうダメだね、そのママさんも。中学生のデカチ○ポとテクでメロメロにされてるね。もう離れられないってなもんだね」
「そんな……大人の女のひとが…」
「大人の女だから、余計に効くんじゃん。デカマラの威力がさ」
「しかも、ダンナと別れてから、だいぶ経つらしいからな」
“別れて”と、市村は言う。“死に別れて”とは言わずに。微妙に逸らす。
「そりゃあ、もうひとたまりもないってなもんだな」
「………………」
「なあ、どうよ、越野? 想像してみろよ」
「……え?」
「もし、自分が、その女のガキだったらってさ」
「なっ…」
「越野の母ちゃんがさ、中学生に惚れちゃって。デカくてイキのいいチ○ポで、ズブズブハメまくられてさあ。すっかり骨ヌキにされちゃったら。どうするよ?」
「そんなこと、あるわけないだろっ!」
「いや、だから、たとえばの話よ。あくまでも」
「そんなのっ」
また激昂した声を上げかけて。他の客の注視を感じて、裕樹は懸命に気をしずめて、
「……ありえないことは、想像できないよ」吐き捨てるように、そう言った。
不愉快だった。
引き合いに出されただけでも、母を穢されたような気がする。
また、問題の母子が、年代や家庭環境など、妙に自分たち母子に符合するものだから、余計に、いやな気分になるのだった。
裕樹は、その“見知らぬ”ふしだらな母親に、深い蔑み、憎悪に近い感情さえ抱いて、
「普通、ありえないだろ、そんなの。そのひとが、どうかしてるんだよ」
その悪感情を隠そうともせずに、言い足した。
「おお、なんか、越野、怖えよ。怒った?」
「いまのは、高本が悪い」
「いや、スマンかった。このとおり」市村にも言われて、頭を下げる高本。
「オレは、ただ、その女の息子の立場だったら、タマらんよなあって。それを言いたかっただけなのよ」
「……うん。そうだよね」
それには、裕樹も深く同感する。“見知らぬ”同年齢の少年への同情と哀憫が胸をしめつけて。それがいっそう、その母親への怒りを強めた。
「……どんなもんかな?」ふと、市村が口を開いた。
「いまのところは、そいつも、母親の行状は知らないんだけど。やっぱり、このまま知らずにいたほうが、そいつにとって幸福なのかね?」
「そら、そうだろ?知りたくねえよ、自分の母ちゃんが中学生のオンナにされてるなんてさあ」
「でも、知ろうが知るまいが、事実は変わらないんだぜ?母親が、中学生と深みに嵌ってくのに、息子は気づかずにいるってのも、哀れじゃないか」
「いや、でもさあ…」
「越野は、どう思う?」
「……う…ん…」裕樹は、深刻な表情で考えこむ。
「……むずかしい、ね…」容易には結論を出せなかった。
「だよな?ホント“知るも地獄知らぬも地獄”ってことだと思うぜ。そいつからしたらさ」
まったく、その通りだと思った。裕樹は深く首肯して。
「……でも。ずっと知らずには、いられないんじゃないかな…?」辛そうに、言った。
「母子ふたりの暮らしなんでしょ? その子も、いずれ気づくんじゃないかな」
「そうだろか?」
「母親が、隠す気になったら、わかんねえんじゃん?」
「うん…でも…」
実際のところは、わからない。その子は母の異変に気づくかも知れないし、いつまでも気づかないかも知れない。
「……一番いいのは、その子が気づかないうちにお母さんが目を覚ましてくれることかな」
「いや、だから、それはムリだって。もう一発キメられたあとだから。少なくとも、女のほうからは、絶対別れようなんてしないってば」
高本が力説しても、裕樹は、その点はまったく信じる気になれなかった。
そんな理由で、離れられなくなることなど、ありえないと思っている。
その母親の放埓さは許せないが、それでも、一時の気の迷いであってくれれば、と。
見ず知らずの少年のために、裕樹は願った。
その同情は、似たような境遇にあっても、自分には揺るぎない母との絆があるという優越感から来るものだったが。裕樹はそこまでは自覚せずに。
「…やっぱり…その子、可哀想だよね…」沈痛に、そう言った。
「まあなあ」
「そうだな」
同意する高本と市村の態度は、裕樹に比べて軽いものだったが。
確かに、その眼には憐れみの色も、浮かんではいたのだった。
−16−
特別病室の空気は、また変化した。
もともと、滞在する患者の種類によって、大きく趣きを違える部屋である。
真に癒しを求める者が在る時には、そこはあくまでも静謐な、落ち着いた空間となる。
治療が口実でしかない類の患者が逗留すれば、病室とは思えぬような放埓で不謹慎な場所になりもする。
いずれの場合にも、それを可能とするのは、この高価な部屋の最大の売りである隔離性と密室性であった。
で、いまは宇崎達也という年若いVIPを収容する、その部屋の雰囲気が、最近、また変化したという話である。
また、というのは、ここまで刻々と変容していたからだ。
達也の入院当初の、静かで穏やかな雰囲気。
しかし、達也専任となって終日を共に過ごすようになった越野佐知子との間に奇妙な緊迫した空気が流れるようになって。
やがて、ふたりの関係の変化に伴って、そこには淫らな熱気が加わって。
日ごとに、淫猥な熱と緊張は高まっていって。
ついにピークに到達した……のは、つい二日前のこと。
狂熱のうちに、とうとう肉体を繋げあったふたり。
であれば、その後に共に過ごす部屋の空気が、また変容するのは当然のこととも思えるが。
「……でも、みんな驚くだろうね」達也の、愉しげな声が響く。
室内は静かだ。しかし、数日前までの息づまるような緊迫のムードは、どこにも残っていなかった。変化とは、そのことである。
「佐知子さんが、病室で、こんなことをしてるって知ったら」
嬲るような言葉だが、口調は軽く、ユルい。
タルんだ空気に同調した……というのは、逆だ。
そこにいる者たちの有様が変わったから、場の雰囲気が変化しているわけだ。
達也は、佐知子の篭絡というゲームを終了して、あとは気ままに楽しむだけ、というつもりになっているから、あれこれ策謀していた時の熱と真剣さはない。
そして、佐知子はと、言えば。
「佐知子さんって、主任なんだよね? 偉いんでしょ?」
皮肉な達也の問いかけにも、また答えは返ってこない。
ただ、荒い鼻息と、隠微な水音だけが聞こえてくる。
ヤレヤレ、といった表情で、達也は見下ろした。
張りつめるものを失くした病室内には、ただ淫猥な熱だけが残り、淀んでいる。
そうなった最大の理由は……言うまでもなく、佐知子だ。佐知子の変貌だ。
ふたりの関係が、ついに一線を越えたあとに。
達也は気をゆるめたが。佐知子は頭がユルんでしまったようだ。
放恣なムードを作り出しているのは、それまでの懊悩や迷いをキレイさっぱり忘れ去ってひたすら淫情に耽溺しようとする、佐知子のタガの外れっぷりだった。
「ねえ? 佐知子さんってば」
また達也が呼んでも、応えはない。ただ、フンフンと、ピチャピチャと。
ベッドの端に腰掛けた達也の両脚の間に跪いて、股間へと顔を埋めて。
うっとりと瞼を閉じた佐知子の口と舌は達也の男根を舐めしゃぶることに忙しかったので。
一心不乱といったていで、佐知子は、覚えたての淫戯に没入している。
剛茎の根元に細い指を絡めて。すでに血を漲らせた巨大な肉冠に、ペロペロと桃色の舌先を這わせている。
舌の動きは拙く、技巧と呼べるものはなにもなかったが。
せわしなくペロペロと舐めずる舌の運びや、鼻から洩れる甘ったるい息、上気した頬や眼元の色づきには、強い昂ぶりが滲み出ていた。
この逞しい牡肉が愛しくてたまらない、という情感が。
(……やっぱ、イチコロだったな)
達也は冷笑とともに、佐知子のノメりこみようを見下ろす。
はるか年上の女がさらす屈服ぶりも、予定調和でしかない。肉の争闘において、達也の並外れた力に敵しえた女など、過去にひとりもいなかったから。
それでも、特に思い入れた豊艶な年増美女が見せる無残な敗北の姿は、愉しい眺めには違いなかったが。あえて、達也は水をさす。
片手に剛直を掴んで、筒先をもたげて、佐知子の熱心な舌先から離した。
「アッ、あぁん…」
途端に佐知子はムズがる声を上げて、首を伸ばして、逃げる肉根を追いかけながら、上目づかいに達也を見上げた。
「……すっごく、いやらしい顔になってるよ、佐知子さん」
「……いや」
達也の指摘に、にわかに羞恥を蘇らせて、はしたなくそよいでいた舌を引っこめて、気弱く眼を伏せた。
すると達也は矛先を戻して。先端を佐知子の鼻頭に押しつける。
ヒッ、と喉を鳴らして、反射的に退ろうとする佐知子の後頭部を押さえこんで。
硬い肉で、かたちの良い鼻梁をグリグリとこねまわし、鼻面を押し上げた。
「い、いやぁっ」典雅な美貌を無惨に破壊されて、熟れたメス豚がブタ面で啼く。
達也は、実に愉しげに、それを見下ろす。
もはや完全に佐知子をモノにしたという自信から、少しづつ、その本性をあらわしていく。
「ねえ、どうする?こんな場面を、もし誰かに見られたら。佐知子さんの部下の若い看護婦とかが、これを見たら、なんて言うだろうね?」
「……アァ…」達也の残酷な言葉に胸を刺されて、泣くような声を洩らしても。
佐知子には、我が身のあさましさを嘆き、発覚の恐怖に震える余裕すらない。
ピタリと鼻面に押しつけられた達也の肉体から、ダイレクトに嗅がされる強い臭気に酔わされて、それどころではなくなってしまっていた。
自分がまぶした唾の匂い。その下から、達也の、若い牡の旺盛な精臭。
「……あぁ…」
思わず、佐知子は、ブタのように上向かされた鼻孔を拡げて、その香を深く吸いこんでいた。酩酊が強まり、カッと血が燃え上がる。
臭気の濃さは、若く逞しい牡獣の膨大なエネルギーのあらわれだが。
いまはことさらに淫猥な生臭さが際立っているのは、それが情事のあとのペニスだからだ。
今日すでに一度、達也の男性は欲望を吐き出していた。無論、佐知子の子宮へと。
これまた無論のこととして、さんざん佐知子をヨガリ狂わせたはてに気の遠のくほどの絶頂を味あわせて。
だから、いま達也の巨大な肉根にまとわりついているのは、爛れたセックスそのものの臭いだった。大量に吐き出された男精と、やはり多量に噴きかけられた女蜜の残滓が饐えた臭気を作り出しているのだ。
その穢れた肉塊を、佐知子は夢中で舐めしゃぶり、いまはブタ型にされた鼻の穴をフンフンと鳴らして、嗅いでいるのだ。
汚いとは思わず、くさいとも感じなかった。
すべて、自分と達也の交歓の痕跡だと思えば、切なく甘やかな感情だけがわいてくる。
あの、この世ならぬ快楽の名残だと思えば、肉が慄えた。
欲望の泥濘に頭まで浸かりこんでしまえば、身もがきも心の揺れも、なにもかもがさらなる悦楽を求めることへと収束していく。
だから。
佐知子の美貌を歪める遊びを堪能した達也が、やっと剛直を鼻から離したときに、
「……ひどいわ、達也くん」佐知子が洩らした恨みの言葉は、言いわけでしかなかった。
「ごめん。佐知子さん、可愛いから。時々、無性にイジめたくなっちゃう」
苦笑して見せて。声は甘くしても、達也の弁解は、どこかぞんざいだ。
いまの佐知子には、これで充分だと見切っている。
「……もう…」
はたして佐知子は、軽い嘆息ひとつで、かたちばかりの非難の色さえ消してしまった。
恋に盲いた女の愚かしさで、達也の悪趣味な戯れも熱情からと都合よく解釈して。
それを受け容れることで馴れ合いを深めたつもりで。眼にはジットリと媚びをたたえて。
そして、勝手に高めた情感に衝き動かされて眼前に聳え立つ肉の屹立へと唇を寄せていく。
赤黒い亀頭に、チュッと口づければ、その熱と肉感がジンと唇を痺れさせて。
たまらずに、巨大な肉傘のあちこちに、チュッチュとキスの雨を降らせる。
そうしながら、ますます淫情に蕩けていく佐知子のノボセ顔を見下ろして、
「すっかり、おしゃぶりが好きになっちゃったんだね?」達也は訊いた。
達也の鈴口に吸いついたまま、佐知子は小さく首を横にふって。
しかし、その後に、かすかに肯いてみせた。
「…………達也くんの、だから…」唇を離して、消え入るような声で、そう言って。
恥ずかしさを誤魔化すように、大きく開いた口を、達也の巨大な肉冠へと被せていった。
「……ン……グ……」懸命に唇を広げて、先端の部分を含んだ。
苦しげな息を鼻から突きながら、モゴモゴと口を蠢かせる。
とても、フェラチオとは呼べないような、稚拙な行為だが。
(まあ、しゃあないわな)
なにしろ、これまで口淫の経験など、まったくなかったってんだから、と。
いまは、なんの抵抗もなく汚れたペニスを含んで、夢中でしゃぶる佐知子の姿にその屈服の度合いを見て取ることで満足する。
牝奴隷としてのたしなみを仕込んでやるのも、ひとまず先のこととして。
「いいよ、佐知子さん」陶然たる声をかけて、達也は佐知子の髪を撫でた。
「……フッ…ムウ……」
嬉しげに鼻を啼かせた佐知子が、いっそう口舌に熱をこめる。
グッと、咥えこみを深くして、口蓋に亀頭を擦りつけながら、舌をからみつかせる。
鼻から棒のような息をつきながら、ぎこちなく顔を前後に揺すって。
大量に紡がれる唾がジュプジュプと粘い音をたてて、達也の太さに広がった唇の端から顎先へとしたたる。
「ああ、いいよ、気持ちいい」切ない快美の声で、さらに佐知子の熱狂を煽っておいて、
「……フフ、佐知子さん、そんなに僕のオチンチン、気にいった?好き?」
「……ンンッ…」佐知子は、淫情に潤んだ眼で達也を見上げて。かすかにうなずいて。
堪えかねたように、達也の怒張を吐き出すと、
「好きっ、好きよっ、達也くんのオチンチン」震える声で、そう叫んだ。
握りしめた指に力がこもる。
捧げもつようにした巨大な肉根を見つめる佐知子の瞳は、さらに蕩けて
「あぁ……すごい……」
畏怖と崇敬に慄く声を洩らして、自分の唾にまみれて、テラテラと輝く先端に、唇をふるいつかせた。
ブチュブチュと、熱烈な求愛の口吻を注ぎながら。
「……んん、すごい……好きぃ…」
抑制を失った佐知子の口からは、せくり上がる昂奮が、そのままの言葉となってダダ漏れに溢れ出す。
「熱くて…硬くて…逞しいから、怖いくらい逞しいから、好きっ」
唇で舌で、その獰猛なる牡肉の圧倒的な存在感を確かめれば、それによって与えられた魂消るような悦楽の記憶が、身体を震わせて、
「おっきいオチンチン好き、太いのが私の中いっぱいにして奥まで突いてくれるから好き」
熟れた肉体に刻みこまれた至極の快楽を追いかけて這いずりまわる舌が、凶悪に張り出したカリ首に届く。
「ここ、ここも好きっ、ゴリゴリって、中を擦って、キモチイイから、好き」
その鮮烈すぎる感覚を伝えるように、高い段差をレロレロと舌先でほじくった。
この攻撃には、さしもの達也も本気の快美のうめきをついて屹立をビクビクと脈動させる。
「う、あっ、佐知子さん…」
「いい? 達也くん、キモチいい?」
引き出した反応に歓喜して、佐知子は上目に達也の表情をうかがいながら、
舌の動きを強めた。
「あぁ、いいよ、佐知子さん」
「もっと、もっと気持ちよくなって」
こそげるように強く舌腹を擦りつけて、太い茎を扱きたてれば、
「……ああぁ、まだ、大きくなる、硬く……すごい、スゴイッ」
さらに、グッと漲る巨根の凄まじさに、震えおののいて。
しかし、双眸はネットリとした輝きを増す。
ゴクリ、と。あさましく喉を鳴らして。
「ああっ、達也くんっ」
たまらず、佐知子は、また禍々しく張りつめた鎌首へと、むしゃぶりついていく。
口腔を満たしつくす巨大な肉塊。夢中で首をふれば、擦られる粘膜から、ビリビリとした刺激が脳天まで突き抜ける。
亡夫にも裕樹にもしたことのない、淫らな愛戯。
以前の佐知子なら考えもしなかったような行為が、痺れるような愉悦を生む。
「うれしいな。それほど、気に入ってもらえて」
優しく、佐知子の髪を指で梳きながら、達也が言った。
「好きにしていいんだよ。このオチンチンは、佐知子さんのモノなんだから」
「……ムウウーーッ……」佐知子の喉を啼かせたのは、歓喜の叫びだった。
夢ではないか、と思う。これほどの幸福を手に入れてしまったことが、いまだに信じられなくて。
達也のような若者と出逢って。愛されて。この年まで知らなかった女の悦びを教えられて。
身も心も満たされることの、この喜び……。
もっと、味わいたい。もっと、愛されたい。もっと、もっと。
その思いに衝き動かされて、佐知子は、さらに淫蕩な熱をこめて、愛しい肉体を舐め、しゃぶり、吸いたてた。上目づかいに達也を見る眼は、ドロンと濁って、どぎついほどの淫らな媚びを浮かべていた。歪みながら極太チ○ポを頬張った口元の卑猥さともあわせて、まるで人が変わったような…というのは今更か。
すでに、別人といえば別人の、いまの佐知子であるから。貞淑な寡婦、良き母、職務熱心なベテラン看護婦、そんな構えはすべて剥ぎ取られて、ただ貪欲に快楽を求める、牝としての姿を晒しているわけだから。
そんな佐知子のさまを見下ろす達也の口元は、笑みのかたちになってはいたが。
「飲んでみる?僕の」訊いた声は、どこか冷やかだった。
母親ほども年上の女を、愚かな恋の夢に酔わせたままで。しかし、少しづつ、達也は、関係のありようを変えていく。真実のかたちへと。
主と奴隷、飼い主とペットという繋がりかたへと。
「……………」わずかに、首ふりの動きを緩めた佐知子は、なにも答えなかった。
達也の言葉の意味はわかった。
嫌悪は感じなかった。無論、経験はないが、達也の欲望のあかしならば、飲めると思う。達也の吐き出したものを臓腑におさめるのだと思えば、ゾクゾクと甘い痺れさえ覚える。
でも……いまは、それよりも。
「それとも、他のところにかけてほしい?」
佐知子の迷いの意味など、たやすく読みきって、達也は重ねて尋ねた。
今度は、すぐにうなずきが返った。
「どこに、欲しい?」
「…………わかってるくせに…」達也の肉根から口を離して、佐知子は小さく呟いた。
「ちゃんと聞きたいんだ」
「……もう…」
拗ねるように鼻を鳴らしてみせても。それが達也の流儀だとは、すでに佐知子も承知している。言葉にすることで淫情を高めるという遣り口に順応させられて、佐知子自身も、その刺激を受け入れはじめてもいたから。
「……私の…中に、入れて。中に、かけて…」
「………………」達也は無言。軽く首をひねる素振りで、不合格だと告げた。
「……アァ…」悲しげに嘆息して。それでも佐知子は羞恥に震える声で、やり直しを。
「……わ、私の……オマ○コ…に、達也くんの…オチンチンを、入れて。中に、子宮に、熱いのを、かけて」
教えこまれた卑猥な言葉を使ってのあさましい強請りの科白をやっとの思いで言いとげて、
「……恥ずかしい…」佐知子は、泣くように顔を歪めた。
「フフ、オマ○コに入れて、なんて。いやらしいなあ、佐知子さんは」
「ひどい、達也くんが…」
「冗談だよ。さあ」達也は佐知子の腕を掴んで、引き上げる。
佐知子はフラつく脚を踏みしめて、立ち上がった。
白衣の裾から覗く両肢は素足で、床についていた膝が微かに赤くなっている。
「ほら、こうして」達也は佐知子のくびれ腰に手をあてて、身体の向きを変えさせた。
たたらを踏むようにして、半回転する佐知子。
「あぁ…また、こんな…」 達也に背を向けるかたちになって、不安げに振りかえる。
しかし、達也はお構いなしに、白衣の後ろを捲くり上げた。
「アッ、いやあ」佐知子が羞恥の声を上げて、腰をよじる。
制服の下には下着もなかった。出勤前に、佐知子が、さんざん悩んだ末に選んで身につけた、パール・ピンクの瀟洒なショーツはストッキングと一緒にベッドの上に置かれている。
尻肌に直接空気を感じて、佐知子は咄嗟に手をまわしたが。
「ダメだよ」そう釘をさされて、払われれば、それ以上は抗えなかった。
達也は持ち上げた裾を腰のベルトにたくしこんで、佐知子を尻からげのスタイルにすると、眼前に晒された豊臀をあらためて眺めやって。
「うーん、何度みても、ほれぼれするほど、いいお尻だね」感に堪えたようにそう言った
「あぁ……恥ずかしい……見ないで、達也くん」
達也の意には逆らえずに、尻をさらした姿を保ちながら、弱い声で訴える佐知子。
「どうしてさ? こんなにキレイな、お尻なのに」
達也は手を伸ばして、艶々と光る白い臀肌を撫でた。
「こんなに、スベスベで。円くて、大きくて、さ」
達也の賞賛にも、佐知子は複雑な表情を浮かべて、
「……大きすぎて、不恰好でしょう?」心細げな声で訊いた。
快楽に盲いて、すすんで破廉恥な行為を演じるようになっても。
達也の目に肉体を晒すことには、強い羞恥と抵抗を感じずにはいられない佐知子だった。
それは、自分の年齢への負い目からくる感情だった。
若い達也に、中年の肉体を見られることが恥ずかしく怖かったのだ。
特に、豊満な肢体に比べても大きすぎるヒップは、佐知子が密かなコンプレックスを抱いていた特徴だった。
だが、達也は、その豊かすぎる臀に、ことさら執着するようで。この時にも、
「そこが、いいんじゃない。大きくて、ムチムチしてて。最高だよ」
張りつめた双臀に這わせる手に、ネチっこさを加えながら、そう言った。
「あぁ、達也、くん…」
「ほら、もっと後ろに突き出して。よく見せてよ、佐知子さんのデカ尻」
「いや、ひどいわ」
そう言いながらも。佐知子は腰を屈めておずおずとした動きで裸の臀を後ろへと突き出す。
「ああ、いいよ、スッゴイ迫力」達也の感嘆が、佐知子をいっそう恥じ入らせる。
実際、逞しいほどの量感を強調された巨臀は、熟女の貫禄ともいうべき圧巻の迫力に満ちている。
佐知子が気にするのも、むべなるかなという雄大さ。
しかし、達也の賛嘆も、まったく嘘にはならない、豊艶な肉の実りである。
「ホント、最高のお尻だよ。もっと自信もってよ、佐知子さん」
「ああ…達也くぅん…」達也の真に迫った賛美に、佐知子は甘ったるい声を洩らして。
弄られる白い桃尻が、モジモジと蠢く。
「さあ、もう少し脚を開いて」
タップリとした熟れ肉を両手に掴みしめて、達也が指示する。
「あ、いや、恥ずかしい」
後ろから、秘肉を暴かれるのだと知って、佐知子が弱い拒絶を示して、双臀の合わせ目がキュッと緊張した。
「そうしないと、オチンチン入れられないじゃない。いらないの?僕のオチンチン」
「…………」それは、佐知子には殺し文句だった。
哀しげな息をひとつついて、佐知子は、また少し開脚を大きくする。
「うん、それでいいよ」聞き分けのよいペットに言うように褒めてやって。
達也は、佐知子の分厚い臀肉を広げた。
「うわ、スゴイな」
「……ああぁ……」達也が大袈裟に驚き、佐知子が泣くような声を上げる。
「スゴイことになってるよ、佐知子さんのオマ○コ」
「いやぁ……言わないで、見ないで、達也くん」
言われるまでもなく、自分の“そこ”の惨憺たるありさまは察しがつく。
激しい交わりの末に、達也の多量な精を射こまれたのは、ほんの小一時間前。
その後、なんの始末もしていないのだ。
長い深い恍惚から、ようやく現世に戻ったあとも、ベッドの上で達也と抱き合ったまま、飽きることなくキスと愛の言葉を交わしあって。
淫らな熱を冷ますことのないまま、達也の足元に跪いて、愛しいペニスを口舌で味わうことに、うつつをぬかしていたのだった。
「すっごく、いやらしい。ほら、佐知子さんのオマ○コから、僕のが溢れてきてる」
わざわざ説明して、また佐知子を恥辱に泣かせておいて。
達也は、それを確かめるように、指を挿しいれた。
「ああ、いやっ、ヒッ、アアッ」
「うわあ、ドロドロだよ、佐知子さんのオマ○コ」
たちまち甲走った叫びを断続させる佐知子に、呆れたように告げながら、達也は深く挿しこんだ二指で、ドロドロの蜜壷を攪拌する。
「あっ、ダ、やぁっ、アヒッ」
「出てくる出てくる。聞こえる?佐知子さん。ブジュブジュって。佐知子さんのオマ○コの音」
「いやぁっ」
激しく首を左右に打ちふりながら、しかし佐知子の下肢にはグッと力みがこもって、秘肉を攻める達也の指に迎合する動きで、腰がくねり臀が踊る。
「でも、僕のだけじゃないよね、こんなにグチョグチョになってるのは。溢れてくる精液、だいぶ薄くなってるし」
嘲笑するように、達也は言った。
「ほら、お湯みたいに熱い汁が噴き出してくる。搾りたてのオマ○コ汁。臭いもスゴイや。いやらしい臭い」
「アアッ、いやいやっ」
「いやじゃないんでしょ? いやらしいことを言われるたび、キュッキュってしめつけて、また、ジュースを溢れさせてくるよ、佐知子さんのマ○コ」
「ヒッ、アアッ、いやあっ、アッ」
「僕のチンチン、舐めてる間も、ずっと濡らしてたんだね? そうでしょ?」
「ああぁ…」消え入りたげな声を洩らした佐知子だったが。
達也から隠すように前を向いた顔が、かすかに縦にふられた。
「やっぱり、そうなんだ。ちょっと前に、ヤったばかりなのに。欲張りだな、佐知子さんのオマ○コは」
「いや、ひどい、そんな」
「佐知子さんが、こんなにいやらしい女だとは、思わなかったな」
「あぁ……ひどいわ」細首を背後にねじって、佐知子は涙を浮かべた眼で、達也を見やる。
「達也くんが……私を、こんなにしたのに」
「ああ、そうだね」甘い恨みの言葉に、余裕の笑みをかえす達也。
「で、佐知子さんは後悔してるの? 僕に、こんなにエッチな体にされたこと」
「……それ…は…」
「僕は、いやらしい佐知子さんも好きだよ。すっごく、そそられるからね」
「……あぁ……達也くん…」
「もっと、いやらしい姿を見せてよ。ほら」
「ヒィッ、あ、やっ、アアア」佐知子を抉った達也の指が俄然激しい抜き差しを開始する。
「スゴイよ、佐知子さんのオマ○コ。熱くなって、ドロドロになってて」
「あ、いやっ、達也くん、私、もうっ」
ガクガクと震える両腿を掴みしめて、崩れそうになる体を支えながら。
のたうちくねって達也の攻めを迎える佐知子の豊臀に、小刻みな痙攣が走る。
「もう、イっちゃいそうなの? このまま、イク?」
「いや、いやあっ」
「じゃあ、どうする? どうしたいの?」
「オチンチン、オチンチンで、イキたいのっ」
瀬戸際まで追いつめられた官能が、佐知子に躊躇なく本音を叫ばせた。
「ああ、そうだったねえ」ピタッと、佐知子を追い上げていた達也の手が止まる。
ズルリと引き抜いた。わななく女陰から、コッテリとした汁が飛び散る。
「アッ……あぁ……はあ……」
「佐知子さんは、この欲張りなオマ○コに、僕のチ○ポが欲しいんだったよね」
指をよごしたヨガリ汁を、佐知子の震える臀の肌に擦りつけながら、達也が訊いた。
「……い、入れて……」
ギリギリの昂ぶりと、渇望に慄く声で求めて。佐知子はグッと腰を気張って、達也へと巨臀を差し出した。
「いいよ。あんまり佐知子さんがいやらしいから、僕もたまらなくなっちゃった。でも、わかってるでしょ? 入れるのは、佐知子さんだよ」
「あぁ……こ、このまま、なの?」佐知子が恥ずかしげに訊いた。
これまでの交わりも、すべて佐知子が達也にまたがるスタイルで行っていた。
達也に足の怪我をタテにとられては、佐知子も受け容れるしかなく。
騎乗位や、このような変則の座位で、自分から達也に繋がっていく呼吸も、その後の腰のふりかたも、少しずつ慣らされてきていたが。
それでも、後ろからというのは、抵抗を感じてしまう。
達也の顔が見えないことが不安だし、感じる恥辱も強かった。
しかし、達也は
「そうだよ」
“せめて、向きあうかたちで”との佐知子の願いは一顧だにせず、
「このデカイお尻が、僕のを呑みこんで、クネクネ踊るところが見たいんだ」
ピタピタと佐知子の尻タブを叩きながら、愉しそうに言う。
そうなれば、佐知子は従うしかなかった。
グズグズと躊躇を見せて、“じゃあ、やめる?”と達也が言い出すことが、なによりも怖かったので。
さ、と達也が促して。
佐知子が、弁解がましい溜息をひとつ、ついて。
ゆっくりと、巨きな臀が沈んでいく。巨大な屹立へと。
達也の両膝に手をついて、ユルユルと豊かな腰を落としていく佐知子からは迷いもためらいも消えて。真剣な表情で、下をうかがいながら。
「……アッ…」ギクッと、白い臀が硬直する。秘裂に、達也の熱い矛先を感知して。
「……フ……うっ……」
ヌルヌルと、硬い肉で濡れた花弁を擦られる感触に、鼻を鳴らしながら、佐知子は臀を微妙に前後させて、角度を調節する。
そうして、求めるモノを求める場所に一致させたことを確認すると。
「……ハァ…」大きく腹をあえがせて、深い呼吸をついて。
グッと唇を引き結んで、臀を落とした。
「…クッ……ん…む…」
ズブリと潜りこんだ巨大な感覚に、佐知子の眉間には深々と皺が刻まれる。
「…フ…グ……クッ…」
肉を軋ませる強烈な拡張感に苦しげなうめきをつきながら、佐知子は動きを止めることなく、臀を沈みこませていった。
ズブズブと、巨きな臀が巨大な肉柱を呑みこんでいく。
佐知子の苦悶の声には、そぐわないような滑らかさ。
佐知子の熟れた肉が、達也のケタはずれのスケールにも、だいぶ馴染まされてしまったことを告げている。
慎重に。あるいは、ジックリと味わうように、結合は進められて。
「……フ、ム……うっ、ううん……」
佐知子の臀と達也の下腹が密着して、肉の繋がりは完全なものとなった。
「お、お……んああぁっ」
長大な肉棒を根元まで咥えこんで、硬い先端に子宮を押し上げられた佐知子が、重いうめきをついて、喉を反らした。
「奥まで、全部入ったね」
ここまで、すべて佐知子に任せて見守っていた達也が、佐知子の背に胸を合わせ、胴に腕をまわして、囁きかける。
ウン、ウン、と佐知子はうつつに数度うなずいて、
「は、入って…る、達也くんの、奥まで、私の中、いっぱいに」
苦しげな息の下から、口早に訴えた。呼吸は重く苦しげでも、眉根はうっとりと広がって、総身には、はや絶頂間際のような震えが走っている。
「ん、あっ、深…いっ、深く、までっ」
「苦しい? 佐知子さん」
「苦し、けど、いいのっ、うれしいのよ」
佐知子の手が、自分の臍下に伸びて。達也のかたちに膨らんでいるように感じられる部分を愛おしげに撫でまわした。
「達也くんので、いっぱいにされて、嬉しいの」
汗を滲ませた面には、深い恍惚の表情が広がっていた。
「じゃあ、ずっとこのままでいようか? 奥まで繋がったままで、動かずに」
「あぁん、いやっ」達也の意地の悪い問いかけに、首を左右に打ちふって、
「動く、動くのっ」
幼いような口調でそう言いながら両手で達也の膝を掴みなおして、ググッと腰をもたげた。
「ひっアアッ、擦れ、る、ンアアッ」自らの動きが齎した、鮮烈な刺激に高い声を張って。
そのまま、佐知子の大きな白い臀が、ユッサユッサと上下しはじめる。
「アッ、いっ、イイッ、スゴ、アアアッ」
咥えこんだ逞しい牡肉を貪る動きは、初っ端から激しく。
達也の腹へと、重量級の熟れ尻をズシンズシンとブチかましては、大きな振幅で、長く太い肉根を味わう。
「アアッ、いいっ、キモチいいっ、いいのっ」
現れ消える達也の剛直は、コッテリとした白いヨガリ汁にまみれて。
とめどなく掻き出される淫蜜で、達也の股間はベタベタに汚れていく。
「激しいねえ、佐知子さん」
今日、すでに一度、欲望を吐き出している達也は、佐知子の狂乱ぶりにも、凄まじい女肉の収縮にも巻きこまれることなく跳ね踊る白い臀を、冷然と見下ろして。
「こんなに卑猥に、デカ尻を振っちゃってさ」
パシンと。高い音をたてて、達也の平手が佐知子の臀丘に炸裂する。
「ヒイィッ、いやぁ」
「いい音がするなあ。この、デカくて、いやらしいオケツは」
もう一発。今度は逆の尻タブに。
「アイッ、やめてっ」
うっすらと赤い痕が残るほどの打撃。フザケて、という域を少しばかりはみ出した嗜虐の行為。
「いやよ、達也くん」
「とか言って。ぶたれた瞬間に、キュッて、チ○ポを締めつけたじゃない。佐知子さんのオマ○コ」
「ああっ、いやっ、嘘よ」
「じゃあ、もう一度」今度は、大きく振り上げた手を、思いきり叩きつけた。
「アアアアッ」
「おお、締めるしめる」
クッキリと手形をつけた白い臀丘が、キューッとしこるのに合わせて、佐知子の肉孔は食いちぎるような締めつけを達也に与えた。
「ね? お尻をぶたれて感じちゃうんだ、佐知子さんは」
「……ああぁ…」
否定するように頭をふりながらも、佐知子の快楽を貪る動きはますます激しさを増して。苦痛さえ刺激に変えて、いっそう官能を昂ぶらせているのは、明らかだった。
「チ○ポ入れられてさえいれば、なにをされても、キモチよくなっちゃうんだね。佐知子さんて」
「ああっ、そんな、だって」
「だって、キモチいいから、って? ホント、いやしいオマ○コだな」
これまでになく、露骨で執拗な達也の言葉なぶり。
「……あぁ…」
ひどい、と嘆いても、一瞬も淫らな腰の動きを止めらない己が肉のあさましさに、すすり泣きに喉を震わせた佐知子は。
腰を大きく捻って、背後の達也に向くと、
「達也くん、きらいにならないでね? 淫らな私のこと、きらいにならないでっ」
きつく達也の腕を掴んで、涙声で訴えた。
「達也くんにきらわれてしまったら、私、わたし…」
激情に声は掠れて、眼尻からは涙の粒がこぼれて。
見栄も恥もなく、年下の男にすがる佐知子の姿には“どうせ、この関係も達也の退院までのこと、達也のためにもそのほうがいい”などと悟りすましたことを口にしていた時の、分別らしさは影も形もない。
「そんなことを、心配してるの?」達也は笑って。佐知子の涙を指で拭いとって、
「そんなはず、ないじゃない。馬鹿だな、佐知子さんは」
「だって、達也くんが…」
「言ったでしょ? 僕は、いやらしい佐知子さんも大好きだって」
そう言って。佐知子の胸に手を伸ばして、ギュッと握った。
「アッ、アアッ」
「こんなふうにさ、すぐに感じてくれるのは、僕だって嬉しいもの」
ベッドを大きく弾ませて、動きの緩んだ佐知子の臀を突き上げた。
「あひっ、んっ、アッ、達也くん、アアッ」
「でも、あんまり可愛いから…」
即座に感応して、淫猥な運動を再開する佐知子の乳房を握りつぶすように、達也は強い力を加えた。
「あいっ、痛っ」
「つい、苛めたくなっちゃう」
「ク、アッ、達也、くん」
「これも、佐知子さんを好きだからだけどね。いろんな声が聞きたくて」
乳房への加虐は続けたまま、佐知子の耳朶に歪んだ情熱を囁きかける。
「佐知子さんは、イヤかな? こんな僕のやりかたは」
「す、好きにしてっ」佐知子が叫ぶ。乳房の苦痛と、肉奥の快楽に身悶えながら。
「いいの、達也くんのしたいようにしてっ」
愛してくれるなら、この悦楽を与えてくれるなら、どんなかたちでもいいから、と。
「好きなようにして、私のこと、どうにでもしてぇっ」
征服され、蹂躙されることの歓喜の中で、佐知子は咆哮した。
着実に深まっている屈服の度合いに達也は満足して。
褒美のように、腰を突き上げ、耳に囁いてやる。
「好きだよ、佐知子さん。愛してる」
「あ……ぁああああああっ」ブルブルと、瘧のような震えが佐知子の全身に走って、
「アアア、達也くんっ、私、もうっ」
切迫した嬌声とともに、ふりたくる臀の蠢きが、ひときわ苛烈になる。
「もう、イキそうなの、佐知子さん?」
「そ、アッ、イク、イっちゃ、イクッ」
「オマ○コ、イっちゃう? 淫乱オマ○コ、キモチよくて、イっちゃうの?」
「うああ、イク、オマ、オマ○コ、イクッ、や、スゴ、アア、イクイクイクッ…」
口移しのまま、卑猥な言葉を吐き散らしながら。絶息を惜しむように
いまわのきわで数瞬を持ち堪えて。
「アアッ、イッ………ク、イクゥッ」
ついに怪鳥のような叫びを迸らせて、断末魔の痙攣に総身を戦慄かせた。
快楽を極めた肉壷が、凄まじいほどに収縮する。
しかし、達也は悠然とそれに耐えて。
いまだ凄絶な絶頂の余韻に震える佐知子の腰を抱えると、深く重い突き上げを見舞った。
「ヒイイイッ」
高みから降りる暇もなく、最奥を抉られた佐知子が裏返った悲鳴を張り上げた。
達也はなおも連続して腰を弾ませて、佐知子を半狂乱に泣き喚かせる。
「アヒッ、ダ、ダメェ、達也、くん、そん、な、すぐ、アアアッ」
「僕は、まだまだだからね。もっともっとキモチよくなっていいんだよ」
「いやあぁっ、おかしく、おかしくなっちゃう、それ、ダメっ、ヒイイッ」
「いいよ、おかしくなっちゃってよ。ほら、佐知子さんの欲張りオマ○コは、こんなに喜んでるじゃないか」
「んああっ、いっ、死ぬ、死んじゃう、アッ、イイッ」
「続けてイってごらんよ。オマ○コ、イっちゃいな」
「アアッ、イク、ま、また、イっちゃう、オ、オマ○コイク、オマ○コ、イっちゃう」
錯乱の中、ほとんど連続した絶頂に佐知子は追い上げられて。
しかし、達也は遂情の気配すら見せずに。
「ああ……ま、まだ…もうダメ……ゆるして、達也くん」
気息奄々たる哀願が、やがて号泣に変わって。
そして、赦しを乞う泣き喚きも、じきに物狂ったような獣声に変化して。
白昼の病室での痴宴は、いつ果てるともなく続いていく……。
−17−
「……どうしたの?」
と、訊いたのは、佐知子である。
いつものように、母子ふたり、差し向かいでの夕食の席。
「え? なに、ママ?」
「なにって……裕樹、なんだか黙りこくってるから」
「あ、うん……ちょっとね」
佐知子の指摘通り、裕樹の口数は極端に少なく、そうであれば、ふたりきりの食卓は、妙にシンとした雰囲気になっていた。
「ちょっと……考えごと」
曖昧に、裕樹は答えた。なにを考えていたかは、言えない。
この数日、裕樹の胸にわだかまって、鬱々たる思いにさせているのは、例の、高本からの“相談ごと”だった。
実際には、相談などとは名ばかりで、単に高本の悪友にまつわるゴシップを聞かされただけだったが。
しかし、所詮は他人事にすぎないその醜聞に、裕樹は自分でも不可解なほどに拘泥してしまっていた。折あるごとに、その見知らぬ母子……自分たちと同年代で境遇もよく似た母子について、思いを巡らせてしまうのだった。
まあ、まったく無関係な立場である裕樹が考えるといったって、そのフシダラな母親への嫌悪と、同い年だという少年への同情を新たにするだけのことで。なんの意味もなく、ただ憂鬱な気分になるだけだとは、わかっているのだけれど。
こうして母と向き合っている時などには、ついつい思い浮かべてしまうのである。
しかし、知らずのうちに、また考えこんでいた問題は、母に打ち明けるには、どうにも微妙すぎることだったし。他所のゴシップを食卓の話題に乗せることもイヤだったから、裕樹は、そんな言い方で誤魔化した。
それは、世間並みの反抗期などとは無縁に、どんなことでも母に話したがり聞かせたがる裕樹にしては、珍しい態度であったのだが。
「そう……」しかし、佐知子はあっさりと納得して。静かな食事を再開する。
「……………」
それで収まったはずなのに。どうにも裕樹はモヤモヤとしたものを感じてしまう。
いつもの、本来の母なら、こんなあやふやな説明で、終わりにはさせないのではなかったろうか、と思う。裕樹の歯切れの悪さを敏感に察知して、もう少し、踏みこんでくるところではないだろうか。
裕樹は緩慢に箸を動かしながら、対面の母の表情をうかがった。
母もまた、黙然と食事を続けている。眼線は裕樹と重ならず、静かな顔色からも感情は読み取れない。
裕樹は、苛立つものを感じる。
最近……母から自分へと向けられる関心が、薄れているような。
いや、それは言い過ぎだろうし、被害妄想になってしまうだろうが。
だが、母と自分が、どうも上手く繋がっていないことは、確かな気がした。
「……………」裕樹は、母の身体へと視線を移した。
いまの佐知子は、ノー・スリーブの部屋着姿で白く柔らかそうな二の腕を剥き出している。
肌がすべやかで、全体にサッパリとした印象を与えるのは、すでにシャワーを使っているからだ。
ここ数日、帰宅後、すぐに汗を流すのを習慣としていた。
裕樹の眼は、窮屈そうに服を押し上げた豊満な胸へと引き寄せられる。
大好きな、ママのオッパイ。しばらく、触れていない。
数日前、裕樹が帰宅すると、母が自室で寝込んでいた日。密かに期待していた蜜事を諦めざるを得なかった。それ以来、母の寝室を訪ねる機会を掴めずにいた。
“少し、疲れが出ただけ”と言った通りに、翌朝には元気な姿に戻った母だったが。
それでは、と早速ネダることには、裕樹は抵抗を感じてしまった。
もう少し時間を置こうと。精一杯の自制を働かせて母の体調への気遣いを示したのだった。
そういうわけで、常の倍くらいの間隔が空いてしまっている。
妙にママとの呼吸が合わないような気がするのも、そのせいかも知れないと裕樹は考える。
真面目にそう思うのである。この母子は、もう半年以上も、そのようにして、互いの結びつきを確認することを繰り返してきたわけだから。
母の肢体を見つめる裕樹の眼に、熱がこもる。裕樹とて、幼いなりに欲望を知る男であり、稚拙で他愛もないものとはいえ、享楽の時間を経験しているわけであるから。
長く、それから遠ざかれば、溜まった欲求は渇望へと育って、身体を熱くもするのだ。
(それに……最近のママ、すごく綺麗なんだよな)
切ないような眼で、佐知子の臈たけた美貌を眺める。
化粧を落とした顔。しかし、素っぴんの肌は、しっとりと潤い、艶々と輝いて。
綺麗、と裕樹は形容した。それは、まったく間違いではないが。
もっと端的には、すごく色っぽくなった、というべきだろう。
裕樹の幼い感覚でさえ感じとれるほどの濃厚なフェロモンを発散する最近の佐知子である。
しかし、そんな母の変化には気づきながら、“何故?”という疑問を裕樹は持たない。
絶対的な信頼、母は自分だけのものだという確信のゆえに、“きっかけ”を勘ぐるような思考を抱かない。
(これで、佐知子の毎日の帰宅が遅くなる、というような状況でもあれば、いくら裕樹でも、疑惑を生じさせたかもしれないが)
ただ裕樹は、母の纏う凄艶な色香に魅入られて。
熱い視線を注ぎ続けた。エッチな期待をこめた顔になっているな、と自覚しながら、それでもいいと思った。ママが、それに気づいてくれて、そして優しく誘ってくれれば……。
しかし。
箸をおいて。ようやく裕樹に眼を合わせた佐知子の口から出たのは、
「裕樹、もういいの?」という、なんの色気もない科白だった。
「あ、う、うん。ごちそうさま…」
「はい。お粗末さま」裕樹からの無言のアピールには、まったく気づくようすもなく。
手早く食器を重ねて、佐知子は立ち上がる。
流しに立って、ふたり分の食器を洗いながら、
「……ねえ。今日も、ママ、お風呂さきしていいかな?」
裕樹に背を向けたまま、佐知子が訊いた。
「えっ? あ……」
母の後ろ姿、スカートの裾から覗いたふくらはぎの肉づきに眼を奪われながら、掛ける言葉を探していた裕樹は、咄嗟には答えられない。
佐知子が、裕樹より先に入浴する。やはり、ここ数日の、小さな変更点。
しかし、たかが風呂の順番程度のことを、すぐには裕樹は承諾できない。
「いい?」
「あ、う、うん…」
それでも、顔を振り向けた母に重ねて求められれば、力なくうなずくしかなかった。
「ありがと」ニコリと笑って。あっという間に片付けを終えた佐知子は、そのまま浴室へ。
「…………」ひっそりと、落胆の息をついた裕樹は、見るともなく時計を見やった。
何故、こんなにガックリきているかといえば、これで、どうやら今夜も母との営みはないことになりそうだからだ。
裕樹より先に風呂を使うようになってから、佐知子の入浴時間は、やたらに長くなった。
たっぷり、一時間以上は浴室にこもって。
そして、入れ替わりに風呂に入った裕樹が出てくる頃には、すでに寝室に引き篭もっているのだった。
それが、この数日の越野家の夜のパターンになっていて。
裕樹が、母のもとを訪れるのに二の足を踏んでいたのは、そんな些細なようで意外と大きな変更のせいでもあった。
「……ママ、気づいてくれなかったのか…」
愚痴が洩れた。かなり露骨に、欲求をあらわしていたつもりなのだが。
だいたい、こんなに間があいてることについて、母のほうでは、どう思っているのだろう?
以前は……そろそろ、今日あたりいいかな? という気持ちになれば、母もすぐに察してくれて、さりげなくサインを返してくれた。だから、“ママ、いいかな?”と、母の寝室で裕樹が尋ねたのは、ほとんどの場合、確認にすぎなかったのだった。
そんな、阿吽の呼吸ともいうべき疎通がなされていることにも、幸福を感じていたのに…。
……やはり、一時間以上が過ぎて。ようやく佐知子が風呂から出た。
ローブの胸元から、艶かしいピンク色に染まった肌を覗かせて、洗い髪の香りを撒き散らしながら現れた姿を、恨めしいような眼で見ながら、入れ違いに、裕樹は脱衣所に入った。
狭い空間は、母の甘い体臭に満たされていて、裕樹は股間に血が集まるのを感じた。
「……もうっ」苛立たしげに、服を脱ぎ捨てていく。
ふと、洗面台に目を止めた。
「また、増えてる」
並べられた化粧瓶。本当の化粧品は、母の寝室の鏡台にあるはずだから、これらは、スキン・ケア用品ということになるのだろうか。裕樹には区別がつかないが。
とにかく、以前は一、二本だけだった瓶が、急に増えている。
母の、長くなった入浴時間は、このせいでもあるのだろう。
何故、母が急に、肌の手入れにやっきになりだしたのか、裕樹にはわからないが。
「ママは、そんなことしなくても、綺麗なのに…」
自分の眼には、昔から、ずっと変わらずにいるように見える母なのに、と。
八つ当たり的に、ブツブツ言いながら、下着を脱ぎおろした。
周囲の甘い香に反応して、小さなペニスは、ピンコ勃ちになっている。
「……でも」
これからなんだよなあ、と。恐るおそるといったていで、浴室のガラス戸を開けた。
「…う」踏み入った浴室の中は、当然ながら、はるかに濃密な臭気が篭っている。
成熟した女体のフェロモンに包まれて、クラクラと眩暈がした。
それは、確かに母の匂いだ。大好きな香り、なによりも心安らぐ…というのは、抱かれて眠るときに嗅いでいたような、ほのかな臭いなれば、いえることで。
こうまで濃厚で生々しいと、ひたすら裕樹の煩悩を擦りたてるだけだった。
ドキドキと鼓動が早くなり、勃起は痛いほどにギンギンになってしまう。
裕樹は、息をつめて、大急ぎで体を洗いはじめた。
……短い入浴時間のわりには、ボーッとノボせた顔で、裕樹は風呂から出た。
濡れた髪のまま、キッチンに向かって。冷たい牛乳を飲んだ。
パジャマの股間が、ピョッコリと突き出している。
あんな状況女のエキスが充満したような密室の中にあって昂ぶりが鎮まるはずもなかった。
それでも。母の臭いの中で、自分の手で欲望を解消してしまおうか、という誘惑を退けて、裕樹は浴室から出てきた。
どうにも、諦められなかったからだ。
「…………」裕樹はキッチンを出ると、暗い廊下を、奥へ、母の部屋へと向かった。
迷いはなかったが、つい忍ぶような足取りになってしまう。
「……ママ?」静かに、母の寝室の前に立って。軽くドアを叩いて、呼んでみた。
返事はない。
しばらく待ってから。裕樹はそっとドアを開けた。
部屋の中は暗かった。
裕樹の来訪を予期して、待ち受けている時の適度な暗さではなくて。
「……………」裕樹は、落胆の息をついた。
灯りを最小限に落とした部屋の中、ベッドの上で、母はすでに眠っていた。
枕に横顔を埋める姿勢で、軽く曲げた両腕を、しどけなく投げ出して。
薄い上掛け越しに、悩ましい身体の曲線を浮かび上がらせて。
「……ママ」その寝姿の艶かしさに吸い寄せられるように、一歩踏みこんで。
もう一度、少し声を高めて、裕樹は呼んだ。
しかし、佐知子は気づかない。
風呂を出てから、それほどの時間が経ってもいないのに。
すでに佐知子は、熟睡に入ってしまっている。よく聞けば、かすかな鼾の音さえさせて、グッスリと眠りこけている。
また一度、嘆息して。それで裕樹は諦めた。
母に迎え入れてもらわなければ、裕樹には、どうしようもない。
ここで、眠る母に襲いかかって無理やり欲望を果たす、というようなことは裕樹には出来ない。考えもしない。
(……よっぽど、疲れてるんだな、ママ)
なにかの事情で、激務が続いているのだろうと慮って、自分を納得させた。
だから、先に入浴を済ませて、早く休むようにしているのだろう、と。
労わりと感謝、そして、わずかな未練に引かれて、裕樹は、ベッドの傍まで忍びよった。
「あまり、無理はしないでね。ママ」眠る母に、そう囁いて。頬にキスした。
「……ん…」
佐知子が、微かな声を洩らす。しかし、裕樹の一瞬の期待に反して、
目覚めることはなく。ただ、口元に、うっすらと笑みを浮かべた。
その幸福そうな寝顔を見たことで満足することにして。裕樹はベッドから離れた。
「……おやすみ、ママ」
満たされなかった欲求の代わりに、ちょっと背伸びした行動で自分を慰めて。
裕樹は静かにドアを閉ざした。
……ベッドの上、幸せな夢にたゆたう佐知子が、小さな寝言を呟いたのは、その直後だったので。
「……つや…く…ん…」愛しげに、誰かの名を呼ぶその声を。
裕樹は聞かなかった。
ナース・ルーム。朝のミーティングの風景。
部下の看護婦たちに指示を与える、佐知子の声が響いている。
それは、毎朝繰り返されてきた、定例の光景。
しかし、場に漂う空気が、以前のそれとは大きく変容していた。
若いナースたちは、揃って、佐知子を注視し、彼女の言葉を静聴しているけれど。
静かさが、研ぎ澄まされたものではなくなっている。
佐知子を見つめる彼女たちの眼に浮かんでいるのは、以前のような信頼と尊敬、憧憬といった心情ではなくて。
猜疑、不信、失望、軽蔑、冷笑……。
個人によって温度差はあっても、いずれ負の感情ばかりだった。
無言のざわめき。澱んだ、重苦しい雰囲気。
そんな中で、佐知子は、淡々と現場統括者としての職務を果たしていく。
平静な…というよりは、平坦な表情。
手にしたカルテから、ほとんど眼線を上げようとはせずに。
さすがに、そのチェックや指示は的確で適切なものだったが。どこか事務的な進行はこれまた、以前のありようとは変わってしまっていた。
「……以上です。他に、なにかありますか?」
かける時間も随分と短縮されて。会合の最後に、佐知子はやっと眼を上げて、居並ぶナースたちを見回した。かたちだけの確認のはずだったのだが。
はい、とひとりが手を上げた。
「…沢木さん?」
「あの、主任に、お聞きしたいんですけど」
沢木と呼ばれた若いナースは、口調は慇懃に、しかし、挑発的に眼を輝かせて、言った。
ミーティング中から、最も剣呑な眼を越野主任に向けていたのが、この娘であり。
皆も、それは知っていたから、ハッと緊張の気配がたつ。
「私たちって、勤務の時は、あまり派手な下着は着けちゃいけないんですよね?私、それで以前に、主任にお叱りを受けたことありますし」
沢木の言葉に、さらに場の緊迫感は強まった。
皆の視線は、忙しく沢井と佐知子とを行き来する。露骨に、佐知子の身体へと向けられる視線も多かった。
「白衣の上から透けてしまうような、派手な色のものは着けないようにって。そういう、御指導でしたよね?」
「……そう…ね」答えた佐知子の声は、低いが落ち着いたものだった。
表情も冷静で、なんら感情をうかがわせなかった。
ただ、カルテを挟んだクリップ・ボードを持つ指には、ギュッと力がこめられて。
「それが…どうかしたかしら?」
わずかに声をはげまして、眼に力をこめて、佐知子は聞き返した。
沢木は、もっと露骨に睨みかえした。
周囲が息をのむ中での、数瞬の睨み合い。それもまた、以前なら考えられなかった
光景だろう。“優しいが、怒ると怖い”とは、越野主任に対する
ナースたちの共通の認識であったから。
「……いえ」
やがて、沢木看護婦が、睨むことを止めて、そう言ったのも、佐知子の眼力に屈したからではなく、隣から腕を引く同輩の掣肘を受け入れただけのことだった。
その証左に、彼女の面に再び浮かんだのは、冷笑であり、
「最近、それを忘れているナースがいるようでしたので。ごく一部にですが。改めて、風紀の徹底を心がけるべきではないかと思いまして」
皮肉たっぷりに、そう言って、まとめたのだった。
「……病室内での行い、とかね」
ボソリ、と。一角から、沢井に同調する呟きが聞こえた。
そんな彼女らを非難の眼で見るナースもいる。ただ困惑してキョロキョロとする者もいる。
しかし、沢木らが、なにを、誰のことを言っているのかは、その場の全員が理解していた。
それを、妄言だと、ゆえなき中傷だと考える者はいなかった。
ナースたちの間でそれはすでに“噂”の域を超えて。暗黙の了解事となっていたのだった。
変貌した越野主任の、“ご乱行”は。
……最初は、他愛もない冗談口であったのだ。
『それにしても、主任、熱心よねえ?』
『ホント。ずーっと、付きっきりだもの』
名家の御曹司、それも、かなりの美形の少年となれば、若いナースたちの関心を引かずにはおかないのに。特別病室の客である宇崎達也とは、ほとんどの者が、接点を持てない。
それが、達也の担当として、唯ひとり、そば近く接する佐知子へと向かった。
無論、誰も、そんなことを本気で疑ってはいなかった。
『ダメですよ、主任。いくらカッコいいコだからって、あんまり親密になっちゃ』
『そうそう。主任、キレイだから、あまり親身に世話してると、彼も、その気になっちゃうかも』
当の佐知子に対して、そんな軽口が出るような。気安い話題だったのだ。
佐知子が、急に入念なメイクで出勤するようになったというニュースに食いついて
『やっぱり!』
『うーん、越野主任も、女だったかあ』
と、大袈裟にハシャいでみせたのも、もうしばらく、この無責任な
(根も葉もない、と誰もが承知している)噂話を楽しもうという気持ちでしかなかった。
まだ、この時点では、彼女たちの、佐知子への信頼は揺るぎがなかったのだ。
しかし。
その後の、佐知子の変貌ぶりは、あまりにも急激で。
『……主任……なんか、本当に感じが変わった?』
そんな言葉は、ひっそりと、憚るように囁かれるようになって。
さらには。
『気づいた? いま、主任が履いてたストッキング、朝履いてたのと違ってたの』
『……髪が乱れるようなことって、なによ? 患者とふたりきりの病室で』
交わされる会話は、どんどん密やかに、しかし熱っぽくなり。
不穏な空気が醸造される中、皆が監視するような眼を佐知子に向けはじめて。
当の佐知子は、周囲の雰囲気にも、向けられる注視にも気づかぬようにあまりにも無防備に、徴候を晒し続けて。
『……私、昨日、検査室に用があって。特別病室の前を通ったんだけど……その時に……』
ついには、そんな情報までが、口伝えされて。
もはや、佐知子の病室内での振る舞いは、まだ目撃はされていない、というだけのことで。
この期におよんでは、どれほど越野主任に心酔する者でも、認めざるをえなかった。
閉ざされた、あの部屋の中で。
絶対にありえないと思っていた事態が、現実に進行中なのだということ。
……重苦しい沈黙がとざす。
対峙するふたりの間を交互していた周囲の視線は、佐知子へと収束して。
皆が、息をつめて、佐知子の反応を待った。
祈るような眼を向ける者も、多かった。
佐知子が、有効な釈明を、すべてが馬鹿げた誤解であったと皆を納得させるような
言葉を聞かせてくれないだろうかと希望して。
それは、はかない望みだ。いまさら、どんな弁明を聞かされても、簡単に納得できるはずもない。
それでも、佐知子自身の口から、なにがしかの言葉が聞きたいと。
しかし。
「………………」能面のように表情を消した佐知子は、しばしの無言のあとに、
「……なにを」と、切り出した声が、ひどく掠れて。咳払いをついて、
「……なにを言いたいのか、よくわからないわ」
素気なく、突き放すような口調で言い直した。それで、話は終わりだというふうに。
一斉に、失望の吐息が洩れる。
佐知子は、そんな部下たちの反応も無視して
「それでは。今日も、よろしくお願いします」
お決まりの号令に声を張って、強引に会合を終わらせてしまう。
お願いします、と、バラバラに復唱したのは、ほんの二、三人だったが。
佐知子は、それにも気をとめることなく、サッと踵をかえした。
足早に部屋を出ていこうとする背姿に、注視が集まる。特に、豊かな尻へと。
「……あんなにクッキリ透けてるのに、わからないんだって」
沢木看護婦が、誰に言うともなく。無論、逃げていく佐知子に聞かせる意図だから、早口に大声で。応えた別のナースも、同様にして、
「にしても、黒のTバックって、どうなの?」
「だよねえ? 透ける透けない以前に、年甲斐もないっつーか」
「必死なんでしょ」さらに、ひとりが加わる。
「若い恋人、逃がさないようにさ」
「若すぎでしょうが。中学生だよ? 息子と同い年だって、いってたじゃん」
「ホント。まっさか、ショタ趣味とはねえ」
……すでに、佐知子は立ち去っているが。
憤懣を吐き出す、若いナースたちの会話は、なおも辛辣さを増しながら続く。
それを止めようとする者も、もういなかった。
−18−
「そりゃあ、バレるよね」達也が笑う。
「ただでさえ、デカくて、目を引くのにさ。その上、下着の線が見えなくて、かたちが、そのまま浮き上がってれば、そりゃあ注目されるよ」
「……ああ、ひどいわ」
「それに、黒だから、ホントに透けちゃうんだな。フフ、すっごくいやらしいよ」
その、いやらしい眺めは、達也の眼前に開陳されている。白衣越しに下着が透けるさま、ではなくて。黒のTバックのショーツが、白い大きな臀に食いこんでいるようすが、そのまま晒されているのだ。
達也の横たわるベッドのそばに、達也に背を向けて立った佐知子の白衣の裾は捲くり上げられていて、大胆な下着を纏ったヒップが、完全に剥き出しになっていた。
Tバックのショーツは、まったく臀肉を覆い隠す役目は果たしていない。
細い布地は、分厚い肉の深い切れ目に食いこんで、キュッと寄りあった双臀の肉を左右に別っている。白い肌に映える煽情的な黒い色といい、豊満な熟れ臀のボリュームを強調して、官能美を際立たせる、淫猥なアクセントに過ぎなかった。
「……恥ずかしいのよ…?……こんな・・・」
こんな年甲斐もない、と、部下たちに揶揄された通りの自覚はあるから、佐知子は羞恥に震える声で訴える。
「恥ずかしいけど……達也くんが、着けろっていうから…」
朱をのぼらせた細首をねじって、達也の顔を見つめる。媚びを滲ませた眼で。
佐知子が言うとおり、無論、すべては達也が指示したことである。
ナースの勤務には、あまりにも不適当な、淫らがましい下着を身に着けているのも。
手間を省くために、パンストではなく腿で止めるタイプのストッキングを履いているのも。
「よく似合ってるよ。すっごく、そそられる」
円く張り出した臀丘を撫でながら、達也は言って、
「佐知子さんは、イヤなの? 無理して、僕に合わせてるってこと?」
「そうじゃ…ないけど……」佐知子の返答は、気弱く尻すぼみになった。
すべて、達也の望んだことだが。強制ではない。
乞われるがままに、佐知子が受け容れてきたということである。
Tバックを履いてる姿が見たい、と強請られれば、その日の帰宅途中にデパートに立ち寄って。顔から火の出るような思いをしながらも、達也の希望通りの、色とデザインの品を買い求めて。
翌日から、それを着けて出勤した。もちろん、はじめて身につける極小の下着、まるで裸の尻タブのうそ寒さに、不安と羞恥を感じながら。
登院して、白衣に着替えれば、突き刺さる周囲の視線に、まさに針のむしろのような居たたまれなさを味わい、懸命に素知らぬふりを装って。
それでも、その恥ずかしい格好を見た達也が、手放しの喜びようを示せば、報われた気分になってしまう。
若いナースたちの嘲笑の言葉は、まったく正しく、佐知子は必死だった。
達也の心を繋ぎとめることだけを、行動原理として。そのために、達也の望むことはなんでも受け入れる気持ちになっている。
達也との関係が齎す、肉と魂の愉悦を貪ることだけが、すべてになって。
それ以外のことは、ボンヤリとぼやけて、遠くなってしまっている。
だから、
「……他のナースたちに…みんなに知られてしまって……私、どうしたらいいの…?」
甘く恨む眼を達也に向けて、口から吐いた嘆きの言葉は、現実の状況に比べればあまりにも危機感が薄かった。とうとう、部下から面と向かって問いつめられたという窮状を達也に知らせたのも、“だから、人目につくことは、謹んでくれ”などというつもりではなくて。
“これほどに、自分は貴方に尽くしているのだ”と、己の忠誠ぶりをアピールする気持ちからだった。
粘っこい眼の色で。自ら白衣の裾を捲くって、尻を剥き出した従順な姿勢で。
淫らな装いに彩られた裸の臀で。
“だから、捨てないでくれ”と、佐知子は媚びている。
「別に、いいじゃない」
軽く、達也は言った。はるか年上の女が見せる従属のようすに満足しながら。
「やましいことなんか、ないんだからさ。僕ら、愛しあってるんだから」
「……………」
以前なら、こんな直截な言葉には、決まって、母子ほども離れた互いの年齢のことを持ち出して、達也の(そして、自分の)熱に水を差そうとした佐知子だったが。
いまは、それを言おうとはしない。年の差に触れることを、忌避していた。
「ま、勤務中にってことだけ、まずいかもしれないけど」
滑らかな臀肌の手触りを愉しみながら、笑い含みに達也は続けた。
「それだって、実際に現場を見られるってことは、ありえないんだからさ。トボけておけば、いいんだよ。今朝みたいにね」
「………あぁ…」
気楽に請け負う達也の科白に、佐知子はつい先刻の窮地を思い出して辛そうに眉を寄せた。
「あとは。もう少し、声を抑えられれば、いいんだろうけどね。佐知子さん、けっこう声が大きくなるからなあ」
「いや、言わないで」羞恥に染まった頬を、泣くように歪めて、佐知子が訴えた。
乱れの中にあるときの激しさは、自覚している。恥ずかしいし、危険だとも思うのだが。
達也に愛されて、至極の快楽にのたうっている最中には、なにも考えられなくなって、堪えきれぬ快楽を、高い叫びや、あられもない痴語にして吐き散らしてしまうのだった。
「達也くんが……達也くんのせいよ」
「そうなの?」
すっとぼけて。達也は、撫でまわしていた佐知子の臀肉を、グッと掴みしめた。
「アッ、そ、そうよ」
ビクリと過敏な反応を示して。条件反射的に、ムチッと張りつめた巨臀を後ろへと突き出しながら、佐知子が上擦った声で言った。
「た、達也くんが、スゴすぎるから、だから、どうしても、声が」
「ああ、そういうことね」
しれっと言い捨てて。達也は、佐知子の臀丘を掴んでいた手を、今度は深い切れ間に挿し入れ、食いこんだ細い布地の上から、アナル周辺を擦りたてた。
「ヒッ、アァッ」
「でも、僕だけかなあ?佐知子さんの、感じやすい、いやらしい体のせいでもあるんじゃないかな」
「アッ、そ、それも、達也くんが、あっ、イッ」
「それも、僕のせい? 納得いかないなあ」わざとらしく、苦笑して、
「じゃあ、やめようか?」
「イヤッ」佐知子の返答は、迅速だった。
「やめないで、続けてっ」
腰の両横で白衣の裾を掴んだ手をグッと握りしめて、プリッと突き出したデカ尻を淫猥にふりたくり、すでに熱と蜜を孕んだ秘裂を、達也の手になすりつけるようにして、求めた。
達也の指が、黒いTバックに沿って、下へと滑った。プックラと盛り上がった女陰を薄布ごしに、スッと刷くように擦る。
「ふ、あっ、イイッ、いいのっ」
途端に鼻から抜ける声が洩れて、白い臀肉がブルブルとわななく。
たった、これだけの愛撫に、ビリビリと快美が突き抜けて。
快楽に免疫のなかった佐知子の爛熟の肉体は、達也が教えこんだ未知の愉悦に完全な中毒状態に陥っている。しかも、この世ならぬ悦楽は、味わうほどに深く強くなるのだった。
これさえあれば、他にはなにもいらない、と。そう思ってしまう。
「本当に、淫乱だなあ、佐知子さんは」
そんな、色ボケした佐知子の状態を、達也は遠慮のない言葉で言い表した。
「あぁん、あなたが、達也くんが、私をこんなにしたのよ」
お決まりになった恨み言を吐いて。達也を見返った佐知子の双眸はドロリと蕩けている。
自分の肉体をこんなふうに変えてしまった若い情人の眼に、はしたなく淫らなさまを晒すことに、こよない愉悦を感じているようだった。
「フフ、可愛いこと、言ってくれるよね」
母親ほどの年の女を思うがままに操る、悪辣な中学生は、平然と笑って。
「でも、今日は、ちょっとマズいんだな」
惜しげもなく、佐知子の秘肉から、手を離してしまった。
「あん、いやぁ、また…」
すでに、達也の嬲り方に馴染まされている佐知子は、“また、焦らすのか”と。
「いやよ、達也くん、意地悪しないで」
甘ったるく鼻を鳴らして、プリプリと剥き身の白い臀をふって。
恥もなければ年甲斐もない媚態で、達也を誘ったが。
「いや、今日はさ…」
発情した熟れメスの醜態を嘲る眼で眺めながら達也はいつもの嬲りではないことを告げる。
「午後から、浩次と高本が来るんだよね」
「……え?」
と、聞き返した佐知子の表情が、硬くなって。淫猥で滑稽な尻踊りも止まった。
「“あれ”以来、ずっと来てなかったでしょ? 久しぶりに見舞いに来たいっていうから」
「そ、そうなの…」
「高本も充分反省したみたいだからさ。今日はキチンと佐知子さんに詫び入れさせるから」
「それは…」
佐知子は捲くっていた白衣の裾を戻して、豊臀を隠しながら、言った。
急に真面目な会話に引き戻されれば、淫らな戯れの中で晒していた破廉恥な姿ではいられない。
いまさらな羞恥に赤面しながら、皺になったスカートを引き伸ばして、達也へと向き直る。
「そのことは…もういいのよ」
「いや、ケジメはつけさせないとね。高本も、ちゃんと謝りたいって言ってるし」
「そう…」そうまで言われれば、高本の謝罪も受けざるをえないが。
「…ねえ、達也くん?」俄かに不安にかられたようすで、佐知子は訊いた。
「私たちのこと、彼らには…?」
「ああ。勿論、なにも言ってないし。これからも教える気はないよ」
キッパリと、達也は言い切った。
「いくら、親友でも。これだけはね?」
佐知子は、安堵の色をあらわにして、深くうなずいた。
達也の友人たちには、決して知られたくなかった。
それは、達也と同年齢である少年たちへの恥の感情もあるが。
なによりも、彼らも、裕樹の同級生であるということが問題だった。
部下のナースたちに対しては、もはや開き直ったようなところもある佐知子だが。
息子の裕樹にだけは達也とのことを隠し通さねばならないという意識を、まだ残している。
「だからね。今日は控えといたほうが、いいと思うんだ。こういうことには鼻がきく連中だから。どんな痕跡を見つけないとも限らないから」
「そう……そうね」
自分も高本らと面会しなければならないということが、佐知子を深く首肯させる。
もし……この数日と同様に、彼らが来るまでの時間を過ごしてしまったら……。
髪も服も乱れて。汗と淫蜜の匂いを染み付かせて。
必ず、少年たちに異変を気取られてしまうだろう。
たとえ、それがなくても、達也との淫楽に耽った直後に、平静を取り繕う自信など佐知子にはなかった。
だから、佐知子は(多少の寂しさを感じながら)、この午前を静かに過ごそうという達也の提案を承諾する気になったのだが。
「……でも」と、そのすぐ後に、達也は言い足したのである。
「なんにもなしってのも、ヒマだし退屈だよねえ?」思わせぶりに。
つまりは、佐知子に配慮したかのようで、その実まったく無意味な提言など
(実際には、高本らは、佐知子と達也の関係の逐一を知っているわけだから)
達也の、ただの気まぐれにすぎないということだったが。
「軽く、戯れるくらいなら、いいかな」
しかし、裏の事情を知らずとも、辻褄の合わないように聞こえる、その言葉を。
佐知子は反論もせず、無言で聞いて。ジッと、意を探るように達也を見た。
「たとえば……」達也が、ベッドの上に投げ出していた両脚を、大きく広げた。
「おしゃぶりしてもらうくらいなら、バレないよね」
「………………」佐知子は無言のまま。
しかし、達也に合わせた眼には、また好色な輝きを浮かべて。
もたげた膝をベッドに乗せると。ゆっくりと、のたくるような動きで。
達也の両脚の間に、身体を伏せていった……。
「スマンかった、です。この通り」
そう言って、高本は、その巨躯を折りたたむようにして、深々と頭を下げた。
病室に来訪するなりの行動である。
緊張して待っていた佐知子が拍子ぬけを感じるほどの、素早さと潔さだった。
「あれから、ずっと謝りたいと思ってたんだけど…」
バツが悪そうに。いかつい顔に神妙な表情。
達也に命じられて渋々、といった気配は微塵もなく。心底、反省しているふうで。
「いいのよ。あの時は、私もきつく言いすぎたし」
そう答える佐知子も、自然に表情が柔らかくなっていた。
「じゃあ、ゆるしてもらえます?」
「ええ、勿論…」
「よかったあ。越野のママさん、優しい」
嬉しそうに笑うと、ゴツイ顔に愛嬌が滲む。少なくとも、達也よりは、よほど年相応な子供らしさを、佐知子の眼に見せるのだが。
しかし、丸めていた背を伸ばして晴々と胸をはると、達也以上に大柄でガッシリとした高本の肉体は、圧し掛かるような威圧感を示して。
気おされた佐知子は、つい横目に達也を見やった。
微笑んで、というよりは、ニヤニヤとふたりの遣り取りを見守っていた達也は、
「仲直りのしるしに、握手してもらえよ、高本」
気楽な調子で、そんなことを言った。
佐知子にすれば、あまり歓迎できない提案だったが。やけに感激した高本が、ゴシゴシと腰元で拭った手を差し出せば、拒むことも出来ない。
おずおずと伸ばした白い繊手が、大きなゴツゴツとした手に握られて。
なにがそんなに嬉しいのか、高本は握った佐知子の手を大きく揺すりながら、ギュッと強い力をこめて。長く、離そうとしなかった。
「オレ、これからは、越野とも仲良くするよ」
熱っぽく、そんなことを約束されても。佐知子には、一概に喜べることでもない。
しつこいほどの握手にも困惑して。
佐知子は、また、頼るような眼を、達也へと向けてしまう。
相変わらず、達也は愉快そうに、佐知子らを眺めている。
その横に立った市村は、静かに観察する眼を、佐知子に注いでいた。
……それでも。
その後、しばし病室にとどまって。
高本や、市村とも、二、三言、会話を交わして。
多少とも打ち解けた雰囲気になったところで、佐知子は病室を後にした。
去りしなに、そっと達也に眼を合わせたのは、“くれぐれも”と秘密の遵守を頼む気持ちであり。達也もまた、目顔で“わかってる”と答えた。
密やかな疎通……と、思っていたのは、出ていった佐知子ひとりで。
気づかぬふりで、無言の会話を、バッチリ視界の隅に捉えていた市村は、佐知子の気配が遠ざかるのを待って、
「……メロメロじゃん。越野ママ」呆れたように、言った。
「フフン、わかるかね?」
「あんなの、事情知らなくたって気づくと思うぜ。なにかっつーと、達也のほうを縋るように見つめちゃってさ」
無論、越野裕樹の母親が、達也に骨抜きにされていることは、達也当人からの報告で、すでに承知していたのだが。実際に会ってみれば、佐知子の屈従ぶりは予想以上だった。
達也は、得意気に笑って、
「……まだ、それほど調教を進めたわけじゃないけどな。ま、見かけによらず、かなりのスキモノだよ、あの女」
「どうやら、そのようだね」悪どい笑みを交わしあって。
そこで、達也と市村は、同時に気づいた。もうひとり、いつもは一番うるさいヤツがおとなしいことに。
高本は、佐知子の手を握っていた、自分の手を臭うことに忙しいようすであった。
たかが握手程度で、どれほど佐知子の香が残るというのか。とにかくも、高本はクンクンと鼻を鳴らして、一心不乱に掌の臭いを嗅いでいる。
「……匂い、するか?」
「する」市村の問いにも、短く、邪魔くさそうに答えて。ひたすら、臭い続ける。
「あ、でも、さっきまで、握らせて咥えさせてたんだけど」
「……グッ・・・」
達也の言葉にはさすがに恍惚としていた顔が引き攣り鼻先にあてていた手を離しかけたが。
しかし高本は、一瞬の逡巡のあと、キッと眦を吊り上げると。
大きく伸ばした舌で、掌をベロリと舐めたのだった。
「うわ……」
「ま、負けた」引きが入るふたりに、高本は、フンと荒い鼻息をついて、
「いまさらじゃん。いつも、宇崎クンの“おさがり”もらってんだから」
何故か、勝ち誇るように言い放った。
「いや、それは、そうだけどさ」
「なに、高本? 今回は、その“おさがり”が回ってくるのが遅いって、また怒ってんの?」
「うんにゃ。それはいいよ、もう」
「ほ?」
「だってさ、それほど宇崎クンが入れこむってことは、越野ママ、かなり味がいいってことだろ?」
「まあ、な。悪かねえよ」
「それを楽しみに待つ、ってか? 高本にしちゃあ、ずいぶん気が長いっつーか」
「だって。いくらせっついたってオレらの言うことなんか聞いてくれないもの、このヒト」
「いやあ、今回は楽しくてさあ」
「だから、いいんよ、それは。もう、好きなだけ、やっちゃって。……どーせ、たいした違いでもないから。いくら、お気に入りだつっても、飽きる時には、アッサリ飽きちゃうんだから、宇崎クンは」
なるほど、と市村も納得した。高本も、よくわかってる、と。
達也を見れば、高本らしからぬ洞察に、ふーん、と感心しているようす。
その態度を見ても、佐知子の篭絡過程ほどの熱を抱いていないことは、明らかだった。
「ま、とにかく、宇崎クンには、飽きるまでヤッてもらって。で、いよいよ、オレらのとこに回ってきたら……」
ギラッと。狂的な欲望の火が高本の眼に宿って、
「待たされた分も、タップリと思い知らせてやるよ。あのエロい身体、ギッタンギッタンにしちゃる」
舌なめずりするように。そう告げた。
(……まったく、災難だよなあ、越野のママさんも)
市村は、同情した。
つい、この間までは、貞淑な寡婦、良き母親として平穏に暮らしていたのだろうに。
宇崎達也、なんて化け物と出逢ってしまったばっかりに。
いまは、息子と同い年の中学生の肉奴隷として、訓致されつつあり。
やがては、その達也にも捨てられて、やはり息子の同級生である不良に下げ渡される運命なのだ。
(悪魔から野獣へ…か)
しかも、その野獣は、長く待たされたために、やたらと張り切っちゃってるのだ。
宣言通り、越野裕樹の母親は、ギッタンギッタンに嬲られることになるだろう。
そして。その頃には、越野裕樹も、自分の母親が、同級生の肉玩具に成り下がったことを知ることになるだろう。真に同情すべきは、佐知子ではなく、裕樹かもしれない。
いずれにしろ、越野家は、母子ふたりきりの家庭は、崩壊することに確定している。
(ひどい話だよな)
そう内心に呟きながら。市村は、その一部始終を見届けるつもりである。
(愉しいなあ……)
ひどい話だから、愉快で、楽しみでならない。
……自分が辞去した後の病室で。自分の身のふりかたについて、勝手に話を進められたり、憐れまれたりしていることなど、無論、つゆほども知らない佐知子である。
病室を出て、ナース・ルームに戻ることには気が重かったのだが。
丁度、婦長からの呼び出しがかかって、ひとまずは、部下たちの猜疑と不信の眼が待つ部屋へは、戻らずにすんだのだった。……婦長の用件も解りきっていたから、折りよく、とも言えないだろうが。
佐知子は、部下たちに対峙した時とは、また別種の緊張と身構えを持って婦長室を訪ねた。
案の定、婦長は、いつにない険しい表情で、佐知子を招じ入れた。
だが、座らせた佐知子と向かいあっても、婦長は、しばし口を開こうとしなかった。
糾明も叱責もせず、ただ、苦い顔で佐知子を見つめた。
それは、無言のうちに怒りを示そうとするのではなくて、言葉を探しあぐねるといったふうだった。
まず、いまだに信じられない、という思いが根底にあった。
越野主任看護婦は、婦長がもっとも信頼し、現場の統括を一任してきた人材である。
それは、単に経験と有能さだけに対する評価ではなかった。成熟した円満な人格、職務への情熱と、強い責任感といった部分が、上からは信任され、下からは信望を受けて、佐知子を、この病院の看護体制において欠くべからざる存在としていたわけである。
それが……。
婦長は、重い溜息をひとつつくと、やっと言葉を発した。気の乗らない口調で。
「……他のナースたちから、いろいろ、申し立てが来ているのだけれど。最近の、あなたの勤務態度について」
「誤解です」
簡潔に、佐知子は答えた。眼を伏せて、その美しい面には、なんの感情も見せずに。
「私は、現在の務めを果たしているだけです。責められるような行いは、なにも」
やはり感情のこもらぬ声で、台本を読むように。
「………………」婦長は、また無言で佐知子を見つめた。
最初のうち、ポツポツとナースたちから注進が届きはじめた頃には、婦長も、そう思っていたのだ。佐知子の精勤ぶりが、あらぬ誤解を生んでいるだけのことだと。
しかし、いまとなっては、婦長も認めざるをえない。事実を。
佐知子の異常を伝える多数の証言、裏づけをとるまでもなく。
いま眼の前に座る佐知子の、まるで別人のように変わりはてた雰囲気が雄弁に物語っていた。彼女の内に起こった、好ましからざる変化を。
…・・・視線を佐知子の面から身体へと移す。
相変わらず、キッチリと纏っている……はずの白衣が、どこかしどけなく見えるのは、先入観のゆえだろうか? だが、豊かな胸元に、下着の色が浮き上がっているのは気のせいではない。座っているから、腰元はうかがえないが。
“すべて誤解だというなら、その下着は、なんなの?”とは、婦長は問わずに。
「……宇崎家から」代わりに口にしたのは、そんな言葉だった。
「こちらの対応について、非常に満足していると。そのように言ってきたそうよ」
事務的に話そうとしても、どうしても苦いものが混ざってしまう。
つまり、“現状維持”で“口出し無用”という通告である。
当然ながら、病院側は、全面的にその意向に沿う方針だった。
「担当の先生の診断では、あと一週間ほどで退院できるだろうということです。それまで……引き続き、あなたに担当してもらいます」
「……はい」なんのことはない、それだけの用件である。
ハナから、婦長は佐知子を糾明する気などなかった(出来ない)わけであり、最初にかたちだけ説明を求めて、佐知子の素っ気ない否定を聞くだけで話を打ち切ってしまったのも、そのような次第からだった。
婦長は、疲れたように、深く椅子にもたれると、
「……若いナースでは、万が一の間違いもありうるかと思って。それもあなたを担当にした理由のひとつだったのだけど……」
独りごとのように、呟いた。
結局、そんな心情を聞かせるために、佐知子を呼びつけたのだった。
立場としては、佐知子と宇崎達也の関係を追及はできないが。
信頼していた部下に裏切られた上司としての感情をぶつけるために。
……それで、佐知子が迷妄から覚めてくれないものかという、希望もこめて。
だが。
相変わらず、氷のような無表情を保つ佐知子の胸の内を知ったならば、婦長は、あらためて絶望することになっただろう。
佐知子は、わずかに項垂れて、慫慂として、婦長の言葉を聞いていた。
それは演技した態度ではない。
婦長の心情は理解できたし、その嘆きには胸を痛めてもいる。
悲嘆され、失望されても仕方のない、いまの自分だということも自覚できたが。
けれど……と、思ってしまうのだ。いまの佐知子は。
しょうがないではないか、と。
知ってしまったのだから、自分は。
女として生きていくうえでの、最大の喜び。唯一無二の幸福。
逞しい、力に満ちた牡に愛され貪られることの、肉と魂の歓悦を、この身体の奥深く、刻みこまれてしまったのだから。
他のなによりも、その悦びを優先させてしまうのも、無理もないことではないか、と。
開き直るという意識すらなく。ごく自然に、そんな思いをわかせてしまうのだった。
佐知子は、上目づかいに、そっと婦長をうかがった。
佐知子より、十歳ほど年長の上司だが、整った顔立ちにも、すらりとした痩身にもまだ女らしさを残している。当然、既婚者で、夫も健在、すでに成人した子供もいたはずだ。
(……でも、このひとは知らないのだ)
つい先日までの自分が、知らなかったように。
本当の、女の悦び、真の快楽というものを、知らないのだと決めつける。
だって、達也のような素晴らしい牡が、そうはいるはずがないから。
……ああ、だから、誰も私の変化を理解できないのだな、と悟った。
それが、どれほどに深い悦楽であるか。実際に味わった者にしか……。
「……越野さん?」
怪訝そうに、婦長は呼んだ。重たい沈黙の中で対峙していたはずの佐知子の気配が変わったことに気づいて。
……まさか、こんな場面でさえ、佐知子が愛欲の記憶に血肉を熱くしているとは。
そして、そんな愉悦の記憶を持つことに、優越を感じているなどとは、想像できようはずもなかったが。
それでも、静かに見つめかえす佐知子の濡れた瞳の底に蠢く、得体の知れぬ情感には。
ゾクリと、背筋を寒くせずにはいられなかった。
−19−
……愚かしい幸福に、頭の天辺まで浸りこんだ佐知子の妖しさは、婦長を戦慄させたが。
達也が−そんな変貌を佐知子に齎した魔物的な少年が、その遣り取りを見ていたら、ただ冷笑したことだろう。“色ボケ”と簡単に、しかし正確に佐知子の現在の状態を言い表して。
実際この時、佐知子のいない病室で、三人の悪ガキどもは、まだ彼女を肴にして笑っていたのだった。
「おお、これが」
大袈裟に反応して、高本は、達也が引っ張り出してきた品物を手にとった。
「これが、越野ママが、プロポーズに使ったコンドームですかい」
高く掲げて見せた、小さな四角形は、特徴もない安物の避妊具だったが。
高本が口にした由来、“佐知子が、達也への意志表示として渡した”といういきさつで、彼らにとっては、お宝になるのだった。
「そうだよ。いい年こいて、小娘みたいに真っ赤っかになってさ。震える声で“こ、これを…”とか言いながら手渡された、ありがたい一品ですよ」
「ギャハッ、越野ママ、プリチーじゃん」
「まあな。さすがの俺も、驚いた。こう来るとは、思わなかったからな」
「達也は、こんなもの、使ったことないからだろ」
「そうね」
「やっぱ、ナマだよねえ」
「いまじゃ、佐知子のほうが、中出ししてもらわにゃ満足できなくなってっから」
「うひょ、やっぱ淫乱なんだな、越野ママ」
「とびきり、だよ。子宮に、たっぷりブっかけてやった時のあの女の顔。マジ、エロいぞ」
「ああ、もう……どうして、そう煽ってくれるかなあ、宇崎クン」
股間をおさえて身悶える高本を笑って。
「……どうした? 浩次」
市村は、高本からまわってきた“佐知子のコンドーム”を手にして何事か考えこんでいた。
「これ……どうしたのかと思ってさ」
「は?」
「どうした、って。買ったんじゃない?」しごく真っ当な答えを口にする高本。
「宇崎クンに、ハメてほしい一心でさ。慌てて、買いにいったんじゃん?」
「……やっぱり、そうなのかな」
「なにが言いたい? 浩次」うーん、と市村は、軽く唸って、
「高本の言うとおり、達也に渡すために買い求めたのかもしれない。あるいは……もともと、持ってたのかもしれない」
当たり前といえば当たり前なことを言った。
「もともと……亭主が生きてた頃に、使ってたものだってか?」
「でも、それって、十年も前だろ? 賞味期限、切れてんじゃん?」
「賞味期限、て」
「……死んだ亭主の使い残しかもしれないし、そうでないかもしれない」
また、曖昧な言葉を市村が口にして。
ようやく、達也の眼に理解の色が浮かんだ。
「つまり、使うあてがあって、常備してたってか?」
市村の言わんとすることを、理解はしたが。
「いやあ……そんな感じじゃなかったけどなあ、あの女は」承服できずに首をひねった。
篭絡過程で佐知子が見せた、年甲斐もなくウブな反応の数々は、独り身をいいことに適当に遊んできた女のものとは、到底思えなかった。
「身体もさ、熟れてるけど、てんで開発されてなかったし」
そう言うと。市村は、ああ、と頷いて、
「俺も、男がいたとは思わないんだけど」
「はあ? なにそれ」と、高本も、わけがわからんといった顔で、
「被せるチ○ポもないのに、ゴムなんか用意してたって、意味ないじゃん」
「いや。チ○ポなら、あるんだよな」
「へ?」
「多分、まだ未発達な、子供のチ○ポが一本。あることは、ある」
「それって……」
「間違っても、妊娠だけはヤバいから、そりゃあ、避妊にも神経質になるだろうってのが」
「……マジですか?」シン、とした空気になった。
「ま、憶測だけどね。俺の」
「根拠は?」
と、達也が聞いた。市村の想像を、笑い飛ばす気はないようだった。
「根拠ってほどのものは、ないな。越野裕樹と話したとき、母親のことに触れると、やたら過敏っていうか。妙な反応だなって感じたのを、思い出した」
ヒラヒラと、指先に摘んだコンドームをふって、
「これを見たら、思い出して。そう考えれば、辻褄が合う気がした。それだけ」
「や、でもさあ、あれは、越野がマザコン野郎だからじゃん?」
「マザコンだから、そういうことにもなりうるんだろ。マザコンの息子と、甘い母親って組み合わせだと」
「でもさあ……キンシンソーカンって、やつだよね?それ」
「まあ、それほど珍しくもないんじゃん?…って、あくまでも俺の想像だけど」
「…………確かめてみる価値は、あるな」達也が言った。かなり、気を引かれたようすで。
「それで。もし、浩次の推測のとおりだったら…」
ニヤリと。酷薄な笑みに口の端を歪めて。
「そんな重大な秘密を隠してた、淫売ママさんには。タップリと仕置きして、矯正してやらなきゃいかんと。そう思わないか?」
……その夜。越野家。
裕樹は、静かに開いたドアの隙間から、脱衣所へと入りこんだ。
中は明るく、浴室からはシャワーの音が聞こえている。
無論、風呂を使っているのは佐知子でありくもりガラス越しにボヤけた肌色の影が見えた。
それに急かれたように、裕樹は慌しくシャツとブリーフを脱ぎ捨てた。
他の着衣は、居間で脱いできてあった。
華奢な裸身をさらして、忍び足にガラス戸へと近づく。
例のごとく狭い空間を満たした母の甘い匂いと、ガラス越しに見える肢体、なによりも、これからの行為への期待に、小さなペニスは固く屹立していた。
音を立てぬように、慎重に浴室の戸を開ける。
床を打つ水音が大きくなり、熱気が溢れてきた。
そして、湯気の向こうに、白く豊艶な母の裸身。滑らかな背中と豊かな臀をこちらに向けて、熱いシャワーを浴びているところの。
明るい照明の下に濡れ輝く、グラマラスな肉体の官能美に打たれて、自制をなくした裕樹は、飛びかかるように抱きついていった。
「キャアッ!?」魂消た悲鳴を上げて、咄嗟に侵入者を振り解こうと身もがく佐知子。
「な、なにっ? ……裕樹…?」
ようやく、背後から抱きついているのが息子だと気づいて、ホッと安堵の息をつき、力を抜いた。
「もう…ビックリするじゃない、いきなり。どうしたの?」
問い質す言葉は、つい難詰する調子になってしまった。
事前に了解されていた行動ではなかったから、無理はないところである。
裕樹は、母の胴にまわした両腕にギュッと力をこめて。
濡れた背に頬を擦り寄せるようにする。
「ちょっ、裕樹ってば、いったい…」
頑是無い、といった態度に困惑しながら、佐知子は、ひとまずシャワーを止めて。
体をねじって、後ろにまわした腕で、ピッタリと貼りついた
裕樹の小さな体を抱くようにして。
「ねえ、裕樹、どうしたの?突然、こんなこと」声を優しくして、また訊いた。
「……ママ…」
やっと顔を上げて、裕樹は潤んだ眼を母に合わせて、切ない声で呼んだ。
悶えるように腰を擦り寄せて、未熟な勃起の先端を、佐知子の柔らかな太腿に押しつけた。
「……あ…」
「僕、もう我慢できないよ、ママ」切迫した声で、裕樹は訴えた。
これまでにない強引なアプローチは、裕樹自身にしても突発的な行動であった。
夕食後、今日も佐知子が先に入浴して。また、今夜もおあずけになるのかとやきもきするうちに、我慢できなくなったのだった。
「……裕樹…」溜めこんだ欲求に衝かれる裕樹の苦しみは、佐知子にも伝わった。
しがみついて、切ない眼で見上げてくる表情に、胸を締めつけられる。
それは、ここ最近忘れていた、母としての感情だった。
「……したいの…?」裕樹の薄い背を撫でながら、柔らかく尋ねる。
いまさらな問いかけに、裕樹は強く肯いて、
「したいよ。だって、ずっと、してないじゃないか」恨むように拗ねるようにそう言った。
「そう…? そう…ね…」
言われて気づいた。息子との房事から、しばらく遠ざかっていたことに。
それどころではなかった、というのが率直なところだった。
日々、病室で達也との淫戯に耽溺して。家に帰るときには、全身に、激しい情事の痕跡とグッタリとした疲労を残しているのが常だった。
裕樹に気取られぬように、帰宅後すぐにシャワーを使って。
夕食の用意。母親としての仕事をこなす。(食卓に並ぶ料理には出来あいの惣菜の割合が増えつつあったが)
食事のあとの本格的な入浴の時間が長くなったのも、昼間の達也との行為のゆえだった。
ゆっくりと湯につかって、全身の肉を揉みほぐす。
心地よい疲弊と甘い痺れを肉体に刻みこんだ若い情人のことを、彼との濃密な時間を、うっとりと思い返しながら。
そうして。その日の達也との記憶を夢心地にふりかえった後は、翌日に備えるための作業が待っているのだ。
全身を徹底的に洗い清め、磨きたてる。達也に揉まれた乳房も、達也に吸われた首も、達也に撫でられた腹も、達也の眼前で踊りくねらせた腰も狂ったようにふりたくった尻も、達也の身体を締めつけた太腿、達也の肉体を愛撫した指先から、足の爪先まで。
無論、達也を迎え入れ、大量に欲望を注ぎこまれた部分は、特に念入りに。
佐知子は一心に磨きあげる。明日も、また同じように、達也の手に触れてもらえるように。
その思いで、清めた身体に念入りな手入れを。高額なスキン・ケア用品をいくつも買い求めて、効果を比べながら。
幸い、肌の調子は好調で、数年も若返ったような張りとつやを取り戻している。
これも、身も心も満たされているせいかと幸福な満足を感じながらも、なおも細心の注意を払って、衰えの徴候を拭いさる作業に没頭して。
ようやく。長い入浴タイムが終わる頃には、佐知子はクタクタになって早く眠りにつくことだけを求める状態になっているのだが、それでいいのだ。
明くる日にもまた、疲れを知らぬ若い牡に立ち向かうために、充分な休息が必要だから…。
……それが、ここ最近の、佐知子の夜の生活パターンだった。
裕樹との相姦の秘め事が入りこむ余地など、どこにもなく、久しく、それから遠ざかっていることさえ、佐知子は意識に上らせなかった。
つまりは、すっかり忘れていたということであり、それを自覚すると、
「僕、ずっとしたかったのに。ママ、いつもさっさと寝ちゃうから」
甘ったれた口調で訴える裕樹に、すまないことをしていたという思いがわいて。
「ごめんね」佐知子は、そう謝りながら、裕樹の背にまわした腕に力をこめた。
達也との関係が生じてからは、秘密を隠す対象としてしか意識していなかった我が子への母性愛を呼び起こされて。
「ごめんなさい、ママ、最近疲れていたから」
身体を回して、裕樹と向き合うかたちになる。
裕樹は、重たげに揺れながら眼の前に現れた、ママの懐かしい大きなオッパイに、視線を吸い寄せられながら、
「う、うん。ママ、仕事が大変なんだなって、それは解ってるんだけど…」
少し、すまなそうに言った。
「…………」
そのあたり、佐知子にとっても都合のよくない話には、それ以上言及せずに。
佐知子は、目線を下へと移した。
「……こんなにして」
幼いなりに、精一杯に欲望を主張する勃起を見つけて、自然に手が伸びた。
「あっ、マ、ママッ」
「フフッ」
母の柔らかな手指にペニスを握られる、しばらくぶりの刺激に、ビクビクと華奢な腰をわななかせて、悲鳴のような声を上げる裕樹。
その可憐な風情に眼を細めながら、佐知子はゆっくりと膝を落とした。
指をからめた、未熟な屹立を正面から眺めることになる。こんな明るさの中でマジマジと見つめることは、これまでほとんどなかった。
「……裕樹、少し、オチンチン大きくなった?」
そのせいか、裕樹の溜めこんだ欲求のせいなのか、いつもより大きく見えた。
「そ、そうかな?」
歯を食いしばって、滑らかな母の掌の感触に耐えながら、それでも少し誇らしげに裕樹は聞き返した。
「成長期だものね……」息子の成長を喜びながら。
しかし……それでも、達也とは、まるで違うと。佐知子は、どうしても比べてしまう。
発育の差、などとは到底片づけられない、もっと厳然たる差異。
大きさも形も、熱さ硬さ、それから伝わる精気も。すべてが、あまりにもかけ離れていて、同じ器官とも思えないほどだ。
間違っても、いま裕樹のオチンチンを見て感じるような“可愛い”などという感慨など持ちようもない、達也の肉体である。
いつも、その怖いほどの逞しさと、肉の凶器といった姿形を見せられただけで、甘い屈服の感情に包まれてしまう佐知子である。
(……仕方がないわ。達也くんは、特別だから……)
との述懐は、裕樹を庇うようにも聞こえたが。
しかし、そう呟いた佐知子の胸にわいていたのは、まぎれもない誇らしさであった。
“特別な牡”である達也、その達也の女である自分を誇る感情が。
いまは、母として裕樹に向き合っていたはずの佐知子の心を、ズルリと浸蝕して。
佐知子の双眸はボヤけて、裕樹の屹立を握った手が淫猥な蠢きを見せる。
爪の先で、包皮が寄り集まった小さなカリの付け根を掻くように弄って。
先走りを噴きこぼす鈴口を、くすぐる。
身につけたばかりの巧緻。軽い戯れの愛技。
「ああっ、マ、ママッ」
しかし、この時、佐知子の手の中にあったのは、どんな熱烈な愛撫にも平然と持ちこたえる、不死身の肉鉄ではなかった。
それでなくても、鬱積した欲望に逸り、いつもと違う状況で眺める母の濡れた裸体の艶かしさに昂ぶっていた裕樹は、突然の鋭い刺激には耐えられなかった。
「アアッ、で、出ちゃうよッ」
そう叫んだ瞬間には、すでにビクビクと震えるペニスの先端からは、第一波が噴き上がっていた。
「…えっ?」
「あ、出る、出るッ、アアァ」
虚をつかれたような声を上げて、佐知子は慌てて裕樹の亀頭から指を離し把握を緩めたが。
堰を切られた奔流は、なおも連続してビュクビュクと弾け出して、被せるようなかたちになっていた佐知子の掌を打った。
「…アッ…ああ……」
噴出を終えると、裕樹は感に堪えた声を洩らして、脱力する。
ベタッと尻もちをつく姿勢で、ヘタりこんでしまった。
「……もう、出しちゃったの?」
まだ、呆気にとられたまま、佐知子が訊いたが。
現に、佐知子の片手は裕樹の吐き出した欲望にベットリと汚れているのだから、
確認にしかならない。
「うん……だって、ママ、すごくキモチいいところに触るんだもん」
遂情の余韻に浸って、陶然と答える裕樹。
「それだからって…」
軽く嘆息して。佐知子は、後ろ手をついて、細い両肢を広げて、グッタリと虚脱のさまをあらわにする息子を眺めた。
「だらしないのねえ……」
そんな言葉が洩れた。軽い調子、責めるような物言いではなかったが。
しかし、呆れの感情は、確かにこめられていた。
「…えっ?」
思いがけぬ母の科白に、裕樹が目を見開く。そんなこと、いままで一度も言われたことがなく。だから、呆気ない行為にも、恥ずかしさなど感じたこともない裕樹だったから。
佐知子は、裕樹の驚きには答えることなく、悩ましく腰をよじって、手桶に浴槽の湯を汲むと、まずは自分の手にかかった裕樹の吐精を洗い流して。
それから、裕樹の股座を清めた。ゆっくりと湯をかけながら、這わせた手で、しぼんだ性器や薄い陰毛にこびりついた白濁を落とした。
その手つきは優しくて、過敏になっているペニスに感じるジンワリとした刺激に裕樹は喉を鳴らしたのだが。
「……そんなんじゃ、彼女が出来ても、喜ばせてあげられないわよ」
笑い含みに告げられた言葉に、また吃驚して、母の顔を見やった。
佐知子は、いたずらっぽい笑みを浮かべて、からかうような色を瞳に浮かべて裕樹を見ていた。その顔を見れば、他愛もない冗談なのだとわかるが。
それでも、裕樹には心外だった。
彼女や恋人なんか、ほしいとも思わない。誰よりも優しくて綺麗なママさえいればいい。
いつまでもママといられれば、それでいい。
心の底から、そう願っている裕樹であり。
その思いはママもわかってくれているはずなのに。自分と同じ思いを抱いてくれてると信じているのに。
冗談や軽口にしたって、そんなことを言うなんて、と。
(……いままでは、こんなこと言ったことないのにな、ママ)
そう考えて、不機嫌になって。
しかし裕樹は、それが、母に生じた変化の徴候であるとは気づけない。
これまで決して口にしたことのない裕樹の脆弱さを揶揄する科白を、ポロリとこぼしてしまうあたりに、佐知子の意識の豹変ぶりが覗いていたなどとは。
母に向ける裕樹の信頼は絶対だから、疑心などというものは、兆しもしない。
だから、ここでも裕樹は、単に不注意な母の物言いに不快を感じただけで。
その不機嫌さも。
ザッと裕樹の股間を流したあとに、スポンジにソープを泡立てて、
「さ、座って」腰かけを差し出して、そう促した母の態度に、ウヤムヤにされて。
「そういえば、裕樹と一緒にお風呂に入るのも、久しぶりね」
そんな佐知子の言葉に、奇妙な照れくささと嬉しさを喚起されて、優しく身体を洗われれば、その心地よさに浸りこんでしまう。
佐知子も、まだ共に入浴していた頃のことを(といっても、それほど昔でもないのだが)思い出してか、愉しげに、いかにも母親らしい甲斐甲斐しさで背中だけでなく、胸や腹も流していった。
母子みずいらず、という打ち解けた雰囲気が嬉しくて、
「……こらっ」
「ウフフ…」裕樹は、眼の前で揺れる母の豊満な乳房に手を伸ばして、叱られる。
いまは欲望は薄れているから、じゃれかかるように大好きなママのオッパイを触って。
馴染みの柔らかな感触を掌に味わって楽しむ。
「もう…」
佐知子は呆れるような声を洩らして。だが、それだけで、息子の甘えかかるような乳房への玩弄をゆるした。
ソープの泡をまぶしながら丁寧に擦りたてる母の手に、されるがままに任せていると、裕樹も幼い頃に戻ったような気持ちになって。
ママのオッパイを掴みしめる手の表情も、無邪気なものとなる。
「ヘヘ…」
大きくて、あくまでも柔らかな肉房に指を沈めるだけで、自然に笑いがこみ上げてしまう。
「本当にもう……赤ちゃんみたいね。オッパイばっかり」
佐知子が苦笑する。赤ちゃん、という言い方は、ちょっと気にさわったが“まあ、今はいいか”と裕樹は流して。それならと、もう一方の手も母の胸へと伸ばしかけたのだが、
「ほうらっ。ダメよ、洗えないでしょ」
その腕は佐知子に捉えられて、ゴシゴシと磨かれていく。
……と、佐知子は、裕樹の二の腕の細さを確かめるように握って、
「……裕樹も、なにか運動すれば、少しは逞しくなるかもね」ふと、呟いた。
「……えっ…?」裕樹は、ショックを受けた顔で母を見た。
身体の成長が遅れていることは、常々裕樹が気に病んでいることであり。
その慨嘆を洩らすたびに、心配ないと元気づけてくれていた母なのに……。
「……ママは、逞しいほうが、いいの?」
硬い声で訊かれて、今度は佐知子があっと慌てた表情になる。
「そ、そんなことじゃないのよ」
迂闊な言葉を洩らしてしまったことに気づいて、急ぎフォロウする。
笑顔が引き攣ったのは、裕樹の問いかけのかたちに、ヒヤリとさせられたせいだったが。
しかし、子供っぽく口を尖らせた裕樹は、佐知子の意識を読んで、あんな訊きかたをしたわけではないようだった。佐知子の述懐が、誰か特定の人物と裕樹をつい比較してしまったためのものであったとは、気づいていなかった。
「大丈夫よ。裕樹だって、そのうち、ちゃんと大きくなるわ」
意識して声を明るくして、佐知子はお決まりの慰めを口にしたが。
「…………」そうスンナリとは屈託を消せないようすの裕樹を見て取ると、
「ほら、ここだって…」佐知子は、やおら手を伸ばして、裕樹のペニスを掴んだ。
「あっ」
「ちゃんと、成長してるんでしょ?」
…いまは、チンマリと縮こまって、先っぽまでスッポリ皮を被った可愛いオチンチンには、あまり真実味のある評価とも思えなかったが。
佐知子は、短い胴部に掌の泡を塗りこめるようにしながら、指先でズルリと包皮を引き剥いた。不都合な会話を、うやむやに誤魔化そうとする強引な振る舞いだったが。
「アッ、アアッ」
過敏な先端部に、ヌルヌルとした石鹸のぬめりをまぶした母の手指の感触を受けて。
裕樹は可憐な声を上げて、ビクビクと腰をわななかせた。
鋭どい刺激に気を奪われて……つまりは、他愛もなく誤魔化されてしまったわけである。
ぬめる手に弄われるペニスには、ジンワリと力が蘇ってくる。“ムクムクと”とか“急速に”とはいかないが。それでも、母との閨房でも、いつも一度欲望を遂げればすぐに眠りに落ちてしまう裕樹にすれば、稀有な現象だった。
しかし、裕樹が、もっとハッキリとした復活の兆しを見せる前に、佐知子は手を離してしまった。
「……あ…」
強すぎる感覚が途絶えると、裕樹は、ホッと安堵するような、物足りないような、あやふやな気分になった。
佐知子は立ち上がって、シャワーのノズルを取った。
座った裕樹の眼前に、母の豊満な下肢の肉置。濡れて色を濃くした恥毛に縁取られた小高いデルタに視線が吸い寄せられる。
そんなことは気にもとめずに、佐知子は、シャワーの水流を自分の手にあてて温度を確認すると、またしゃがみこんで、
「はい、流すわよ」
「……うん…」
快適な熱さの湯流と佐知子の手によって、全身の泡を洗い落とされながら。
裕樹の眼は、母の、重たげに揺れる乳房や、片膝立ちの姿勢でムッチリとした量感を強調する太腿、
その付け根の秘めやかな部分を、舐めるように眺めた。はっきりと、情欲の色をたたえて。
……チンチンが、ムズムズした。
……湯船につかって。裕樹は母の背姿を見つめている。
きれいに石鹸を流した裕樹を湯に入らせて、佐知子は、今度は自分の身体を洗っていた。
片肘を上げて、脇腹をスポンジで擦っている母の、かすかに浮き上がった肩甲骨が妙に艶かしくて、裕樹は眼を引きつけられる。
考えてみれば、このように母の裸を後ろから眺めたことなど、ほとんどなかった。
寝室では、いつも抱き合うかたちで睦みあっていたから。
母の滑らかな背中、円い巨きな臀(腰かけがやけに小さく心許なく見えた)
髪をタオルで巻いて露にしているうなじ……。
それら、すべての景色が、息苦しいような昂ぶりを喚起する。
湯の中で、ペニスは、ほぼ完全な勃起状態を取り戻していた。
さっき、出したばかりなのに……と、裕樹自身も驚きを感じている。
いつもより長いブランクのせいもあるだろうし、暗い寝室ではなく明るい浴室でという環境の違いのせいでもあろう。
しかし、それだけではないのだ。
母の、ぬめ輝く白い裸身を凝視する裕樹の眼には、牡の欲望が燃えていた。
……最前、佐知子が口にした、裕樹の“成長”は、なにやら弁解がましかったり、あまり信用できない評価であったが。
しかし、確かに裕樹は、そのような時期にあり、ゆっくりとではあっても、日々、育っているのだ。いろいろな部分が…たとえば、牡としての本能が。
これまで、裕樹にとっては相姦という禁忌の行為も母に甘えることの延長でしかなかった。
しゃぶりつく乳房の甘味も、拙いセックスの快美も、すべてが、母を求め、母から与えられるものを貪る、ということだった。
しかし、いま、裕樹の中に、ようやく育ちはじめた牡は、目の前の豊艶な肉体を別の情感を持って見つめる。
女。熟れた豊満な肢体の。欲望をそそる女。
それは、“大好きなママ”であることと、少しも相反しない。
(……そう。ママは、綺麗で、色っぽくて……)
……息子の、これまでとは違った熱い視線にも気づかないのか。
佐知子は、一心に、その美しい体を磨きたてている。
母子の気安さか、その動きには遠慮がなくて。
腰かけに乗せた豊臀を片側づつ浮かせては、スポンジを這わせた。
その無防備なしぐさ、たわむ臀肉、深い切れこみの奥にチラリと覗けた暗い淫裂。
「……………」
裕樹は固い唾を呑み下すと、湯を弾きながら立ち上がった。
「……裕樹?」気配に、佐知子が振り向く。
「背中、流してあげるよ、ママ」
「え、そう? ありがと…」
妙に固い裕樹の声に違和感を覚えながらも、臀を磨いていた手を後ろにまわして、スポンジを渡そうとする佐知子だったが。
自分から申し出ておきながら、裕樹はそれを受け取ろうともせずに。
いきなり、佐知子の背に抱きついていった。
「キャッ、ちょ、裕樹?」
「……ママ…」
昂ぶりに掠れた声で呼んで、裕樹は佐知子の腋からまわした腕に力をこめる。
これでは、浴室に闖入してきた時と同じである。立っているか座っているかの違いだけで。芸がない、ともいえる。
たとえば……ひとまずは、母からボディ・スポンジを受け取って、だ。
言ったとおりに、背中を流してあげながら、さりげなく身体に触れて。
『あ、手がすべっちゃった』なんてことをヌカしながら、徐々に戯れかかっていくというような遣り口は……。
まあ、裕樹には望むべくもない。考えもしない。
ただ、ひしと母にしがみついて、うなじに頬を擦りつける。
「ちょっと、裕樹ったら」
困惑する佐知子が体を前に倒すと、背中に貼りついた裕樹は、母の上にのしかかるような体勢になって。小ぶりな勃起の先端が、石鹸の泡をつけた母の臀肌に滑った。
「アッア…ママッ…」
刺激にあえいで。しかし、こんな体勢になっても、裕樹は、このまま強引に欲望を果たそうなどとはしない。
母に許され迎えられるかたちでしか繋がることが出来ない。
その身の内の“牡”を育てつつあるとは言っても、所詮は、その程度だった。
「…あっ…」臀肌にあたる硬い感触に、佐知子は、息子の欲求を理解した。
「…まだ、したいの?」首をねじって、間近にある裕樹の顔を見ながら訊いた。
少し驚いたような表情は、やはり裕樹の常にない欲望の強さが意外だったのだろう。
「したいよ。さっきは、ちゃんとしてないし」
ちゃんともなにも、軽く手コキされただけで暴発してしまったわけだが。
裕樹は完全に復活したペニスを、母の柔らかな臀肉に押しつけて、情交をねだった。
「……いいわ」佐知子は、うなずいた。
「でも、ここじゃダメよ。ママの部屋にいきましょう」
タイミングがよかった、といえるだろう。裕樹にとっては。
長い無沙汰に我慢できずに、入浴中のママを襲撃したのが、この日であったことは。
この日の佐知子には、裕樹の求めに応えるだけの余力があった。
この昼間は、高本と市村の病室への来訪があったために、佐知子は一度も達也に抱かれていなかった。午前中に軽く戯れた(口舌に達也の肉体を味わって精を飲んだ)だけで、午後は、高本らが結局夕方まで居座ったために、ほとんど病室に近寄ることも出来なかった。
これが一日早ければ、昼の達也との激しい情事にグッタリと疲弊した佐知子は、とても裕樹の求めに応えるどころではなくて、すげなく追い返していただろう。
そして、一日遅ければ。やはり裕樹は拒まれることになったのだが。大きな状況の変化と、やはり決定的に変わってしまう佐知子の心情によって……。
無論、そんな事情は知らず、だから、自分がピンポイントで好機を掴んだことも知らないままに。欲望に逸る裕樹は、バスタオルを巻きつけただけの母の身体を押すようにして急きたてながら、寝室へと入った。
「もう…そんなに慌てなくたって…」
佐知子の呆れ顔にもかまわず。こちらはタオルも巻かず、スッポンポンのまま風呂場からやって来た裕樹は、母のベッドに飛びのって、
「ママ、はやくっ」幼い勃起をふりたてて、母を招いた。
やれやれと微かに苦笑して。
佐知子は身体に巻いたタオルを外した。髪を束ねたタオルも取る。
濡れた黒髪も艶やかに、爛熟の肢体を、いつもよりは明るい照明の下にさらして。
しかし佐知子は、すぐにはベッドに乗ろうとはせずに。
熱い視線を向けてくる裕樹を見下ろして、
「ねえ……ママの身体、綺麗?」片手に大きな乳房を軽く掬い上げるようにして、訊いた。
「う、うん。綺麗だよ、すごく」もつれる舌で、そう言って、裕樹は力をこめて肯いた。
「エッチな気持ちになる?」
「う、うん」
「そう……」うっすらと微笑んで。
ベッドに膝をついた佐知子は、そのまま裕樹へと這いよっていく。
重く垂れ下がって、ブランブランと揺れる双乳に裕樹の眼は引きつけられた。
「また、オッパイを見てる」
クスリ、と佐知子は笑って。裕樹の眼前で、わざとプルプルと左右に揺すってみせた。
「…あ…あっ…」豊かな肉房が踊り弾む景色に、魂を奪われて。
母の、まるで別人のような淫猥さを訝しむ余裕すらなく。
裕樹は、両手で佐知子に抱きついて、無理やりに首を差し伸べて魅惑の肉鞠に、下からむしゃぶりつく。
「あん、いきなり…」
その性急さを責めるような呟きを洩らしながらも、佐知子は下肢を滑らせて横臥で抱き合うかたちをとって、裕樹の無理な体勢を直してやった。
音たてて、乳首に吸いつく裕樹の頭を抱いて、
「あぁ…いいわ、裕樹。もっと吸って」眼を閉じて、与えられる感覚を味わっていたが。
「……あぁん…」
熱烈なばかりで、なんの技巧もない裕樹の乳吸いに、陶酔の声はすぐに物足りなげな吐息に変わって、
「ね、裕樹、もっと、舌で…」
なんとか思う通りの快感を得るために、裕樹を導こうとするのだが。
大好きなママのオッパイの、天上的な肉感に耽溺する裕樹は、ひたすら乳呑み児のように吸いたてるばかり。
フウッと、佐知子は諦めたように嘆息する。
乳房は、裕樹のしたいようにさせておいて。
佐知子は手を伸ばして、腿にあたっている裕樹の屹立を握りしめた。
「……フアッ、アッ、ア」
ユルユルと扱いてやれば、たちまち裕樹はビクビクと細い腰をわななかせて、オッパイから離した口から、可愛い声を上げた。
「……すごく元気ね。どうしたの? 今日は」
「わ、わかんない、けど」
やたらとに悩ましい囁き声で訊かれても、裕樹にも確たる理由はわからず、
「あっ、ず、ずっと、ママとしてなかった、から、アンッ」
やはり、それくらいしか思い当たらない。
「そんなに、ママとしたかったの?」
「したかった、したかったよっ」
言うまでもない。いくら、母とのセックスを思い出して自分で慰めたって、得られる悦楽は、現実の交わりとは比べものにならなかった……たとえ、その現実のセックスが、どれほど拙く呆気ないものであっても、だ。
そして、それは“ママも同じなんじゃないの?”と、
ペニスへの刺激で痺れかかった頭で、裕樹は考える。
だから今夜は、こんなにエッチになってるんじゃないの、と。
……それは多分に願望を含んだ推測であり。そして完全に間違えているわけだが。
真実には、空白に耐えていたのは自分だけで。母のほうは、逆に荒淫ともいえる日々を送っていたなどとは。
自分とのママゴトみたいなセックスとは次元の違う苛烈で濃密な情事に耽溺して。
メロメロの、色ボケ状態に陥っているなどとは、知りもしない裕樹だから。
そんな幸福な誤解に酔えるのだった。いまは。
「ママの身体、そんなに魅力がある? いやらしいことしたいって、思う?」
やけに熱っぽい口調で。また佐知子は、その問いかけを口にした。
身体をすり寄せて、裕樹の薄い胸に、巨きな乳房を圧しつぶすようにして。
「セックスしたいって思う? ねえ」
「思う、思うよっ」裕樹でなくとも、この状況では、他に答えようがなかっただろうが。
「そう……」佐知子は満悦の笑みを浮かべる。
自分の肉体が、若い男の欲望をそそることが出来る、という事実を確認して。
「キス、しましょう?」嬉しげな、そしてひどく淫らな笑みを浮かべたまま。
ゾクリとするような声で、佐知子は囁いて。裕樹に唇を重ねていった。
柔らかな、母の口唇の感触に陶然とする裕樹。
「……っ!?」
しかし、すぐにヌルリと滑りこんできた舌に、うっとりと閉じかけた眼を見開くことになった。入りこんだママの舌は、裕樹の口中を縦横に動きまわって、粘膜を擽り、怖じる裕樹の舌を絡めとる。
「……フ……ムウ……」
かつてない濃厚な口吻の刺激に、裕樹の意識は白く発光して、佐知子に握られた勃起は、新たな先走りを吹きこぼしながら、ビクビクと脈打った。
ギュッと佐知子のくびれ腰にしがみついて。
しかし、そのくすぐったい刺激と息苦しさ、なにより軟体動物のような母の舌の妖しい感触に、裕樹は長くは耐えられなかった。
「……フッ、ん……ハァッ」
かぶりをふって、母の唇から逃れる。荒いあえぎをついて、呼吸を貪る。
舌は、痺れかかって引き攣っていた。
「あん……」
物足りなげに鼻を鳴らして、追いすがってくる母から、懸命に顔を逸らして、
「ダ、ダメだよ、ママッ、僕…」
「どうして? ママのキス、気持ちよくない?」
「そんなこと、ない、けど……でも、くすぐったくて、息も苦しいし」
「もう……子供なんだから」呆れたように、佐知子は嘆息して。
「…ここは、気持ちよさそうにピクピクしてたのにね」
オチンチンに絡めた指に力をこめて、擦りあげた。
「アッ、アアッ」
「こんなに、お汁を出して」
「アッあんッ、マ、ママッ」
打てば響く、といったふうに。些細な攻撃にも、過剰なほどに感応する裕樹を眺めて、
「本当に、裕樹は感じやすいのね……」佐知子は、独り言のように呟いた。
「……ママに、似ちゃったのかな……?」そう洩らして。瞳がドロリと蕩けた色を強めた。
なすすべなく快美に身悶える息子の姿に、自分を重ねる…そんな倒錯の中に急激に血肉を昂ぶらせて、
「ね、ママも、ママもキモチよくしてっ」
腰にしがみついた裕樹の手を取って、股間へと誘導した。
「ここ、触って、裕樹の指で、キモチよくして」
「う、うん」
やはり常ならぬ積極さに気圧されながら、すでに熱を孕んでほぐれ、トロリと蜜を零している母の秘肉に、おずおずと指を這わせる裕樹。
「アッ、アン、そうよ、もっと」
途端に鼻から抜ける声を洩らす鋭敏さは、佐知子が述懐のとおりに裕樹と通じるものがあって。ヨガリの声音さえ、母と子は、どこか似ているように聞こえたが。
しかし、佐知子の快美の声は、
「……あぁん…そう、そこ…イヤァ、違うの、そうじゃ…」
すぐに、もどかしい感覚を伝えるものに変わって。
「…ああ、ここ、ここよっ、ここをもっと」
拙い裕樹の指に業を煮やして、佐知子は手取りの指導を試みるが、所詮そんなかたちで、佐知子が望むような快感が得られるはずもなく。
「ああっ、違う……ほら、見て、こんなふうに」
さほども時間を経ずに、佐知子自身による愛撫へと移行していった。
「ここを、擦りながら……フッ、あ、こうやって、ね……アンッ」
仰臥して、大股開きの股間に手を差しこんで。あられもない自涜の行為はたちまちのうちに熱を高めて。役立たずな裕樹の手を押しのけるようにして、
「ク、クリをこねて、ヒッアアッ、指、指で中を・・・んあああ」
逐一の解説の通りに、こねくり、掻きむしり、抉りたてた。
裕樹は呆然と母の痴態を見つめた。
「……ママ…」
己の不甲斐なさを恥じる……という感情は持たず。そんな余裕はなく。
いつしか体を起こしていたのも、その淫らな光景を、より見やすいようにとする無意識的な行動だった。
裕樹は息をつめて、自涜にふける母の姿を傍観した。
「ふあっ、いっ、アァッ」情感をくすぐる声で、佐知子が啼く。
白い肌は血を上せて桃色に色づき、総身にジットリと汗を浮かべて。
股座と乳房、女の象徴する二つの場所に両の手を這わせて。
「ヒッ、アッ、いいっ」
嬌声にまじって、グチュグチュと隠微な音が立つ。菱形を作る肉感的な双肢がビクビクと引き攣る。
しとどに溢れ出した淫蜜が、女肉を掻きまわす指を濡らし、内腿を濡らす。
裕樹の手では引き出すことが出来なかった徴候、夥しい溢出が、この行為から佐知子が得ている快楽の強さを告げていた。
ギュッと強く揉みしぼられる乳房の先端でも大ぶりな乳首がピンピンに尖り立っていた。
「あぁ……いいわ、いいっ」薄く開いた双眸は、愉悦にけぶり、膜がかって。
見すえる宙空に、何者かの姿を思い描いて。快楽の記憶との密戯に没入する
佐知子の意識からは、すでに傍らの裕樹の存在は消えかかりつつあった。
「……ママッ…」そのことを、裕樹は明確に悟ったわけではなかったが。
かつて、一度も見たことのない狂乱を晒して。どこまでも快楽にのめりこんでいく母の姿は、それだけでも不安を感じずにはいられなかったし。
それよりなにより、あまりにも凄艶で煽情的で、
「ママ、ママッ、僕、もう我慢できないよっ」
裕樹は片手で痛いほど膨張したペニスを握りしめ、片手を母の膝にかけて揺さぶりながら、切迫した声で訴えた。
「…ん…アッ……えっ」官能の中に沈んでいた佐知子の反応は、一拍おくれた。
声のほうへと動かした視線には、快楽を邪魔されたことへの苛立ち。
しかし、不粋な邪魔ものが息子だと気づくと−裕樹の存在を思い出すと、
「…あ…そう、そうね…」
我にかえったように、僅かに周章と羞恥の滲んだ声で答えた。
乳房と秘芯から手が外される。少し、未練げに。
のっそりと上体を起き上がらせるとセピア色の肉蕾を硬く尖らせた乳房が重く揺れ弾んだ。
「…………」一瞬だけ考えて。佐知子はヘッド・ボードへと手を伸ばした。
取り出したコンドームを手に振り向けば、裕樹はペタリと座りこんで待っている。
ビンビンにエレクトしたペニスを握りしめ、昂奮に顔を紅潮させて、それでも従順に待ちうけている。
フッと、佐知子は微笑して。小袋を破って引き出した薄いゴムを、息子の幼い性器へと被せていく。
「……一度、出してるから。少しは長持ちするわよね?」
柔らかな手指の感触に堪えている裕樹の顔を覗きこんで、そう言った。
冗談めかしてはいても、その瞳には、確かに淫靡な期待が浮かんでいる。
しかし、裕樹のほうは、ほとんど上の空で。
侮辱ともいえる佐知子の言葉も、ピンときていなかったし。だから、期待に答えよう
などという意識がおこるわけもない。
裕樹にとってのセックスとは、ただ母の体へと欲望を吐き出すことだったから。
「ママ、はやくっ」それでも。この期におよんでも、押し倒すようなことはせずに。
佐知子が受け入れの体勢を取るのを、裕樹は待つ。
豊満な裸身が、再び仰臥する。息子へと、白い脚を開き、白い腕を広げて、
「……いらっしゃい……」静かな声で、招いた。
「ママッ」それで、ようやく裕樹は、母の体へとかかっていくのである。
いざり寄りながら、握りしめた勃起の先を母の股間へと擬して。
「…あっ…」ヌチャリ、と。薄いゴムを被った亀頭の先端が、湿った肉弁に触れる。
「ああっ、ママッ」悲鳴のような声を上げて、叩きつけるように腰を送った。
ヌルリ、と入りこんだ。乱暴で身勝手な侵入にも関わらず、佐知子の女肉は難なく裕樹を呑みこんでいく。
しとどな濡れのせい……にしても、スムーズに過ぎるような結合だったが、裕樹は、その差異にも気づかず。
「…ウッ…ああっ」ただ、柔らかな肉に包まれる快感に、喘ぎ、慄く。
「…う……ん……」佐知子が微かな声を洩らす。快美、というには微妙な表情で。
しかし、秘肉は、自然に淫猥な蠕動をみせて。迎えいれた未熟なペニスにからみつく。
「ああ、スゴイ、いつもより、キモチいいよ」上擦った声で、そう告げて。
しかし、佐知子の肉体の変貌ぶりの理由には思いをいたすことなく。
裕樹はひたすら、これまでにない快感を味わうことに没入していく。
「あ、ちょっ、待って、裕樹」
しがみつく裕樹の軽い体を抱きとめながら、佐知子は困惑の声を上げて、身をよじった。
激しい行為を厭うわけではないが、こんな性急なばかりの単調な動きでは、と。
だが、裕樹は、制止を聞く余裕など、まったく無くしていた。
「ああっ、スゴイ、キモチいいっ」
自分の快感だけを口走りながら、小さな振幅で不器用な挿送を繰り返すばかり。
「…あぁ……もう…」
今宵、何度めになるだろうか。佐知子は、諦めの息をついて。
それでも、汗を浮かべた裕樹の背を優しく抱いて、幼稚で自分勝手な、情交とも呼べないような行為を受容する。
だが、佐知子は、長く耐える必要はなかった。
「ああっ、ママ、僕、もうっ」
一方的に快楽を貪って、裕樹は早々と、切羽つまった声を洩らした。
久しぶりに母と交わったという昂奮と感激。なによりも、裕樹の預かり知らぬところで練りこまれた佐知子の媚肉の美味に、すでに一度欲望を放っていたことも、ほとんど意味を持たなかった。
「……もうダメなの?」わずかに苦い感情をこめて、佐知子は訊いた。
母親として、息子の脆弱さを情けなく感じたのだった。
“彼”…いつも不死身の逞しさで、年上女の自分に死ぬような思いを味あわせる若い情人と比べても無意味なことはわかっているが。
それにしても……同じ年の男でありながら、この違いは、と。
「ダ、ダメ、出ちゃう、出ちゃうよっ」
しかし、裕樹が本当に限界に近づいていることは、佐知子の中にあって頼りない存在感を主張するペニスの脈動からも明らかだったし。
無理な忍耐を強いて、少しくらい行為を引き伸ばしたところで、佐知子には快楽など訪れないことも解りきっていたので。
「…いいのよ。出しなさい」簡単に、事務的とも聞こえる口調で、佐知子は許した。
「ああっ、ママッ」甲高く叫んで。裕樹は爆ぜた。
「……ん…」
佐知子は眼を閉じて、その刹那の感覚を味わう。ビクビクと痙攣する裕樹の身体を抱きしめれば、いつものように、我が子に思いを遂げさせたことへの満足は感じたが。
(……やっぱり、違う……)と、その爆発の勢いをも、つい比較してしまうせいか。
グッタリと脱力した裕樹の汗に湿った髪に、優しく指を通しながらも。
胸にわく充足の思いは、薄いものだった。
……余韻の中での抱擁もそこそこに、佐知子が身体の上から裕樹を押しのけるのは、いつもの通り。
佐知子の中から抜け出る裕樹のペニスから、精を溜めたコンドームを外して。
すでに縮こまった小さなチンチンを清める手つきも、いつものように優しいものだったが。
「………………」
後始末を終えて。虚脱して横たわる裕樹を、少し複雑な表情で佐知子は眺めた。
やはり、今夜は二度も欲望を果たしたせいか、疲れたようすの裕樹は、早くもまどろみかかっている。
「……もう…」そう呟いて。しかし、佐知子は表情を和らげた。
(こんなものよね)
母子の閨で、裕樹が性急で自分勝手なのも、情交が呆気なく終わるのも、毎度のことだったではないか、と。
微苦笑を浮かべて、自分を納得させる。
手を伸ばして、そっと裕樹の頬を撫でた。
上掛けを引いて、裸の身体を覆ってやる。しかし、常のように、裕樹の隣りに身を横たえはせずに。佐知子は、静かにベッドから降りた。
床に落ちたバス・タオルを拾い上げて、ドアへと向かった。
……裕樹との行為に、求めるべきではない肉体の快楽を求めてしまったのは。
やはり、今日は達也に抱いてもらえなかったからだろうと考える。
本当に……自分は、達也なしではいられなくなっているということか。
そう思うと、恥ずかしくて。だが、奇妙な喜びもわいて。
明日は、と。期待に胸を熱くする。今日の分も、と。
冷えていた身体にも、ジンワリと熱が戻る。
その待ち遠しい明日のために、佐知子は、もう一度浴室へと向かう。
思いがけない裕樹の襲来で中途になっていたから。
達也に抱いてもらう身体を清め磨きあげる日課を果たすために。
タオルは手に、裸の乳房と臀を揺らして。
ドアを開けて。一度室内を振りかえる。
裕樹は、完全に眠りに入っている。それをただ確認して。
佐知子は灯りを小さくして、部屋を出た。静かに閉ざされたドアの向こうで気配が遠ざかっていった。
……ひとり残されて。
心地よい疲れと満足のうちに、裕樹は眠っている。母のベッドで。
小さく寝返りをうって。手がシーツの上を滑った。そこにあるはずの温もりを求めて。
だが、その手は、求めるものを見つけられない。
「……ん…ママ……」
わずかにムズがるように呟いて。だが、裕樹は目覚めることなく。
しばし、虚しくさ迷った手も、やがて動きを止めた。
ママのベッドで、ママの匂いに包まれて。
安息の中、裕樹は眠っていた。
−20−
……白衣が、ベッドの上に置かれている。
畳んだり、丸めたりせずに。袖もスカート部分も伸ばして。
その上に、二枚の下着、ブラジャーとショーツが乗せられている。
置き方に明確な意図があって。ブラは、白衣の胸元に、大きなサイズのカップをキチンと並べて。ショーツは、当然、腰のあたりにあてがわれている。
そんな形で展示されると、ことさらに際立つ。その組み合わせの不都合さが。
シルクの艶やかな光沢が、いかにも高級そうな、揃いの下着の色は、鮮やかな、ドギついほどの赤だった。それだけでも、その下に敷き置かれている
薄手の白衣−ナースの制服の下に着けるべきものではないのだが。
そのデザインもまた、瀟洒と形容するには煽情的にすぎるものだった。
ブラはハーフ・カップ、ショーツはTバック。その極端な表面積の少なさでは、乳房は半ば以上が露わになるだろう。臀は剥き出しに。
わずかな布地にしても、ほとんどがレース仕様で乳首や恥毛を隠す役には立ちそうもない。
とにかく、清潔な白衣の下に着けるには、まったく不適切としか言いようがないのだが。
……まあ、今さらだろうか。そんな猥褻な装いが白衣から透けてしまうことも。
ベッド上に並べられた、それらの衣装の所有者である彼女、主任看護婦・越野佐知子の下着の趣味が最近変わったことは(その理由も含めて)病院内部では知れ渡っていたから。
佐知子にしても、周囲から向けられる冷眼や嘲笑に対して、苦痛や羞恥を感じる意識は麻痺しつつあった。
だから、今さっき脱いだ自分の着衣を眺める佐知子が、頬を赤く染めて、軽く唇を噛むようにしているのも、これ見よがしに並べられた白衣と下着のコントラストのせいではなかった。ナースの誇りであるべき純白の衣を、自ら冒涜するような己の破廉恥さ、堕落ぶりを省みて恥辱を噛み締めているわけではないのだった。
佐知子が居たたまれないような羞恥の色を見せているのは、もっと単純で直截な理由からだった。
白衣も下着も脱いでいる、ということは……佐知子は、ほとんど裸になっている。
全裸に近い姿を晒していることが、佐知子は恥ずかしかったのだ。
それこそ……今さらな話のようだが。“今さら、なにを”と。
しかし、佐知子は本気で恥じ入っているのだった。
いま佐知子が身につけているのは、ナース・キャップとシューズの他にはストッキングだけだった。ストッキングはサスペンダー・タイプのもので(無論、これも達也の指示によって、普通のパンストから切り替えた)股座は大きく開いている。胸も股間も剥き出しにして、佐知子はベッドから少し離れた位置に佇んでいた。肩をすぼめ、両腕で我が身を抱くようにして。
半ばまで白いストッキングに覆われた太腿をモジモジと擦り寄せて。
……率直に言えば、乳房や臀を達也の眼に晒すことには、もうさほどの羞恥も感じなくなっている佐知子であった。
だが、下着は(せっかく、達也好みの淫らなものを着けていながら)脱いでいる時間のほうが長いような、この病室での生活であっても。こんなふうに、白衣を完全に脱いでしまうことは、これまでになかった。
全身を露わにして、身体の線を見せていることが、佐知子に不安まじりの羞恥を感じさせているのだった。それは、佐知子の年齢、達也との年の差からくる感情だった。中年の女の崩れた体のラインを、若い達也の注視に晒すことに居たたまれないような恥ずかしさと焦燥をわかせずにはいられないのだ。
体の前で組み合わせた腕が、股間の濃い繁茂よりも、わずかに脂肪をのせた下腹を隠したい心理を覗かせていた。
無言で見つめてくる達也の方を見ることが出来ずに。ベッドの足側に陳列された白衣と下着を眺めていたのは、単に視線のやり場を求めただけのことだった。
沈黙の長さが、佐知子の焦燥と不安を煽る。
眼を逸らしていても、全身に突き刺さる達也の視線の熱さは感じられた。
「……そんなに、見ないで…」
堪えきれず、横顔を向けたままで、佐知子は呟いた。気弱く。
しかし、達也からの応えは、なにもなくて。
佐知子は、泣きたくなる。不安で不安で。
どこか、自分の身体に気に入らないところを見つけられたのではないか、とか。
やはり、年増の崩れた体に幻滅されたのではないか、とか。
そんな恐れに苛まれながら、それでも佐知子は立ち続ける。
ベッドから少し離れた、達也が全身を眺めるのに適当な立ち位置というのも佐知子には辛かったが。そこから動こうとはしない。
その姿で、その場所に立て、と命じられた(あくまでも達也の態度は柔らかくて、お願い、というかたちではあったが)から。
従順に、それを守って。達也の次の指示を待つ。
早く、と願いながら待つ。早く抱きよせて、可愛がってほしい、と願いながら。
昨日は、一日お預けをくわされた。それがゆえに応じることが出来た
裕樹との交わりは、佐知子の欲求をくすぐっただけだった。
だから、今日はいつも以上の期待を胸に、この部屋へやって来たのだ。
だから、朝の挨拶もそこそこに、脱ぐように命じられたことも嬉しかった。
いつものように半脱ぎではなくて、白衣まで脱げという指示は辛かったが。
それでも躊躇は見せずに、手は動いた。
いまも辛さに耐えている。自分の年齢への負い目は消しようがないが、
どうすれば、一時的にも、その不安と焦燥を払えるのかは、わかっている。
達也に愛してもらうこと。抱きしめられて、キスされて、優しく囁かれて。
この世ならぬ快楽の境に身も心も飛ばしてもらうのだ。
それだけが、この苦しさから自分を救ってくれることだと知っているから、佐知子は慫慂として待っているのだが。
……達也は、沈黙を守り続ける。
「……達也…くん……?」
いやます心の不安に、肉の焦燥も加わって。ついに佐知子は、おずおずと達也へと視線を向けた。
やはり、達也は佐知子を注視していたが。
「……っ!?」いつにない冷酷な眼の光に、佐知子は息をのむ。
…が、それは、一瞬のことで。すぐに達也は眼光を和らげて、
「……おいでよ、佐知子さん」手を差し伸べて、いつものように柔らかな声で呼んだ。
途端に、佐知子の硬直も溶けて。
飛び立つようにして、達也へと近寄っていく。裸の乳と臀を揺らして。
……その忠実な飼い犬のごとき態度は、昨夜の佐知子の寝室での裕樹のそれとも、どこか似通っていた。
子犬の母は、やはり犬ということか。
そして、母犬は子犬をかまう時よりも、はるかに強い喜びを見せて、激しく尻尾を振りたてながら、はせ参じるのだ。飼い主のもとへと。
……喜ぶことに夢中で。
また、飼い主の眼が、なにかを探り出そうとするような冷徹な輝きを湛えていたことには気づかずに。
「あぁ…こんな…」消え入りたげな声で、佐知子が羞恥を訴える。
つき放すような距離を置いて、裸身の全体像を鑑賞されるという状況からは解放されて。しかし、次に達也が指示した行為は、佐知子をさらなる恥辱に悶えさせるものだった。
「…恥ずかしい……」
また、泣くような声を洩らして。佐知子の裸の臀が、キュッとしこった。
白い尻朶に、ストッキングの細いサスペンダー部分を食いこませただけの巨きな臀は、達也の眼前に晒されているのだった。
仰向けに寝た達也を、逆向きに跨ぐかたち。すなわち、相舐めとかシックス・ナインとか呼ばれる体勢である。
「フフ、丸見えだよ。佐知子さんの、いやらしいオマ○コ」
「いやぁっ」からかうような達也の言葉は、まったく、その通りであるに違いなく。
達也の息を、秘めやかな部分に感じたような気さえして、佐知子は四つん這いの豊満ら肢体をブルルと震わせ、紅く染まった首をうちふった。
「あぁ……見ないで、達也くん」
「そんなこと言ったって」せん無き願いを、達也は笑って、
「こんな、目の前に差し出されたら、見るも見ないもないじゃない。僕の視界は、佐知子さんのデカ尻とオマ○コに占領されちゃってるんだから」
「ああ、いやぁ……」恥辱の嘆声とともに、また達也の眼前にもたげられた豊臀がくねる。
しかし、その揺動は、達也の視線を遮るほどのものではなかった。
この淫らな体勢にしたって。確かに指示したのは達也だが。
佐知子も激しい羞恥の感情は見せながらも、抵抗はせずに従ったのである。
自信のない体のラインを冷静な眼で観察さている状態から逃れたいという思いもあったが。
達也の言葉に従ってさえいれば。どんな思いがけぬ行為も、恥辱や情けなさを感じる姿態も、すべてが、自分が未だ知らぬ悦楽へと繋がっていくのだという、絶対的な信頼が佐知子の中に出来上がっていたのだった。
だから、
「こうやって、あらためて眺めると……本当に、いやらしいな。佐知子さんの、ここは」
「あぁん、やん、いやぁ」
嬲る達也の言葉に、佐知子が辛そうに啼いて巨臀をふる、そんな遣り取りも、どこかデキ芝居のような、阿吽の呼吸といったものが通じている。
時に、残酷な無慈悲なまでの言葉責めでいたぶってくる達也のやり方にも佐知子は馴染まされて。それを快楽の前菜として受け止める意識すら、培わされていた。
達也の流儀に、達也の好みに、染められていく自分に、
この上ない喜びを感じながら。佐知子はすべてを受け容れようとする。
やはり、その関係のありようは“主従”であろう。犬と飼い主。
「それにやっぱり毛深いよね。ケツ穴のまわりまで毛がボーボーだって自分で知ってた?」
「やあぁ、ひどいわ」
顔を真っ赤にして、恥辱に震えてみたって。ひどいと責める声はどこか甘ったるい。
甘い言葉と快楽で手なずけられた熟れた雌犬には、主から与えられるなら恥辱でさえ嬉しくて。また、フルフルと白くてデカい臀をふる。尻尾をふる。
いっそ、“クウ~ン”とでも鳴いたほうが似合いのようだったが。
しかし、客観的には、すでに達也の犬に堕していると見える佐知子だが。
本人には、まだそこまでの自覚はない。
支配する達也、支配される自分、という関係性は理解して受容していても。
あくまでも、それは恋人同士としてのものだと、この狂い咲きの恋に酔っぱらった愚かな中年女は信じているのだった。
無論、その馬鹿げた思いこみは、達也によって植えつけられ助長されたものだ。
そうして達也は、、偽りの愛の言葉に逆上せあがりトチ狂う、母親ほども年上の女の醜態を楽しんできたわけだが。
今日を契機として。
ふたりの関係を、より真実に近いかたちに修正しようと、達也が目論んでいることを、佐知子は、まだ知らない。
「達也くんだけよ?達也くんだから、こんな恥ずかしい姿を見せるのよ」
切なげに、甘えかかるるように佐知子が訴える。それもまた、お定まりの言上だったが。
「……本当かな」
「…え?」
返ってきた言葉は期待していたものとは違っていて。佐知子は四つん這いの姿勢から首を振り向けた。自分の臀に隠れて、達也の顔は見えない。
「濡れてるね、佐知子さん」佐知子の当惑には構わず、達也が言った。
「まだ触れてもいないのに。裸を見られて、オマ○コをアップで見られて。それだけで感じちゃってるんだ?」
「いやぁ……恥ずかしい…」
「恥ずかしいと濡らしちゃうんだ。ホント、淫乱な女だなあ」
「あぁ……あなたが、達也くんが、私をこんなにしたのよ」
いつもより辛辣な毒気に満ちた、情感を煽る戯れからはハミ出したような達也の科白に、ビリビリと背筋を痺れさせながら。佐知子はやはりお決まりの甘い恨み言を返したのだが。
「そうなのかな?」達也は、素気ない呟きで、また微妙にお約束をハズす。
「……達也くん…?」しかし、その変調に、佐知子が不安げな声を上げれば、
「僕も脱がせてよ。佐知子さん」
それもまた、ハグらかして、淫らな戯れへと軌道を戻すのだった。
「パジャマだけで、いいからね」
「え、ええ…」
どうも調子を狂わされながら。佐知子は言われるがままに、達也のパジャマのズボンに手を掛けて、膝のあたりまで脱がせた。
ちなみに、退院を間近にした達也の左足のギブスは、小さく薄いものに変わっていた。
厚手の包帯くらいのもので、行動にもほとんど支障はなくなっている。
いまだ達也は、都合に合わせて、不自由な怪我人ぶったりするけれども。
とにかくも、パジャマを膝の位置までたくし上げて。
達也の引き締まった腿とビキニ・タイプの黒い下着に覆われた股間を目の当たりにすれば、
「……あぁ…」
佐知子の唇からは、うっとりとした息が洩れて。達也の態度に感じた違和感など霧消してしまう。モッコリとした盛り上がりを両側から包むように手を触れさせて。指の腹で、布地越しに達也のかたちをなぞっていく。
まだ力を得ていない達也の肉体は、それでも充分な量感と逞しさを手指に伝えて。
佐知子はまた熱い息をついて。ゆっくりと身体を沈めて顔を達也の股間へと寄せていった。
パジャマだけを脱がせた達也の意図は了解していたし。そうでなくとも達也の男根、大好きな巨きなチ○ポの感触と、ムンと強く立ち昇る雄の臭いにそうせずにはいられなかった。
「……ハアァ…」モッコリとした隆起に鼻先を押しあてて、深く深く臭気を吸いこんだ。
直接嗅ぐ若い牡の濃い性臭は、佐知子の脳を揺さぶって、
「…あぁ……達也くんの…匂い…」
恍惚として、佐知子は呟いて。クンクンと鼻を鳴かせて、そのこよなき芳香を貪った。
両手が忙しなく蠢きはじめる。薄い布地の上から、達也のフグリを柔らかく掴みしめ、太い茎を押し揉むようにした。
熱のこもったまさぐりに応えて、下着の中の肉塊がムクムクと体積をと硬度を増すと、
「……アハァ…」
佐知子はもう辛抱たまらずに、唇を押しつけていった。細首をふり、顔を傾げて、ブチュブチュと、一面にキスの雨を降らせていく。黒い下着だから目立たなかったが、達也のブリーフにはベットリとルージュの紅い色がなすりつけられた。
さらに勢いを強めて、下着を突き上げる達也の肉体が、佐知子をますます夢中にさせて。
アフンアフン、と悩ましい息を鼻から零しながら、伸ばした舌を、ブリーフにクッキリと浮かび上がった達也の剛直に這わせた。太い胴部を、ベロベロと大きく舐めずり、チロチロと肉傘の付け根をくすぐった。
四つん這いの豊満な肢体からは、汗と女蜜が臭い出している。
時折、ブルリとくびれた腰が震えるたびに、もたげられた臀の深い切れ間には、ぬめった輝きが増して。ひときわ強い淫臭が漂う。
その昂ぶりは、佐知子が勝手に兆したものだ。愛しくてたまらない牡肉に触れて、その香を嗅いで、その熱を感じて。それだけで、これまで味わった凄絶な快楽を蘇らせ、この後のそれに期待して、血肉を滾らせているのだ。
淫らな熱を孕んだ佐知子の肉体には、いまだ愛撫の手は与えられていない。
達也は、頭の下に両手を組んで。胸の上に掲げられた巨大な臀を、ただ眺めていた。
ジットリと汗を滲ませた白い熟れ臀が、物欲しげに揺すりたてられるのにも冷徹な眼を向けるだけで、なんのアクションも起こそうとはしない。
「……あぁん…」
焦れた声を上げて、佐知子は意識的に腰をくねらせ、プリプリと臀をふってみせる。
だが、懸命な媚態にも、達也は指一本与えてくれない。
また焦らすのかと、やるせない思いに身悶えながらも。すでに、その切なさを快楽のプロセスとして味わうことも教えこまれている佐知子は、
「ねえ、おしゃぶりしていい?直接、舐めていい?」
達也の巨大な膨らみを下着の上から撫でまわしながら、訊いた。わざわざ許可を求めるのも、達也に躾けられたことだ。連日の愛欲のレッスン、物覚えもよく学習熱心な佐知子は、優秀な生徒だといえた。
「うーん?僕は、このままでもキモチいいけどね」
「やぁ、いいでしょう?おねがい、達也くぅん」
「そんなに、生のチ○ポ、しゃぶりたい?」
「したい、おしゃぶりしたい、オチンチン、生の…チ○ポ」
自ら口にした卑猥な言葉に、いっそう昂奮を煽られて。
「ね、いいでしょ? いいわよね」
我慢できなくなった佐知子は、達也のブリーフに指をかけた。大きな屹立に突っ張った下着を脱がせる手の動きも慣れたものだった。
ブルン、と。解放された怒張が強靭なバネで勃ち上がる。
「……あぁ…」熱い息をついて。佐知子は、トロけた眼で、その威容を見つめた。
毎日、目にしていようと、そうせずにはいられない。
「すごいわ、今日も…」
惚れぼれと呟かずにはいられず、握りしめた逞しい牡肉に唇を寄せずにはいられない。
手指に伝わる脈動に、口唇に感じた肉感に、恍惚として、
「好き、好きよ」
うわ言のように繰り返しながら、口づけを捧げ、舌を這わせずにはいられなかった。
「……しょうがないなあ」
呆れたように達也は言って。それだけで、佐知子の先走った行動を赦した。
“ま、いまのうちは”と。
欲しかった“生チ○ポ”を口舌に味わって、ますます劣情を強める佐知子は、いっぱいに広げた唇を、巨大な肉冠に被せて、ジュポジュポと唾の音を鳴らしながら、激しく顔を上下させていた。
熱烈な行為の中で発揮される口舌の技巧は、連日の修練の甲斐があって、長足の進歩を遂げている。
巨大な肉塊に口腔を満たされ喉を突かれる苦しさにも耐えて、咥えこんだモノの太い胴回りに、舌を絡め蠢かせる。
うっとりと眉を開いて、血の色にけぶらせた恍惚の表情や怒張の根を握りしめた指には、“これが好きでスキでたまらない”といった気ぶりが滲み出ている。
この体勢では、達也には、佐知子の淫らな面や狂熱的なフェラチオの行為を直接見ることは出来ないが。もっと端的に佐知子の耽溺と欲情ぶりをあらわす部分は目の前にあった。
クナクナとふりたくられる巨臀の中心、暗い肉裂の底は、汗と淫蜜にベトベトに濡れて、妖しい香を放って、達也を誘っている。
しかし、達也はまだ動こうとしない。
佐知子の口淫に、それなりの快感を得ていることは、さらに漲りと硬度を増した肉根から見てとれたが。達也のほうからは、見返りを与えようとしない。
佐知子の焦れったげな身悶えが強まりムズがるような啼きが高まるのも平然と受け流して。
どんどん卑猥にあからさまになっていくデカ尻の淫舞も、冷ややかに眺めて。
達也が思案するのは、この後の佐知子への“尋問”についてだった。
市村が持ち出した、佐知子の、息子との相姦疑惑。
達也とすれば、半信半疑である。
それはないだろう、と思うのは、出会った頃の佐知子の印象と、実際に味わった
肉の感触から。しかし、それだけで片づける気にならなかったのは、言い出したのが市村だったからだ。
根拠はほとんどないと断りながら、わざわざ疑惑を呈したのは、なにがしか市村の直感には訴えかけるものがあったのだろうし。
この腹心とも呼べる友人の、奇妙な勘の良さというか、他人の秘密への嗅覚を達也は信用しているのだった。
『……でも、確かめるって、どうすんの?』
『訊くさ』
『や、簡単に言うけどさ。もし、市やんの推測通りだったら、越野ママだって、おいそれとは白状しないでしょう』
『…達也に任せときゃいいよ、高本』
そんな昨日の会話のとおり、事実の確認には、達也は困難を感じていなかった。
確かに、母子相姦が事実ならば、佐知子にしても絶対に隠し通そうとするだろうが。
それなら、素直になんでも喋りたくなるように、してやればいいだけのこと。
朝飯前というやつだ。達也にすれば。
「……あぁん、ねえ」
果たして。一向に手を伸ばしてくれない達也に、佐知子はむしゃぶりついていた
デカマラから口を離して、切なげな声で呼びかけた。
「達也くんも、して」
グッと、四つに這った腰つきに思い入れをこめて。淫蜜に濡れた秘裂を差し出して。
「さわって、気持ちよくして、ねぇ」
張りつめた達也の肉傘にペロペロと舌を這わせながら、愛撫を求める。
「こんな、見てるだけなんてイヤよ、ねえ、達也くぅん」
こんな恥ずかしい姿態まで晒しているのに、と不満に鼻を鳴らす。
「……本当に、淫乱だなあ」呆れたように達也は言って。頭に下から両手を抜いた。
グッと、物欲しげにくねっている佐知子の双臀を掴んだ。
「ああぁんっ」
ようやく達也に触れられて、佐知子が嬉しげに啼くのを聞きながら、タップリとした熟れ肉を、大きく左右に開く。
「あぁ……いやぁ」
「グッショリだ。臭いもひどいや」冷淡に表して、さらに佐知子の恥辱をあおる。
「マ○コ見せつけて、チ○ポしゃぶっただけで、こんなになっちゃうんだ。ホントにいやらしいね、佐知子さんって」
「や、いやぁ」
やはり、いつに増して達也は残酷であるようだった。酷い言葉に胸を刺されて泣くような声を洩らしながら、しかし佐知子の身悶えには喜悦が滲む。
やっと達也が攻撃を開始してくれる、と。
しかし、達也の行動は、佐知子の予想以上だった。
「少し、キレイにしてあげる」
「……えっ? ……ひあっ!?」剥き出しの秘裂に息吹を感じた、その次の瞬間、
「アヒイイイイッ」
鮮烈すぎる感覚に、佐知子は甲高い悲鳴を迸らせて顎を跳ね上げていた。
濡れそぼる秘唇に達也が吸いついたのだった。
「ヒッ、あ、達也、くんっ、ダメ、そん、な…アアアッ」
達也の口唇をそこに受けるのは、はじめてだった。亡夫や裕樹にも許したことのない行為には、強い羞恥と抵抗感がわいて、
「ダ、ダメよっ、そんな、汚い、から」
ビリビリと突き上がる鋭すぎる刺激に耐えながら、必死に達也を制止するも、ガッシリと掴まれた臀を逃がすことは出来ずに。
音たてて女蜜を吸いあげられ、充血した肉弁を噛まれ、戦慄く肉孔を舌でなぞられれば、
「ヒイイッ、あひっ、ひっああっ」
やはり魔術じみた達也の口舌の技巧に、抵抗の意識は瞬く間にこそげ取られて。
ただヨガリの声にヒッヒッと喉を鳴らして、四つん這いの肢体をブルブルと震わすばかり。
女の源泉に男の舌を受ける。快楽を凝集した地帯を柔らかで縦横な肉ベラで嬲られる。
「ひっ、アッ、舐められてる、私の、あそこ、達也くんに、舐められてるぅっ」
佐知子は、引っ切り無しの裏返った叫びで、その強すぎる感覚を訴えた。
「やっ、スゴ、すごい、舌が、ひいいっ」
四肢からは力が抜けて、達也の上に重い身体を圧し掛からせる。
乳房を達也の下腹に押し潰して、しがみつくように握りしめた巨大な屹立の横で、狂おしく頭を打ち振りながら。
「や、ダメ、こんなっ」
それでも、泣き喚く声からは忌避の色は消えうせていたのだけれども。
そこで唐突に、達也は佐知子の秘唇から口を離して、
「オマ○コ、舐められるのはイヤ?やめる?」
そう尋ねた口元は、佐知子の淫汁に汚れていたが。
たった今までの行為の熱烈さに反して、表情は冷静だった。
実際、達也は、熟れた女肉の味わいを堪能していたわけではない。
“尋問”のために、いつもとは変わった方法で佐知子を攻めてみただけだ。
「…あ…あぁ…ハァ……」
苛烈な口撃を中断されて、佐知子は汗に濡れた背を波打たせながら、うつつな声を洩らしている。
達也の口舌は離れたのに、秘唇からはジンジンとした疼きが伝わって、腰を痺れさせる。
余韻の中で、ようやく、あの強烈な感覚が快感であったのだと判別して、
「イヤなら、やめるけど?」
「あぁ、イヤッ」重ねて訊いた達也に、佐知子は慌てて答えた。
「やめないで、続けてっ」
「続けてほしいんだ。オマ○コ舐められるの、気に入った?」
忙しなく、佐知子はうなずいて、
「舐めてっ、オ、オマ○コ、もっと」
「いいけどね」
尊大に達也は答える。発情した年増女の肉の味と臭気は、濃厚すぎて胸がやけるが。
それが目的に適うなら、厭いはしない。
「でも、このままじゃ、このデカ尻に潰されちゃいそうだから」
…と、いうよりも。いつまでも女の尻の下になっている状態を続けることに我慢がならなかったのだろうが。
達也は、佐知子の双臀を掴みしめたまま、上体を起こす。
「あっ、イヤ、こんな…」
佐知子は強制的に膝を伸ばされて。座位になった達也の顔の高さまで臀を掲げさせられた。
「いやよっ、達也く……ヒアアアッ」
あまりにも破廉恥なポーズに抗議する声も、ペロリと舐めとられてしまう。
「アッ、ひ、ああっ、スゴッ、感じるぅ」
たちまち佐知子は、強いられた姿態の恥ずかしさも忘れて、嬌声を張り上げた。
ひたすら佐知子の官能を炙ることだけを企図する達也の舌の捌きは、
無慈悲なほどに冷静で的確で。
「ヒイイッ、痺れる、オマ○コ、シビレちゃう」
すでに肉体の泣きどころを知悉された達也に冷酷なまでの技巧をこらされれば、その凄まじい快楽に、佐知子が抗えるはずもなく。感泣とともに痴語を吐きちらし、あるいはギリギリと歯を食いしばって。
高々と巨大な臀を掲げて二つに折った身体をガクガクと震わせ、バサバサと髪をふり乱す。
「ああっ、イイッ、いいの、キモチいいっ」
もっともっと、と。燃え盛る秘裂を達也へと押しつけながら、自分からも握りしめた肉根へ舌を這わせて快楽を返そうとするが、長くは続けられずに。
クンニの快感に翻弄されるまま、滅茶苦茶に扱きたてるのが、せいぜいだった。
「あっ、そこ、イイッ、そこそこっ」
特に、プックリと尖り立った肉芽を玩弄され吸われれば強烈な電流が背筋を駆け上がった。
「あっ、ダメダメ、ダメッ」
はや絶頂の気配を伝えて、嬌声は小刻みになり、高く澄みとおっていく。
しかし、追い上げる舌は、目眩むエクスタシーの寸前でスルリと逃げた。
「あぁ……」
安堵と失望の混じりあった複雑な吐息を、佐知子は震える唇から洩らした。
……だが、そんな寸止めを何度も何度も繰り返されれば。
「…ああぁ、イヤッ、いやぁ」
佐知子の上げる声は、ただただ生殺しの苦悶を訴えて絶頂を求めるものに変わっていった。
「ああッ、いきそ、イっちゃ、イカせて、いかせてぇっ」
また、達也の舌が集中的に女芯を嬲り、佐知子を追い上げる。
「ヒッ、あっ、おねがい、今度は」
今度こそ、と必死な思い入れで佐知子は腰を揺すり、目前の絶頂を掴みとろうとする。
しかし。
「ああっ、いやああっ」
絶息の際まで佐知子の快感を追いこみながら、今度もトドメは与えずに達也の舌は離れ、佐知子に悲痛なうめきを絞らせた。
さらに達也は、かき分けた分厚い臀肉の狭間に突っこむようにしていた顔を反らして、
「……いくら、舐めてもキレイにならないじゃないか」
当然ともいえる佐知子の肉の反応に呆れてみせると、双臀から手を放してしまった。
両脚の力を失って、達也の膂力だけに臀を持ち上げられていた佐知子は、前のめりに崩れおちた。達也の脚の上に突っ伏して、
「…あぁ、達也くぅん……」
わずかに首を後ろにねじって、焦燥と媚びに満ちた声で呼びながら、達也の両腿を跨いだ巨臀だけをムックリともたげた。
「おねがい、おねがい」すすり泣くような声で繰り返して、ユラユラとデカ尻を揺らした。
その中心に露わになって物欲しげに戦慄く発情マ○コに、達也は無造作に指を挿しこんだ。
「ヒイイッ……あっあっ」
「そんなにイキたいの?」
喜び勇んで指を食い締める貪婪な女肉を、ユルユルと擦りたてながら、訊いた。
「あっ、そう、イ、イキたい、いきたいの、イかせてっ」
「指や舌で、いいの?」
「んん…あっ……え、えっ…?」
もどかしい刺激を、少しでもよく感じとろうと閉じていた眼を開いて、佐知子は振り向く。
「どうせ、指や舌でイったって。すぐに、チ○ポが欲しくなるんでしょ?」
冷笑含みの、嬲るような言いぐさではあっても。達也の側から、より先の行為を言い出すのは珍しいことであり。
無論、佐知子に異存のあろうはずがない。
「ああ……してっ、してぇっ」
滾った声で叫んで、脱力していた腕を踏んばって、身体をもたげた。
「セックスして、達也くんのオチンチン、入れてぇっ」
達也の舌に秘肉を舐められる快感は素晴らしかったし、達也の指で、その残酷なまでの巧緻に嬲られて狂うのもいい。
でも、オチンチンには、本物の交わりには敵わない。
太くて長くて硬いペニスに貫かれて、ヴァギナいっぱいに達也の逞しさを感じて。
重く突き上げられ、襞肉を擦りたてられる快感とは比べようもない。
何度も何度も、死のような快楽を味あわされた末に若い欲望を注ぎこまれて。
血肉にまで達也を沁みこませていくように感じる、あの瞬間以上の法悦など存在しない。
「ねえ、入れていい? オチンチン、入れてもいい?」
佐知子は伏せていた体を起こして、後ろに回した手で達也の股間の屹立を掴もうとする。
これまでの習慣から、自分から達也に跨るかたちで繋がろうと考えたのだったが。
達也は、佐知子の背を押し返しながら、尻を後ろに滑らせて、佐知子の下から身体を抜き出した。その動きには、やはり怪我人らしい不自由さは、ほとんどない。
「あぁっ」
膝立ちになった達也に、再び臀を抱えられて。佐知子は、このまま繋がろうとする達也の意図を悟った。四つん這いで後ろからというスタイルには、
“まるで、動物みたいに……”と羞恥を刺激されても、忌避や抵抗を感じるには情欲の昂ぶりが強過ぎた。
「ああぁっ、来てっ、達也くん」
佐知子は自分からもグッと臀をもたげて、気張った声で求めた。
熱い肉鉄の矛先が、臀肌に触れる。佐知子は、ハァと燃えるような息を吐いて、ブルリと腰を震わした。
はじめて達也のほうから姦してもらえる……その思いが、胸を焦がして。
佐知子は両手両膝で這った艶美な肢体に気合を滲ませてその瞬間の歓喜と愉悦に身構える。
……しかし。
従順に熟れた豊臀を差し出して、期待に打ち震える佐知子を、冷淡な眼で見下ろす達也は。
無論、このまま素直に、佐知子の期待に応じてやるつもりなどなかった。
下準備を終えて。いよいよ、詮議を開始しようというわけだ。
(さあて……)
舌なめずりするような表情。その眼には、佐知子を篭絡して以降は絶えていた、奸智の色が浮かび、口元は邪悪な悦びに歪んでいる。

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純愛・恋愛 | 【2017-04-02(Sun) 16:00:00】 | Trackback:(0) | Comments:(0)
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